つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

2024/12/24

2024年12月24日 | 堂本印象
とうとうクリスマスイブ🎄を迎えました。

今年、いままでで一番早く1年が過ぎていった気がするのは、平穏に暮らせた証拠?邪念にとらわれて「その瞬間瞬間」を生きられなかった証拠?単に歳をとった証拠?

いずれも正解のようでいて、なんとなくピン!とこないところにこの一年の私の生活の真実が隠されているようにも思います。

「自分とのつきあい」も長くなると、自分の本音にうすうす気づきながら、なんとな~くそれをスルーする、誤魔化して過ごす術を身に着けてしまっているということがありますね。

だからといって、後悔や反省さえも「うっとうしい」

それならば!!「今年が早く過ぎたのは、ずっと暑くて夏が長すぎた~せい~」にしておこうと結論づけました。

さて、そんな一年の佐橋美術店、最後の一週は店の展示をこんな感じにまとめさせていただきました。

まず応接間からです。








少しお正月らしさを加えたいと思い、堂本印象のお軸と向吉さんの木彫を飾らせていただきました。






旭日をお正月にお床に飾るのが当たり前でなくなってしまって何年ぐらいが経っているのでしょうか?20年~30年?

けれど、すこし時代がUターンを始めているような気もして、キラキラ✨の堂本印象の旭日がこのお部屋にしっくりと落ち着いて見えています。

京都の町が外国の方達に占領されているようならば、せめて京都画壇の作品たちに「京都を旅する気分」を味わわせてもらおうと思います。

一見静かな堂本印象の作品のなかに潜む、かすかな「ゆらぎ」を感じることができるようになれば、あまり自分や他人を責めなくてもよくなるように感じています。それは、案外タフな精神性であるようにも思えるのです。


堂本印象 軸 「旭光新輝」 紙本・彩色  48×58㎝ ☆彡 
向吉悠睦 木彫 「西陣」 ☆

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堂本印象 秋色

2024年09月05日 | 堂本印象
昨日はご来店のお客様がいらっしやらなかったので、ついのんびり過ごしてしまい、午後のおやつの時間が近づいてから慌てて仕事を始めました。

やらなくてはいけないことは、それなりにあるのに、切羽詰まらないと動き出せないことがとても多くなりました。二人の時にはきっとお互いが監視役にもなれ、それなりに仕事ができたのだと思います。


せめてブログだけは書かせていただこうと堂本印象について調べていると、また画集を前にして立ち止まってしまって、とうとう記事を書けないまま帰社してしまいました。

画集の前で立ち止まったのは、「秋色」が何年位の制作か?ある程度はっきりさせたいと思ったからです。佐橋には「後期」としか聞かされていませんでした。

弥栄さんにお尋ねすれば、すぐに教えていただけるのはわかっていますが、そして今調べてもまたすぐ忘れてしまうのもわかっていますが、それでもとにかく調べないと!と思いました。

「なんとなく~」一日の大半をグズグズ過ごしてしまった時間を取り戻すのには、逆に時間の無駄遣いのようにじっくり何かに取り組むほうが、「何かをした一日」になるように感じます。




同じ落款は画集にありましたが、年代はわかりません。

「印象」の文字は、多分昭和20年~30年のころだろうと思いますが、その判別は難しいと思えました。わずかに「印」という文字の変化があるくらいでしょうか。

あとは同じような作品を画集に見つけるしかありません。
堂本印象は、印譜をコロコロ変える画家ではなかったように思いますが、作風は随分変化していきます。


ヒントは絹本!墨の扱い方!人物の描写!です。









昭和20年代前半の作品たちです。「秋色」にとてもよく似ています。



昭和30年の作品です。






「秋色」です。

20年~30年というのはわかりますが、さらなる年号の決定はやはりできません。

ですから、とりあえず、昭和20年~30年。1945年から1955年。
印象50代半ば~60代前半の作品と考えたいと思います。

もし、訂正があればまたお知らせいたします。

ちなみにこの後すぐ、昭和30年64歳で印象は抽象表現に挑戦します。





日本芸術院会員、文化勲章受章、美術館のデザイン。
この昭和30年前後の堂本印象には華やかな経歴が並びます。そこで老境の境地に入るのかと思いきや、それまでの画業を網羅しながら、或いは活かしながら、抽象の世界に挑戦を挑むその熱意。

御舟の言う「梯子を降りて次へ向かう勇気」というより、梯子を降りると同時に次の梯子に足をかけている画家、それが堂本印象のように思えます。

体質的というより、かなり意志的な行為のように感じられるのも特徴的です。


朝顔 昭和40年

抽象画を描きながらのこの線描画。
初期の線描とは全く趣が違います。

いつもどこか明るく、楽しく、かといって軽々しくなく、寂しく、けれども決して重くなく。。

印象の作品にはいつもそう感じさせる魅力があります。

もしかしたら、それが印象にとっての「生きる」ということなのかもしれません。



「秋色」は小さいながら、横に広がる余白が、その堂本印象らしさを十分表現できている作品だと思っています。

虫の音とともに一人歩く。

そんな秋の風景画です。






堂本印象 「秋色」 絹本 尚郎箱 ひさお
17.5×33.5㎝  税込275,000







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2024年01月25日 | 堂本印象
昨日から、またぐんとお寒くなりました。
おかげさまで、名古屋の雪はこの程度ですので、日常に困ることはそうありません。

みなさまのお住いの地域ではいかがでしょうか。
地震に雪に、今年の年明けは本当に大変なことばかりです。
寒中お見舞いなどと悠長なご挨拶も失礼かと存じますが
ひたすらにみなさまのご健康をお祈り申し上げます。





これほど寒く、本当に外で雪が舞っている季節になると
絵の中の雪がとても温かく感じられ不思議です。

暖房の効いているお部屋で見ているからだろうとずっと思っていましたが、
雪を描くというのは、画家にとってとても難しく、やはりこの白さと
温かさを表現できる技術は相当のものであろうと考えなおしました。

もちろん技術だけでなく、精神の問題、人間力の差も一枚の絵に如実に
表れるテーマだと思います。

おそらく、東北の雪と、富田渓仙や堂本印象の西の画家の描く雪も随分違ったものになるでしょう。

「雪」というテーマで作品をお持ちになるのも、この春を望む晩冬の刹那には日本人らしい感情を楽しめ、なかなか粋なことであるように思います。



さて、私は雪は少なくても、油断せず転ばないようにこれから出社したいと思います。

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ご来客

2023年04月19日 | 堂本印象
少し前になりますが、ご遠方のお客様からメールにて幾つかのご質問をいただきました。

ご質問の内容が魅力的で、とてもこのお客様らしく感じられましたので、ご許可を得てこちらに掲載させていただこうと思います。

以前あった、サムフランシスの赤いマッチ箱のような作品は

もう在庫されていないですよね?

印象の旭日のお軸が、他の印象作品と桁が違うのですが、理由があるのですが?

市場原理といえば、それまでですが・・・。大きくて優品ということでしょうか?


質問ではありませんが、金山平三を買われたお客様は、すごい目利きであるし、

話されている内容も、なかなかの御仁と、感心しました。

 



これに対し、私どもの差し上げましたお返事は以下の通りです。



おはようございます。昨日いただきましたご質問へのお返事を させていただきます。 ◎ サムフランシス作品  残念ながら、少し前に手放させていただきました。 ◎印象作品について  まず日本画ではお正月掛けなどの節句作品はお客様にお道具として喜ばれ、重用されます。  第二に、ほとんどの作家において晩年の作品の評価が高く、この印象作品も最晩年の作品で価格も上がります。  また、西洋の印象派の点描作品を想起させる表現がなされ、尚且つ、堂本印象人気の抽象画の要素も含む作品だと感じ  当店の印象作品の目玉と考えております。 金山平三作品をお求めくださったお客様のことに触れていただき、嬉しく読ませていただきました。 日本画、油彩画、お道具、とにかくご興味の幅の広いお客様でいらっしゃいます。

今回も、いただきましたご質問のメールの内容にも驚き、感動いたしました。 いつもブログをご覧くださり、心よりお礼を申し上げます。

以上









本日、このお客さまがお時間をお作りくださりご来店くださいました。

予め、ご覧になりたい作品をメールでお知らせくださいましたので、この頃、急な掛け替え作業が苦手になった私たちは精神的にも肉体的にも楽をさせていただき、助かりました。


せっかく飾らせていただきましたし、来週からの展覧会の展示と重なる作品もありますので、この数日、皆さまにもブログでお楽しみいただこうと思っております。







そして、結局、本日お出掛けいただきましたお客様は徳岡神泉の鯉にお納めのお約束をくださいました。

先日名都美術館さんに伺って神泉展を拝見しましたが、当店のこの鯉もやはりかなりレベルの高い作品だと思い直しておりましたし、

またこの作品は長く当店にあってくれましたので、佐橋も私も大変感慨深く感じました。

私どもの作品に対する思いをこのお客様に引き継いでいただけることに何よりも感謝し、またとても光栄に存じます。


今週は、ご来店のお客様が多く、元気もいただいています。

準備もすこしづつ進めながら、来週の展覧会により多くのご来客がありますことを心より楽しみにしております。














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堂本印象について

2023年02月01日 | 堂本印象
昨日も寒く、お天気も今ひとつで周りが暗く感じられたからでしょうか?



印象の晴雪がとても明るく、美しく感じられました。





「椿に想う」という記事を思いがけず多くの方にお読みいただきました。

丁度お休みをいただいていたので、珍しく佐橋がコメントを残してくれました。

人物画だけでなく、花鳥や風景画にも、良い作品には古径や華岳の作品のように「間」「気の塊」が感じられるというような内容でした。

私たちはお休みにも絵のことばかり話しています。

時々、そんな時に親しくしてくださる画商さんからご連絡をいただくと、2人で当たりを見回し「どこかで聞かれている??」と驚くこともあるほどです。


私の質問に対する佐橋の答えは

古径は駄作が極端に少ない画家だ

華岳は早く他界してしまったので作品数も多くない

その中には出来の良いもの、そうでも無いものもあるだろうけれど、紙の隅に簡単に描かれた作品或いは書でも「華岳の香り」が十分に感じられるものもあるので、普通の画家に比べたら「気や情」を感じられない作品は極端に少ないだろう


そして、印象については


堂本印象の多彩性は「日本のピカソ」とも言うべきもので、京都の琳派を始めとする各派を網羅し、仏画、花鳥画、西洋の印象派的風景画、新古典主義による人物画や群像、抽象画などそのすべてにおいて類稀なる制作を全うした

現代の我々はその多彩さに惑わされ、彼を正しく評価出来ていない

見直されるべき最右翼の作家と言える



昨年末、2人で京都に出かけたのはホテルの窓から魁夷の「年暮る」の風景を探す為だけではなく、主には京都府立堂本印象美術館さんに伺う為でした。










企画展目当てというより、この美術館自体に伺いたいと思いました。


全ての設えに堂本印象が関わり、まさに「人、堂本印象」を感じられる美術館さんです。











決して大きな美術館さんではありませんが、ゆっくりとした時間の流れ、そして印象という画家の愛全部に包まれて、清々しい気持ちになりました。

私達は今あちらこちらに動くことができず、せっかく京都に行っても一般的な旅らしさを味わうことはありませんが、それでもとても心地よい満足が得られました。





「この館は、神仏や善意に充ちた多くの人びとからの贈り物である」


この印象の言葉が全てであろうと思えました。












どこまで追いかけられるかはわかりませんが、佐橋美術店にももう少し、印象の愛を充してみたいと思っています。

古径や華岳の愛が「陽」
内に向くエネルギーに満ちるなら

印象の愛は「陰」
外へ外へ、拡散のエネルギーに満ちる作品であると、今の私は感じています。










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