日曜日の朝、ちょっと買い物にいく前に
門がちょうど開いたので
ガーデンをのぞいてみた。
Hi!コール!
ご婦人が私に声をかけてくれた。
ん?コール?
あ、カオルね。
How are you?
元気!元気!
お互いにあいさつをかわすと
そのLady レイディは自分のガーデンへ
杖をつきながら土の道をゆっくりと歩いていく。
私もおんなじ歩調で彼女の後をついていくと、
見て!トマトがこんなに!
ちょっと手伝ってくれる?
ハサミとプラスチックバッグを
カバンから取ってくれるかしら?
もちろん!
私は彼女の杖を持って
もぎたての真っ赤なトマトを
ビニールの袋に入れる。
奥の方は手が届かないわ、ピックしてくれる?
OK!
ありがとう!2個、Kaoru にあげるわよ。
好きなの取って。
このバジルもほしい?このミントは?
ほしい!ほしい!
私のプランターのバジルは
なかなか大きくならないの。嬉しいわ♪
彼女はバサっ、バサっ、と
ハサミでバジルとミントをカットして
手渡してくれた。
ガーデンの入り口から、もう出かけるよ〜!
どうする?ここにいたかったら
いてもいいんだよ。
工具を買いに行くだけだから。と声がした。
ん〜、でも私もホームセンターで
見たいものあるし
なにしろそんなつもりじゃなかったから
蚊に刺されっぱなし。
レイディにお礼を言って、
また午後に来ます、と伝えて
トマトとバジル、ミントをかかえて車に乗った。
15分ほどドライブして
ホームセンターに着くなり
もうハーブはグッタリ。
ペットボトルに水を入れても
ピンとすることなく。
帰ったらすぐPesto を作ろう!
そしてもう一つは
ミントティにしようよ。という。
********************
Pesto は日本でいうバジルソースのこと。
ピニョーリ(松の実)と、ガーリックと
オリーブオイルに塩コショウ。
作り方も味もおんなじ。
Pesto →ペストと言うと、
ん?違うよ。ペストじゃないよ。
「ペストゥ」
最後に口をすぼめて
しっかりと小さい「ゥ」を発音して
気持ち伸ばし気味に語尾をあげる⤴︎。
(ちなみに、「バジル」の発音は
なかなか聞き取ってもらえない。
「ベィズゥル」だとすぐにわかる)
スパゲティにそのペストゥをからめて
バジリコ食べたいわ♪と言うと、
ん?バジリコ?
聞きなれない言葉らしい。
ジェノベーゼ?なのかしら?
それよりもツイストした
ショートパスタとかリコッタチーズの
ラビオリと合わせた方が美味しいよ!
そういえばこっちであんまりみない。
あることはあるよ、デリとかでね。
ドサッとパックに入ってるヤツね、
名前はなんていうのかな?知らないよ。という。
スパゲティバジリコ(またはジェノベーゼ)は
あんまりメジャーじゃないのか、
この一家がたまたま食べないだけなのか
わからないけれど。
カルボナーラもそういえば
こっちでまだ食べていない。
イタリア系アメリカンのファミリーだから
イタリアで生まれ育ったイタリアンとも
また違うんだろうし、
基本はアメリカンスタイルで
ミックスカルチャーされているのだと思う。
しかも出身地によっても
食文化が違うのかもしれないし。
********************
家に戻るとすぐに手なれた手つきで
小さなフードプロセッサーであっという間に
ホームメイド「ペストゥ⤴︎」を作って
トーストしたブレッドにさっきいただいた
完熟トマトと、イタリアンマーケットで買った
プロシュート(生ハム)と
パルミジャーノチーズも一緒に♪
ジューシーなトマトと
バジルのみずみずしい香りが美味し〜〜〜‼️
ね、ジャー(瓶)に入っているのと
味がぜんぜん違うでしょう?と
作った本人も満足げ。
そして、ミントティ。
ちょっと味が違う?と思いながら
それでもクセになる味。
(実はミントじゃなくてタイ バジルだった!
バジルティー、意外なおいしさ!)
夏の太陽と大地の恵みいっぱいの
おうちイタリアンランチを食べてから
日よけと蚊除け対策の
ガーデナースタイルに着替えて再びガーデンへ。
ねぇ、この残りのPesto 持っていって
皆さんに食べてもらったら?
クラッカーと一緒に。
それはナイスアイデア!
ビニール袋に詰めて、通りを渡って
ガーデンに行くと今度はまた別のご婦人2人が
おしゃべりをしていた。
Hello ハロー!
Good see you グッド シー ユー!
とあいさつをして、さっそくに
テーブルの上にのせて
さっきいただいたバジルで作ったので
良かったらどうぞ、どうぞ!とさしだすと
喜んでひと口パクリ♪
Ohhh 、Good!
もう少しいかがですか?
ありがとう、もういいわ。
あ!やっぱりもう一つもらうわね!
クスっとイタズラっぽく笑い
とまらない様子のおふたり。
私のガーデンにもバジルあるのよ!持っていく?とまたまたおすそ分け。
Kaoru はどこで生まれたの?
Japanよ。
日本のどこに住んでいたの?
Tokyo に。
そう。Tokyo はNew York よりも
ビッグシティなんでしょう?
そうね、人も多いから。
Do you like New York?
もちろんよ、でも…
Actually,no. Because I love New York!
正確に言うとノー。
Like じゃなくてLove だわ♪
だってここの人たちみんな
フレンドリーで親切なんだもの。と答えると
まぁ、そう。良かったわ。と
嬉しそうなLady レイディたち。
こんなご近所さんとの会話はここの暮らしに
さらにしっかりと根づいていくための
大切な時間。
自分のプランターからトマトを2個収穫して
再びいただいたバジルを持って
夜はマンハッタンのマリアのお家へ。
親戚とピザパーティがあるのだという。
いとこたちやその息子たちと奥さんなど
ファミリーがにぎやかに集まり
古い写真を見ながら
子どもの頃の話にも花を咲かせている。
ねぇ、Kaoru 見て!
これが100年前にシチリア島から渡ってきた
ひいおじいちゃんとひいおばあちゃん、
そしておばあちゃんよ。
私たちみんなここに繋がっているの。
約100年前に撮られた
セピア色のポートレートには
New York 、と記されていた。
典型的移民の子孫たち。
海を渡り、夢を抱いて家族とともに
新たな土地にやってきた先人の子どもたちは
かくもたくましくこの地で息づいている。
イタリア語、しゃべれる?
私は前に習ったけどまったくダメよ。
英語しか話せないわ。
私は最近習い始めたわ。
おもしろいわよ。
ボクはけっこう話せるよ。
でも、一度フィレンツェに行ったらすぐに
シチリア島から来たんでしょう?と
言われちゃったよ。
シチリアンアクセントが
わかっちゃったらしいね。
そんな移民ならではの会話を
そばで聞いているだけで
昔に歴史の授業で習ったことが
目の前に展開されているような、
映画を観ているような気分。
(たしか、ゴッドファーザーも
シチリア島からの移民のストーリーだし、
アルパチーノも実際にシチリアからの移民で
ブロンクス生まれ、と書いてあったし。)
それだけで歴史好きのワタシは
なんだか楽しくなってしまう♪
たくましい、といえば。
コンポストのわずかなスキマから伸びていた
トマトの苗が花を咲かせていた。
私も地球のどこにいても
こんな風に生きていたい、と思う。
このトマトみたいにたくましくしなやかに♪