つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

お便り

2024年07月16日 | お客様よりのお便り
お客様からお便りをいただいたので、お返事を書きました。

多分少し以前に、ご自分で描かれたカラス瓜のお葉書で私の誕生日にメッセージをくださいました。


「夏美さま
62歳のお誕生日おめでとうございます。恙無くお過ごしですか」

そう裏にお書きくださいました。



書はもともとお上手ですが、眼を悪くされて、かえってそれが余白を埋める優しさとなり、今回もお気持ちが真っ直ぐに伝わる文字をお書きくださいました。



私は堀文子さんの仙翁を描いた絵葉書を選びました。以前ご来店の際に古径の岩菲に感動してくだったので、似た花を選びました。



「お便りをありがとうございました。おかげさまで無事に62歳になりました。恙無く過ごしているかは余り自信がありませんが、体重が少し増えました。独りに諦めがついてきたのだと思います。送っていただいたからす瓜のようにこれからは少し自分に〝色〟を添えていきたいと願っています。またお便りさせていただきますね。」


とお返事を書きました。何とか無事には過ごしておりますが、「恙なく」という言葉の品に達した生活はまだまだぁ~と思えました。少しでも謙虚に「恙なく」生きていけるようにしたいなぁとしみじみ感じました。






烏瓜はウリ科の蔓性多年草。雌雄異株で、巻きひげを伸ばして高くよじ登る。茎は細く、葉は掌状に裂けている。夏の夕方、5裂した白い筒状の花を開く、花びらの縁や先が繊毛のように細く伸び、レースの飾りにように見える。花は翌朝しぼむ。

俳句歳時記には烏瓜の花についてそう記されていました。

蕾のどこにこれだけの花や糸を畳んで「その時」を待っているのでしょう?そして、一晩中をかけて花を展開して、展開し終わればすぐにしぼんでしまう。秋に真っ赤な美しい実を付けることを知ってか知らずか?どうしてそう坦々と生きられるのでしょう。


花言葉は、「よき便り」「誠実」「男嫌い」 
お、おとこぎらい?

「よき便り」は実のなかの種の形状が結び文ににているところから、
「男嫌い」はこの白い花が日没後にひっそり咲き、日の出前にはしぼんでしまうことに由来するそうです。


一枚のお葉書に綺麗に畳んでしまってくださっているお相手の真心の襞を、余すことなく開いて感じ、感謝の言葉をお伝えする。それがお便りを拝受する。お返事を差し上げるということかなと思っています。

それは、一枚の絵にどれだけ画家の心の襞を感じとれるか?にも通じることだと思います。


俳句もまた魅力的な詩だと思えます。
最後に歳時記に載っていた俳句をご紹介いたしますね。

月の精さまよへり花からすうり 佐藤国夫

月に糸伸ばしてからすうりの花 青木まき子

宵寝してふはふは烏瓜の花   佐々木咲


















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お便り

2024年05月11日 | お客様よりのお便り
お客様よりお便りを頂戴致しました。最も長くお付き合いをいただいておりますお客様。

2年前にご家族とお別れをされていらっしゃいますので尚更、佐橋の一周忌を迎える私の気持ちに寄り添ってくださり、また佐橋を優しく偲んでくださる内容のお便りでした。

日本画を飾ってからはまだお立ち寄りいただいていませんが、ブログなどから石川晴彦の作品などにご興味をお持ちくださり、絵葉書の華岳作品との違いなどについても書いてくださいました。

また神泉の「菊」がよく描けているように思うともお知らせくださいました。

人が幸せを願うのは、長い人生には悲しみや苦しみが多くあることを知っているからだと思います。この一年は私にはとても辛い一年でしたが、きっと絵を観る目は深くなっていくだろうと信じ、それを楽しみにここまでたどりつけたように感じています。
残念ながら、、まだその成果は実感されておりませんが( ;∀;)

