つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

市政65周年開館40周年記念特別展 長谷川潔展 京都国立近代美術館コレクション

2023年12月05日 | おススメの展覧会、美術館訪問
12月に入った途端、空も気温も、一挙に師走らしさが増して参りました。

今年は炬燵を早めに出してしまったのがいけませんでした。やらなければいけないことは多いのに、お休みをいただくと私は結局炬燵に深くもぐり、じーと、ぼーっとテレビをみてしまったりしています。

それでも、一昨日の日曜日に「会期中に一人で出かけられるようになるといいなぁ」と思っていた長谷川潔展に電車にのって前回の須田国太郎展行よりは迷子にならず、伺うことができました。

場所は稲沢市荻須記念美術館さんです。

長谷川潔(明治24年1891~昭和55年1980)はもう皆様すっかりおなじみの版画家で、私も何度かこの作家の展覧会に出かけておりますが、今回はなんだかとても胸に響くものを感じました。

感動の種類は、「佐伯調」かな?

長谷川潔の言葉を各作品に添えてくださっている展示がきっととても良かったのだと思いますが、作家の生活や制作努力、また時代背景や思想、精神性などただ知識としてでなく、作品ひとつひとつに感じ得ることの多い展覧会でした。

佐橋と二人で展覧会を見ていた時は、私はいったい長谷川潔の何を見ていたのだろう?と思ってしまうほどでした。

やはり、長谷川潔の魅力は「黒」
そして、長年制作を共にした刷師の他界とともに自身の全ての制作に終止符をうつという人間性、精神性にあるのではないか?と思っています。

カタログには展示に添えられていた長谷川潔の言葉が掲載されていて購入を悩みましたが、佐橋美術店の本棚が本であふれかえっている様子を思い出し💦絵葉書だけを求めて帰りました。



昭和43年 オパリンの花瓶にさした種子草




梟 ベル・レッテル書房のマーク 1930年



帰りの名鉄電車を待つ間、線路に舞い降りてきたカラスの二羽の、多分まだ若い鳥だからだと思うのですが、その濡れ羽色の黒がまことに美しく感じられ、誰かとおしゃべりをしてこのホームにいればそれはそれで楽しいだろうけれど、このカラスの黒の美しさをこんなに深く感じられなかっただろうと思えました。それこそ、負け惜しみかな?

沈黙も言葉

長い沈黙の時間をもって制作に打ち込む作家たちの作品を、観る者も沈黙をもって眺め、深く感じ入ることの大切さ、その喜びを長谷川潔の黒が教えてくれたように思います。


長谷川潔のご紹介はこちらのページがとても丁寧に記してくださっています

展覧会情報はこちらからどうぞ↓
会期が10日までと迫ってしまいました。お近くでお時間がお有りでしたら
ぜひお出かけくださいませ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Y氏のコレクション

2023年12月02日 | お客様よりのお便り
佐橋と共にいつか実現したいと思っていたことの中のひとつに、当店に長くお通いくださいますお客様方のコレクションを何点かお預かりし、当店で「コレクション展」を開いていただこうというものがありました。

「いつか」という将来は、私どもの店特有のある事情から、なかなか予定を立てることができませんでしたが、まして、私ひとりになってしまいますとお客様の作品をお預かりに伺ったり、またお預かりいたしましてもうまく保管、展示させていただく自信がありませんので諦めなくてはいけないことと思っていましたが、ふと「そうだ、ブログがあるじゃないのぉ」と先日思い立ちました。


「Y氏のコレクション」
このお客様は、当店の開店当時から、いえそれ以前の佐橋の丁稚奉公時代から
美術品をお集めくださっていらっしゃるコレクターさまです。
佐橋とのおつきあいは30年以上、その間お休みされることなく、また多分、全て!あるいは全てに近い作品を佐橋からお求めくださいました。佐橋の急逝を「家族を喪うように悲しい」とお伝えくださり、実際昨年、また一昨年と大切なご家族さまを喪っていらっしゃられたばかりですので、私はこのお言葉を大変もったいなく、そしてその深さに想像さえ及ばない画商とお客様の絆のようなものを感じさせていただきました。私自身も佐橋ととともに毎月お会いするようになり20年となります。また佐橋が体調を崩してからはお返事が書けなくなってしまいましたが、ながく文通もさせていただいております。名古屋のご出身。人見知りでいらっしゃる一面と、けれどはっきりご自身のお気持ちをお伝えになる一面とをお持ちの60代後半に入られるお医者さまでいらっしゃいます。

