魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
9『ダークサイドストーリー・5』
片岡先生は、中庭の池を泳ぐ鯉を見ている。
池は、五十坪ほどの中ノ島を取り巻いてドーナツ状になっている。鯉たちは前に泳いでいるつもりかもしれねえが、実際は、ドーナツ状の池をグルグル回っているだけなんだぜ。
池は、五十坪ほどの中ノ島を取り巻いてドーナツ状になっている。鯉たちは前に泳いでいるつもりかもしれねえが、実際は、ドーナツ状の池をグルグル回っているだけなんだぜ。
鯉が回遊しやすいように、ポンプで、適当な水流を作り出してあるんだ。
鯉のやつらは上流に向かってのんびり遡っているような気になっていやがる。
バカみてえだけど、これを作った人間に悪意はねえ。鯉が運動不足にならないようにとの気配りなんだ。
じっさい、この学校の鯉は長生きで体格も良く元気に育ってやがる。視察にきた知事が「ぜひ一匹譲って欲しい」と申し出たぐらいだ。
だけどよ、一匹だけ、回遊のアホらしさに気づいたのか、一カ所くぼんだとこに停まって動かない鯉がいたぜ。
だけどよ、一匹だけ、回遊のアホらしさに気づいたのか、一カ所くぼんだとこに停まって動かない鯉がいたぜ。
「オレに似てるなあ、お前は……」
片岡先生は、その鯉に親近感を感じていた。
でもよ、回遊している鯉も、わだかまっている鯉も、どこへも行けないという点では同じなんだけどよ。
でもよ、回遊している鯉も、わだかまっている鯉も、どこへも行けないという点では同じなんだけどよ。
パシャ
その鯉が、何に驚いたのか、水音をたてて跳ねた。
その鯉が、何に驚いたのか、水音をたてて跳ねた。
よく見ると、新顔の錦鯉が泳いでいる。どうやら、その新顔に驚いたみてえだ。
「知事さんが、気に入った鯉が欲しいっていうんで、交換に持ってきた新顔ですよ。ただ貰っただけじゃ、どこかの知事みたいに追及されますからね、前のより値の張るベッピンですよ」
庭木の手入れをしていた技能員のおっちゃんが、問わず語りに解説する。
「若い雌でしてね、そのスネた鯉は、あまりのベッピンぶりにタマゲタのかもしれませんねぇ」
片岡先生は、自分のことを言われたような気がしたぜ。
――しかし、オレは違う……だって、シンディーは、とっくに死んでしまったんだから――
片岡先生の思念を感じて、利恵のやつは混乱し、マユは一つの結論に達したぜ。
――しかし、オレは違う……だって、シンディーは、とっくに死んでしまったんだから――
片岡先生の思念を感じて、利恵のやつは混乱し、マユは一つの結論に達したぜ。
「利恵、おまえ、頭の中スクランブルエッグだろ」
「そ、そんなこと無いわよ!」
渡り廊下の窓から、中庭の片岡先生を見ながら、二人のオチコボレは声を交わしたぜ。
こっちは悪魔語り、利絵は天使のささやきで、志向した相手にしか聞こえねえ喋り方なんだけどな。思念よりも気持ちが通じる。
「アミダラ女王から、メリッサ先生を検索したのは大したものだったよ。さすがガブリエルの姪っこだぜ」
「だって、片岡先生の心には、メリッサ先生が住んでいた。だから二人が出会えるようにしたのに……」
パチャン
また鯉が跳ねた。
「片岡先生は、メリッサ先生を見て、シンディーって呼んだんだ……ほら、今でも心の中でシンディーを呼んでるぞ」
「だって、DNAまで調べたんだよ」
「天国のスパコン使ってなぁ」
「うるさい! 悪魔みたいにアナログじゃないのよ。たえずイノベーションしてんのよ!」
中庭に面した、英語科の準備室からメリッサ先生が、当惑したような顔で中庭の片岡先生を見てやがる。
「メリッサ先生もとまどってるぞ」
中庭に面した、英語科の準備室からメリッサ先生が、当惑したような顔で中庭の片岡先生を見てやがる。
「メリッサ先生もとまどってるぞ」
「おかしいなあ……」
そのとき、知井子が声をかけにきやがった。
「ねえ、マユ、お昼いこうよ。みんな待ってるよ」
そのとき、知井子が声をかけにきやがった。
「ねえ、マユ、お昼いこうよ。みんな待ってるよ」
「あ、ごめん。すぐに行くから。ランチの食券買っといて」
マユは、財布から五百円玉を出しながら、利恵に言った。
「一卵性の双子は、DNAがいっしょなんだよ」
「え……双子!?」
思わず声になってしまい、近くにいた生徒たちが驚いた。
そう、利恵とマユは、渡り廊下の二階と三階にいて、話し合っていたんだ。
――天使の親切、大きなお世話ってな――
――天使の親切、大きなお世話ってな――
――そんな――
――片岡先生は、シンディーの名前さえ封印して、記憶の底に鍵をかけていたんだよ。もう、片岡先生、立ち直れないぞ。おめえが撒いた種だから、もう一度検索しなおしたらぁ。いっぱいコンピューター使って。じゃ、よろしくな――
プツン
マユは、利恵との思念のチャンネルも切って、食堂に向かったぜ。
利恵は、混乱しながらも、天国のスパコンにアクセスしてメリッサの情報を検索しなおしやがった。
利恵は、混乱しながらも、天国のスパコンにアクセスしてメリッサの情報を検索しなおしやがった。
答えが出てこない……。
天国のスパコンでは間に合わないので、人間界の何十億ものパソコンにアクセスするように命じた。天国のスパコンはプライドが高いので、最初は拒否したが、バグの報告をすると言うと、しぶしぶアクセスした。
それは、数年前のフェイスブックから出てきた。
〈ジョンソン・オブライエン:娘のシンディー・オブライエンは、交通事故で、今日、神に召されました。でもシンディーにはシロ-・カタオカという恋人がいて、神に召されるまで彼女を見守ってくれました。シンディーは幸せに旅立っていきました。そちらのメリッサにはご内密に〉
シンディーとメリッサは、双子の姉妹で、赤ん坊のころにシングルマザーが亡くなったので、それぞれ違う里親に預けられたんだ。里親同士は、SNSで知り合い、情報を交換していた。
天国のスパコンでは間に合わないので、人間界の何十億ものパソコンにアクセスするように命じた。天国のスパコンはプライドが高いので、最初は拒否したが、バグの報告をすると言うと、しぶしぶアクセスした。
それは、数年前のフェイスブックから出てきた。
〈ジョンソン・オブライエン:娘のシンディー・オブライエンは、交通事故で、今日、神に召されました。でもシンディーにはシロ-・カタオカという恋人がいて、神に召されるまで彼女を見守ってくれました。シンディーは幸せに旅立っていきました。そちらのメリッサにはご内密に〉
シンディーとメリッサは、双子の姉妹で、赤ん坊のころにシングルマザーが亡くなったので、それぞれ違う里親に預けられたんだ。里親同士は、SNSで知り合い、情報を交換していた。
それを利恵は気づかなかった。
――くそ、憶えてろぉ……落第小悪魔め!――
利恵は、見当違いの憎まれ口をたたきやがった。たとえ小悪魔相手とは言え、天使が憎まれ口をたたいちゃいけねえんだけどな。
――くそ、憶えてろぉ……落第小悪魔め!――
利恵は、見当違いの憎まれ口をたたきやがった。たとえ小悪魔相手とは言え、天使が憎まれ口をたたいちゃいけねえんだけどな。
こういう利絵は、ちょっと可愛くてよ、悪くねえと思うぜ。
さあ、ご飯食べに行こ!
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- 片岡先生 マユたちの英語の先生