そして、大変失礼な言い方かもしれませんが、こちらのお客様の絵の見方にも変化がお有りであったように思います。




神泉の描く「菊」は弥栄さんも私もとても良いと思っています。
「菖蒲」にお約束をいただきましたお客様も最後まで悩まれました。

また後ほどブログで触れさせていただきますが、菊という日本を代表する花の美しさをどこに感じるか?ということに神泉は答えてくれているように思います。



今日はこちらのお客様のお子様の大切なお祝いの一日。
長いお付き合いになりますと、なんだかお客様のお暮しの喜怒哀楽を直接感じ取ってしまい、こちらがドキドキ、嬉しい、悲しい。。になってしまい不思議です。

大切な日の直前に私どもからのご案内状をお届けできたようで、お受け取りのメールもいただきました。

みなさまにもそろそろ封書やはがきをお届けできたかと存じます。何分ひとりの作業ですので、ミスも多く、ご案内をお送りさせていただいていないお客様もいらっしゃるかと思います。お詫びとともに、よろしければこれから発送をさせていただきますのでご遠慮なくご連絡をくださいますようお願い致します。

ホームページも更新させていただきました。ご参考に御覧ください。



佐橋美術店
052 9384567
09056010068(メッセージ可)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

U氏のコレクション

2024年01月06日 | お客様よりのお便り
お送りいただきました画像を1ヶ月近く私が抱え、ブログでのご紹介が大変遅くなってしまいました。

お仕事場に山口薫や金山平三、佐藤忠良のミミヅクのブロンズをお飾りになってくださっていらっしゃるお客様が私のお願いに応え、今回はご自宅のご様子をご紹介くださいました。

とりあえず画像を全て掲載させていただきましょう。



梅原龍三郎の岩彩作品、洋梨と柿です。懐かしい!

映り込みの問題だけでなく、梅原の作品は写真に撮ると少し静かになってしまう。

面白く無くなってしまうのですね

不思議なことであり、また当然といえば当然です。それこそが梅原作品でしょうから。







名城小学校の桜並木の南側、二軒目の店で大々的に開催させていただいた杉山寧展でお求めいただいた作品です。

私の記憶はいつも曖昧ですが、確か一度ご夫婦でご来店くださり、お帰りになられた後、引き返してご来店くださり
「この作品が欲しいです」とおっしゃってくださったと思います。

いつも意外で、いつも感動を与えてくださるのが、このお客様の「お買い物」です。





ご覧になりにくいかもしれません。
堂々たる浮田作品です。
お引き立ていただくようになった初期のお納めであったと記憶しています。






アイズピリ。

こちらは私も初めて拝見するお作品です。
額も含め、とても明るい、元気を与えてくれる作品ですね。
奥様のお人柄そのままだとも思えます。

つい、「重さ」を想像してしまうのは、間違いなく私が1人になってしまったからだと思います。
また奥様にお会いして元気をいただかなくては!



ここまでが、2階、3階のお廊下に飾っていらっしゃる作品だとお聞きしています。
なんとまぁ贅沢な〜と思いながら、階段にこの牛島とお聞きしてさらに驚きました。




サムホール、確かにとても小さな作品ですが、
牛島の「青」をたっぷり楽しめる、佐橋も私も大好きな作品でした。








画像をお送りくださると同時にお言葉もお添えくださいました。


自宅は私の好きな近代日本洋画と妻の好きなフランスモノや杉山寧。
はたまた娘の好きな浮世絵などコレクションに一貫性がないのですが、 それこそが自宅かとも思えます。 恥ずかしながら、何かお役に立てる物があればご利用ください。 写真は映り込みが多く申し訳ありません。


ご家族4人、みなさまが絵画をお好きでいてくださる珍しいお客様です。

中学生、小学生でいらしたお子様達がそれぞれご立派な20代の大人になられました。
時々ご夫妻とご一緒に当店にもお立ち寄りいただくことがあり、そのご成長ぶりを拝見するのを私たちの楽しみでもありました。

浮世絵はお嬢様のお部屋に、最後の荻須作品はご子息のお部屋に飾っていらっしゃるのですね。







最後はお玄関に飾られていらっしゃる作品のご紹介です。

当店では扱いの珍しいことでしたが、小品の割に実にビュッフェらしい魅力たっぷりの作品であることを
お認めいただきお求めをいただきました。

懐かしい、心温まる思い出のある作品です。







そして、お玄関にはもう一点。岡田三郎助の風景画を。

お納めのお約束をいただきました時の感動ばかりを思い出し、この作品の内容のことをすっかり忘れてしまっていたことを私は今とても恥ずかしく思っています。

こんなに良い作品だったかしら・・・
正直に申し上げますと、そう感じています。


と、ブログを書きながら私は朝のお味噌汁を作るのに、出汁を入れたタッパーの蓋が開かず、四苦八苦しています。
ゴム手袋まで出してきましたが、まだ開いていません。

けれど、それが、人、家族、自宅というものではないでしょうか。

バラバラのご趣味の作品それぞれに、ご家族4人のご性格や、その4人のご家族としての組み合わせ?営みが感じ取れるような気がしております。

このご家族様とのお暮らしを通して、ご主人様がどのようにコレクションを広げていかれるのかを私は今とても楽しみにさせていただいています。

60代になられたばかりのお客様ですが、まだまだ本領を発揮されていらっしゃらない。

孤独感、その感性は随一のものをお持ちだと感じます。

「その時」には、きっと頭の良さ、ご家族という鎧をお脱ぎになり、驚くほどのコレクションを展開されるだろうと想像しています。

そしてその時には、本当の意味でご家族がお客様をお支えになるだろう。そう信じています。

この岡田作品をお持ちになり続けるということは、そういうことだとも思います。

お客様も、私も無理をしなくても良い。どのような形になるかはわからないけれど、本当に必要ならば必ずその時は来るのだと思います。佐橋とのお別れが意味を持つその時がいつか必ずくるでしょう。


今タッパーの蓋が開きました!!!

これで前に進めます。ご飯を食べて、支度をして初仕事に出かけます。











コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お客様のギャラリー拝見

2024年01月05日 | お客様よりのお便り
昨年末から私がしつこく各お客様に「作品を飾っていらっしゃるご様子を画像でお送りください!」とお願いをしておりましたので、それに応え画像をお送りくださるお客様がいらしてくださいました。

まずこちらは、名古屋市内で和菓子店を経営されていらっしゃるお客様のお店のご様子です。

さて、当店がお納めした作品はどこにお飾りくださっているでしょうか?


このお客様は職人さんであり、お商売をされる商人さんでもいらっしゃいます。
多分、日常には色々な感情が湧き起こっていらっしゃるのだろうと思います。ですから、ご趣味もとても広い。


手前のショーウィンドウには、まず古い楽譜。確かネウマ譜。一気にクリスマスの気分に誘われます。

ずいぶん大きなドールハウスと沢山のお人形達。


そして、そうです!当店からはその隣で美しく光っているラリックのガラス作品をお納めしました。

ほんの少し前なのに、「懐かしい輝き」

この作品をクリスマスに合わせてお飾りいただくと聞いて驚き、内心、「大丈夫?」と思っていましたが、
この画像を見て「なるほど!」と安心いたしました。





立派な床の間には大きなクリスマスツリーとやはり当店がお納め致しました佐野繁次郎作品、これは裏側の作品ですね。
表はお馴染みの絵画作品、裏にはこうして佐野の構造主義に関する言葉が書かれています。

この裏側の作品をクリスマスのイメージに重ねてお飾りくださいましたのが、このお客様のセンスです。

ラリックにしても、佐野繁次郎にしても、当店にあった頃のイメージと違う印象を受けます。

それは、このお客様が作品を楽しんでいてくださっている。ご自分を表現してくださっている証拠です。

















こちらのお店は京菓子司 亀広良さん。

朝廷に菓子の「献上」を許されたお役目が京菓子司。

京都で修行を積み、各季節を丁寧に感じ、素材を厳選し、「一期一会の上菓子を表現し続けている」
名古屋では珍しく志の高いお店でいらっしゃると私は思っています。








上菓子にはお題が必ず添えられます。
今年のお正月のお菓子、「和」
守一の作品のようなお菓子ですね。



年末の大変お忙しい中を画像をお届けくださいましたこのお客様にもいつも大きな励ましをいただいています。

また季節の移り変わりとともに、お店の様子をお知らせいただきたいと思います。
ご協力、まことにありがとうございました。













コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Y氏のコレクション

2023年12月02日 | お客様よりのお便り
佐橋と共にいつか実現したいと思っていたことの中のひとつに、当店に長くお通いくださいますお客様方のコレクションを何点かお預かりし、当店で「コレクション展」を開いていただこうというものがありました。

