月曜日には京都に伺いました。
他の美術館さんはお休みですので、欲張る事なく、ひたすら国立博物館さんをゆっくり見学させていただきました。
人間ドッグを受けるように、美術品を鑑賞する力がどれほど養われたかを確認するには
いつも見ている時代、ジャンルを離れ、その美しさも意味もわからない美術品に出会いに行くのも大切なように思います。
私達のように、展覧会を見ながら、「この作品を持ち込まれたら、本物かどうかわかる?」とか
「いくらで買わせていただく?」とか、そんな会話は全く必要ありませんが、
鎌倉時代に描かれた絵や文字が、どうして今ここにあるのか?と問うてみるだけでも、鑑賞の価値が
あるように感じるのです。
歌人藤原公任(きんとう)の「三十六人撰」に選ばれた飛鳥、平安時代の三十六人の優れた歌詠み人を、
鎌倉時代以降、多くの画家が描き続けました。
その中でも、旧秋田藩主 佐竹侯爵家に伝わった「佐竹本」はその美しさが最も優れているといわれます。
そして、この佐竹本はその美しさ故に、美術品としての価値を問われる問題に多く直面していきます。
大正時代、この佐竹本、絵巻全二巻は、売りに出されることになりました。
が、その価値が計り知れず、あまりに高価なため、国内では買い手がつかず、海外への流出が危ぶまれたのです。
それを憂いた当時のコレクターや茶人らは、益田鈍翁の呼びかけで、絵巻物の切断を協議、
37枚に切断された歌仙絵をそれぞれが購入することとしました。
バラバラになった歌仙絵は、100年の時を経て、今回京都に集結。
断簡37件のうち、今回31件が鑑賞出来る展覧会となりました。
美術品ならではのストーリーを背負っての展覧会には、多くの方々がお出かけになられたようですが、
私達は運良く、特別に開館をした日に伺ったので、混雑に出会う事がありませんでした。
筆者については諸説あるようですが、
藤原信実の描く線の凛々しさと豊かさが歌人一人一人に趣きある表情を持たせ、
その清々しさと
後京極良経の少し粘性のある美しい文字との絶妙なバランスがこの作品に命を与えたように思えました。
ご紹介が遅れ、この展覧会は今週いっぱいになってしまいました。
よろしければ是非お出かけくださいませ。