思春期の頃はあまり自分が変わっているとは思いませんでした。けれど、学校生活には幼いころから強い違和感がありました。ですから、本はいつもそばにありました。
大工の父は大学には何か手に職をつけるために行くものだと言っていたので、文芸学部への進学を反対されるだろうと思っていましたが、「自分の考えていることを言葉にできるようになるのは良いことだ」と賛成してくれ、しかも大学では運よく素晴らしい先生に出会え、色々なことに救われました。
そのために益々、何か資格を取りたいとか、手に職をつけたいとかそういうことは要らないと考え始めていましたが、ただ生まれつき記憶力がひどく欠如しているので、「調べること」を頼りに生きるしかなく、図書館司書の教育課程だけは取りました。
就職先で出会った佐橋は私より何倍も本が好きでした。亡くなる直前まで一度に3、4冊の本を平行読みしていました。
ですから、漫画をはじめ自宅にもこの店にも本はいっぱいです。
店の本棚はこの頃全く整理していませんでしたが、先日求めた著作集のおかげでやむおえず、、図書室の整理に手をつけはじめました。
美術品に関わる著作だけでなく、まぁ~色々な本が図書室にはあります。
こちらの本は、ひとつは表装屋さん?の本も交じっていますが、全て画商さんが書かれた本です。
眼一筋
画商一代記
洋画商
発句一代
いかにも画商さんらしい本のタイトルですね。まさに勝負師?相場師?を連想させる言葉選びです。この著者の方達のご活躍は当時東京で見させていただいていましたので、私はこちらの本をあまり詳しく読んでいませんが、昭和の時代は画商さんにとって良い時代だったのだなぁと今つくづく思っています。
発句。ホックというのは美術品の市場、交換会で出品作品に対して最初に主催者が設定する価格、つけ値を伝えるため声のことを指します。この最初の一声で、競りの行方は如何様にも変化します。落札価格も大きく変わります。この交換会が盛況であればあるほど、相場を動かしているという実感も大きくなるのだと思います。交換会の会主としての画商の一生、例えば「発句一代」はそんな内容の本だと思います。
一口に画商といっても、その仕事にはいろいろな形があり、感じるステータスも色々だと思います。どの本も少し「癖」はあると思いますが、お通いくださるみなさまでしたら、本をお貸しすることもできますので、よろしければお読みになってみてください。