突然の私の申し出をお受けくださり、早速ご自宅に今飾られていらっしゃる作品を画像でお送りくださいました。ちょうど法事を催されてご来客のみなさまにご所有の作品をご紹介される意味も含めての作品選びでいらっしゃると思います。今は大きな作品よりも小品を手軽に飾り替えされていらっしゃるご様子です。



大きなお庭に面する応接室の壁にはまず東山魁夷の「山湖」

個人コレクターさまのコレクションには「サイズ」とい問題の占める要素が大きいと思っています。ご自宅に飾られるとなりますと、どうしてもサイズに制限がかかります。また長い年月ご所蔵となりますと大きな作品をお飾りになるご負担が心配になります。
小さいながらにその画家のエッセンスが色濃く感じられる作品、そしてその作品自体にかける画家の意欲、集中力そして技術。その結実度を見極めるのが大変難しいことだと感じます。









その横の小さな壁面には、小磯良平の油彩画フランス人形をお飾りです。

この作品についてご本人様からこんなコメントをお寄せいただきました。

小磯先生は神戸の方です 作品は洋風で品があり、私の大好きな作家さんです いくつもの西洋人形を持っておられ それを描いた作品が幾つかあります 勿論人物画もたくさん描いてみえますが 人形と人 その描き分けがしっかりできるのも小磯先生の実力です 
人はその息づかいまでしっかり描ききれないといけない 逆に人形には呼吸も体温もありません シーンとした静けさがあると思います





この作品をY様に初めてご覧にいれるときに、「小磯作品を入手しました」とお知らせせず、壁面にこうしてあるったけの小品を飾らせていただき
宝石箱から小磯をお見つけいただくようにこの作品と出会って戴こうと壁に沢山釘を打ったり、それぞれの作品を飾る場所を2人でああでもこうでもないと相談した時のことを思い出します。

ここで作品に出会っていただく。
出会いの驚き、喜びをより深く味わっていただく。
それがこの店の意味、私たちの仕事の意味であると感じます。



ご自宅の他の場所にお飾りになっていらっしゃる作品の画像も頂戴しております。
また機会をみてY氏のコレクション②の記事を書かせていただきますね。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023/12/01

2023年12月01日 | 日記・エッセイ・コラム
いよいよ師走となりました。

先週につづき今週も、みなさまお忙しいなかをお時間をおみつけくださり、お電話やご来店をくださっています。

ひとつに、佐橋とお別れしたのち、店のこれからのことを尋ねられ「とりあえず年内は一人でなんとかがんばります」と私がお答えいたしましたことの、その先のご心配をおかけしているのだと思います。

ぐずぐずするのはもっとも苦手なはずなのですが、グズグズしている間の時間稼ぎは、今の私には一番必要な手段であるように感じています。そして少しグズグズできる時間をお通いくださいますお客様、ブログにお立ち寄りくださいます皆様が私にお与えくださっているのだとも気づかされます。

実際に片付いていない問題もあり、ここを離れられないということもございます。そして、ここに居たいという私の気持ちも確かにございます。

長いスパンでなく、「あぁ、佐橋さん今日もお店にいるのね」とご期待を少なめに、けれどご心配より少しご安心を多めにこれからもお見守りいただけましたらと存じます。勝手をどうぞお許しください。





昨日新聞紙にくるみ、バスと地下鉄にのって自宅のツワブキのお花と南天の葉と実を店に運びました。

ツワブキは以前も書かせていただいたことがありますが、その葉を薬用としてつかうため苗を取り寄せ佐橋と二人で自宅に植えました。

南天はもともと自宅にありますものを今年はなにかこの赤い実がとても気にかかり、喪中であるとか縁起とかそういうものを全く無視して身近におきました。なぜ気になるのか?今調べてみますと南天の花言葉は、特に赤い実の花言葉は「良き家庭」「私の愛は増すばかり」だそうで、調べてみて少し照れました。

ブログの更新が途絶えましたが、ひどく憂鬱であった喪中はがきの投函も数日前に何とか終えました(お客様宛はございません)

これで佐橋のことは私の思う限りの皆様にお伝え出来たかと思い、とてもほっとしております。

ですから、これから私は、今までは全く違う師走をひとりささやかな楽しみをもって過ごしたいと思っています。じっくり絵をみて、じっくり本を読んでお掃除もしながら過ごします。散歩に行ったり、電車に乗って美術館にいくのもよいでしょう。

ブログは相変わらずひどく悲しんだり、喜んだりの記事になるかと存じますが、それでも書き続けさせていただこうと思っております。

よろしければまたお立ち寄りくださいますようお願い申し上げます。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする