大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 31『孤高の剣聖・1』

2021-09-14 10:24:25 | ノベル2

ら 信長転生記

31『孤高の剣聖・1』  

 

 

 せっかくの日曜日だというのに市は朝から出かけてしまった。

 

「御山の南斜面は、いい風が吹くからね」

 紅茶をすするついでのように敦子が言う。

 ついででも、美少女と紅茶という組み合わせは美的なはずなのだが、こいつはいけない。

 チンピラが電車のシートに掛けたように、股を広げて浅く座り、背もたれと同じくらいの高さに頭を置いて、だらしなくすすっているのだ。

「少しは神さまらしくしたらどうだ」

「いいでしょ、家族同然なんだから」

「俺は、実の弟でも切り殺したぞ」

「あ、信行くんね……」

 めんどくさそうに掛け直す敦子だが、しっかり腰を上げないものだから、ジャージがずり下がってパンツが覗く。

「敦子、いや、熱田大神!」

「あ、ちょっとくつろぎすぎか(^_^;)」

 

 えい!

 

 掛け声をかけると、英国貴族の娘のようなナリになって、ソファーもテーブルもかっちりしたビクトリア朝のウッドに変わった。

 フグ

「おい、俺のまで変えなくていいだろ」

 ウッドチェアになったので、座面が五センチほども上がって、脊髄沿いに脳天までショックが走る。

「う~ん、ナリも変えよう!」

 グフ

 敦子と同じビクトリア朝のワンピに変えられる。

 ウエストがきついが、敦子に弱みは見せられない。

「南斜面にいい風が吹いたら、どうなんだ?」

「紙飛行機がよく飛ぶ」

「ああ、二宮とかいう奴と部活にしたんだったな」

「うん、信君もイッチャンも打ち込むものができて、目出度いわ」

「俺は、打ち込んだが空振りだったぞ」

「ハハ、武蔵くんね」

 ティーカップを置いて、空中に仮想ディスプレーを出した。

「撮ってたのか?」

「神さまだからねえ……おお、信玄の胸は良く揺れるぅ」

 前を走っていて、気づかなかったが、信玄の胸は豪勢に揺れている。これではスピードは出ないわけだ。

 しかし、目は油断なく武蔵を捉え、捉えながらも、校舎や遮蔽物には目を配って、先を越す手立てを考えている。

 謙信は緑の黒髪靡かせて、走りも跳躍も華麗でありながらスピードが出ている。

 信玄が姿を消して先回り、旧校舎の脇から打ちかかり、戦いの場はグラウンドに移って朝礼台をぶん回してのフィナーレ。

 利休が「それまで!」と赤旗を挙げ、余韻を残して、その場に収まった。

「まるで、戦神(いくさがみ)たちの剣舞を見るようね。こういうことにかけては、君たちは、もう完成の域だ」

「褒めてくれるのは嬉しいが、しょせん、袋竹刀の戦ごっこだ。四人とも承知している」

「武蔵は違うわ」

「ああ、武蔵は戦いを芸だと思っている。しかし、芸はいくら磨いても戦闘術でしかない。戦闘術で相手に出来るのは、せいぜい十人までだ。足軽の芸でしかないぞ」

「武蔵は天下を取ろうとしていたのよ」

「剣術で天下は取れん、釣り竿一本で海の魚を取りつくそうとするようなものだ」

「どうだろ……これを見て」

「ん?」

 

 敦子が示した仮想ディスプレーには、御山の南斜面を目指す市と二宮忠八の姿が映っていた。

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本武蔵        孤高の剣聖

 


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