「いつか」という将来は、私どもの店特有のある事情から、なかなか予定を立てることができませんでしたが、まして、私ひとりになってしまいますとお客様の作品をお預かりに伺ったり、またお預かりいたしましてもうまく保管、展示させていただく自信がありませんので諦めなくてはいけないことと思っていましたが、ふと「そうだ、ブログがあるじゃないのぉ」と先日思い立ちました。


「Y氏のコレクション」
このお客様は、当店の開店当時から、いえそれ以前の佐橋の丁稚奉公時代から
美術品をお集めくださっていらっしゃるコレクターさまです。
佐橋とのおつきあいは30年以上、その間お休みされることなく、また多分、全て!あるいは全てに近い作品を佐橋からお求めくださいました。佐橋の急逝を「家族を喪うように悲しい」とお伝えくださり、実際昨年、また一昨年と大切なご家族さまを喪っていらっしゃられたばかりですので、私はこのお言葉を大変もったいなく、そしてその深さに想像さえ及ばない画商とお客様の絆のようなものを感じさせていただきました。私自身も佐橋ととともに毎月お会いするようになり20年となります。また佐橋が体調を崩してからはお返事が書けなくなってしまいましたが、ながく文通もさせていただいております。名古屋のご出身。人見知りでいらっしゃる一面と、けれどはっきりご自身のお気持ちをお伝えになる一面とをお持ちの60代後半に入られるお医者さまでいらっしゃいます。

突然の私の申し出をお受けくださり、早速ご自宅に今飾られていらっしゃる作品を画像でお送りくださいました。ちょうど法事を催されてご来客のみなさまにご所有の作品をご紹介される意味も含めての作品選びでいらっしゃると思います。今は大きな作品よりも小品を手軽に飾り替えされていらっしゃるご様子です。



大きなお庭に面する応接室の壁にはまず東山魁夷の「山湖」

個人コレクターさまのコレクションには「サイズ」とい問題の占める要素が大きいと思っています。ご自宅に飾られるとなりますと、どうしてもサイズに制限がかかります。また長い年月ご所蔵となりますと大きな作品をお飾りになるご負担が心配になります。
小さいながらにその画家のエッセンスが色濃く感じられる作品、そしてその作品自体にかける画家の意欲、集中力そして技術。その結実度を見極めるのが大変難しいことだと感じます。









その横の小さな壁面には、小磯良平の油彩画フランス人形をお飾りです。

この作品についてご本人様からこんなコメントをお寄せいただきました。

小磯先生は神戸の方です 作品は洋風で品があり、私の大好きな作家さんです いくつもの西洋人形を持っておられ それを描いた作品が幾つかあります 勿論人物画もたくさん描いてみえますが 人形と人 その描き分けがしっかりできるのも小磯先生の実力です 
人はその息づかいまでしっかり描ききれないといけない 逆に人形には呼吸も体温もありません シーンとした静けさがあると思います





この作品をY様に初めてご覧にいれるときに、「小磯作品を入手しました」とお知らせせず、壁面にこうしてあるったけの小品を飾らせていただき
宝石箱から小磯をお見つけいただくようにこの作品と出会って戴こうと壁に沢山釘を打ったり、それぞれの作品を飾る場所を2人でああでもこうでもないと相談した時のことを思い出します。

ここで作品に出会っていただく。
出会いの驚き、喜びをより深く味わっていただく。
それがこの店の意味、私たちの仕事の意味であると感じます。



ご自宅の他の場所にお飾りになっていらっしゃる作品の画像も頂戴しております。
また機会をみてY氏のコレクション②の記事を書かせていただきますね。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする