大手新聞各社のアンケート調査によれば、護憲派の国民は改憲派より多いらしい。
読売新聞と産経新聞の購読者の大部分は改憲派であり、その二紙以外の購読者の大部分は護憲派だと推測する。そして、購読者シェアがそのまま護憲・改憲の比率に反映されているのではなかろうか。
もちろん新聞を購読しない人も多いが、そういう人たちはアンケート調査に対し「どちらでもない」とか「わからない」と答えるか、返事しないのではないか。新聞を定期購読していない人は概して政治意識が低いと思われる。
上述の推測の根拠は、読者は講読する新聞の主張に感化されること。もし購読している新聞の主張に嫌悪感を抱くなら新聞を変えるはずだし、読み続けるなら、その主張に賛同しているはずである。
では、なぜ読売と産経を除く各紙が護憲派なのか。護憲思想は戦争直後のGHQによる戦争への贖罪意識の刷り込みと情報統制によってもたらされた。その情報統制は、占領軍に対する批判、極東軍事裁判への批判、朝鮮人への批判など多岐にわたり、その一つに“GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判”も含まれていた。つまり、新聞社は護憲派であることを強制されたのである。
情報統制に違反した朝日新聞は数日間の発行停止処分を受け*、当の朝日はもちろん他の新聞社各社も震え上がって、その後は統制項目を厳正に守るようになった。
最初は強制されてやむをえず従った護憲だったが、それが染み付いて固定化し、イデオロギーになった。新聞各社の論者はもちろん、寄稿する論者たちも“護憲”を金科玉条のごとく守ってきた。そして、その読者たちは、天下の大新聞が間違ったことを書くわけがないと信じ、“護憲”を正しい思想として受け入れてきた。
一方、読売新聞は憲法論議を封印していたが、1955年に自民党が党是として憲法改正を掲げた時、改憲論を支持し現在に至っている。なお、産経新聞だけは、情報統制が布かれた当時存在しなかったから、その呪縛の影響を受けずに済んだ。
ところが、憲法発布後70余年を経て、その内容に時代にそぐわない部分がでてきた。例えば、自衛隊はどう見ても軍隊だが、憲法では軍隊を認めていない。その結果、隊員の士気が上がらないとか、国を守るという使命感に燃えて入隊する若者が減った、という問題が発生している。これは安全保障上、一大事である。
そもそも、「憲法9条が平和を守る」→「9条があれば侵略されることはない」という珍妙な理屈が通らないことは誰でもわかる。大手紙(読売・産経を除く)もそれがわかってはいるが、これまでの主張をそう簡単に変えるわけにはいかない。だから、中国の軍備拡張や尖閣問題、朝鮮半島の出来事を控えめに報道して、改憲論が強まることを防ごうとする。
いろいろ理屈を並べたが、今すぐ改憲か否かの国民投票を実施したら、改憲派は負けるだろう。その根拠は、冒頭に述べたように、新聞の購読者は新聞によって感化され、護憲か改憲かの意見の比率は各新聞の購読者シェアにほぼ等しいからである。
焦点は新聞を読まない層がどう行動するかである。その人々は比較的若い年齢層のはずで、改憲派が多いのではないか。この層をうまく取り込めば、改憲派に勝機が出てくる。
頑固爺としては、占領軍が作ったお仕着せの即席憲法ではなく、日本人が議論を尽くして作り上げるオリジナル憲法を持ちたいと願う。しかし、それは現状では到底無理なので、当面は部分改正でやむなしと考える。
終
*(注)昭和20年9月、朝日新聞は、鳩山一郎が「米国が原子爆弾を使用したことは国際法違反である」などと発言したという記事を掲載したことで、数日間の発行禁止処分を受けた。