徴用工裁判における韓国最高裁の判決の核心は「不法な植民地支配と直結した侵略戦争の遂行過程で起こった日本企業の反人道的不法行為」に対して慰謝料を支払え、という部分である。この主張には、「不法な植民地支配」とか「侵略戦争」など、日本の立場では不適切な表現もあるが、それはさておき、ここでは「日本企業の反人道的不法行為」の部分に絞って考えてみたい。
戦時労働者(いわゆる徴用工)には工場や炭鉱で働いた人がいたが、いずれの場合でも、その労働に対して適正な賃金が支払われていた。そして、日本人も同じ労働に従事していたし、半島出身者が不当に差別された事実はない。しかも、これまで勝訴した戦時労働者は、そのほとんどが募集に応じた人々であり、強制的に労働に従事させられた人々と同列に扱うことはできない。
これらの戦時労働者の基本的問題点については、ソウル大名誉教授の李栄薫(イヨンフン)氏*の意見が正鵠を射ていると思う。
https://www.youtube.com/watch?v=yIcIKt6LVlo
李教授の観点では、韓国最高裁といえども、半島出身者に課せられた労働条件が「反人道的不法行為」だったと主張することはできないはずだ。では、「日本企業の反人道的不法行為」とは何を指すのか?
「韓国『反日フェイク』の病理学」(崔碩栄著 小学館新書)によれば、最高裁は原告の証言をすべて事実と認定したが、その中には真偽のほどを判定し難いものもあるという。すなわち、
「食事の量がものすごく少なかった」
「寄宿舎の舎監から殴られ、処罰を受けたりした」
「仕事に出ない人に仮病を使っていると蹴りを入れた」
「逃走したのが見つかって約7日間、激しく殴られ、食事を与えられなかった」
などの証言である。最高裁はこれらの証言をそのまま引用して「反人道的不法行為」と認定した。
「息をするように嘘をつく」と言われる韓国人のことだし、これらの証言は嘘である可能性が強い。しかし、70年以上も前の事件の真偽のほどを、今さら確かめることはできない。日本の裁判なら、「証拠不十分」として原告の訴えは却下されるところだが、韓国ではどうなのか。文在寅大統領が言うように、「司法の判断を尊重する」となるのか。
百歩譲って、かりに原告たちの証言が正しいとしても、日韓基本協定により、この事案はすでに決着がついており、これ以上の議論の余地はないと考える。
終
*(注)李教授は慰安婦が拉致された事実はないと発言し、批判の集中砲火を浴びて、慰安婦たちに土下座して謝罪したことがある(2004年)。