つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

仕入れ

2010年06月23日 | 絵画鑑賞

画廊の絵画作品の仕入れ方法はさまざまです。

お客様が作品を売りにこられることもありますし、こちらからお願いしてコレクターさんにご所有の作品をわけていただくこともあります。

私共は主に物故作家を扱っておりますので機会が多いほうではありませんが、現在ご活躍中の先生がたにお願いして新作を描いていただくこともあります。

交換会といわれている画商同士の競りのような場も全国でほぼ毎日のように開かれていますし、一般のコレクターさんにまじりオークションで作品を落札することもこの頃では多くなりました。

画商はそれぞれの扱う作品の種類によって様々な仕入れ方法を使い分けています。

当店はあまり作品仕入れの数が多い画廊ではありませんので新しい仕入れ作品の簡単なチェック、伝票の確認なども短い時間で終わります。

その後 作品を店に飾り 私もそのとき初めて作品をじっくりみることになります。

この時間はとても楽しみではありますが、佐橋は自分が仕入れた作品をこの時はじめて「売り物」として再吟味いたしますので 画廊の仕事のなかでは割と緊張の時間を過ごすことになります。

何を語るわけでもなく 「いいね」とか「好きだな」とか「しばらく見ていよう」・・そんな短い会話が

夫婦でかわされ それぞれの観賞を終えると仕入れの作業が全て終わります。

先日この写真の作品を仕入れました。はじめの事務処理のとき「あれ?誰の作品だろう?面白いなぁ~あとでじっくり見よう」そう思いました。 

たまたま額に傷がありましたので、どう直すか?額ごと取り替えるのか?扱いの方法が決めるまでに少し時間がかかると思いましたので 二人でゆっくり鑑賞する時間を特別に設けませんでした。

中野弘彦 (1927年~2004年 山口県生まれ)

は立命館大学文学部哲学科卒業・京都大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業の日本画家です。

時代は違いますが 同じように京都大学の哲学科美学卒業に洋画家須田国太郎が居り、やはり美術大学を卒業した画家とは作品へのアプローチの仕方が随分違う感じが致します。

ほおずきにどんなイメージをお持ちでしょうか?

ほおずき、ホオズキ、酸漿、鬼灯、金灯、錦灯籠・・調べてみますとその表記だけでもイメージが随分変わってくるものですね。

浅草のほおずき市の酸漿や子供のころ鳴らして遊んだホオズキとは少し違ったイメージをこの作品からお感じになられるのではないでしょうか?

提灯に見立て お盆の飾りとして使われるほおずきのイメージ。

少し霊性を帯びながら、スッとそこに確かに立っている植物のイメージ。

鬼灯 というほどの 「強さ」はなく 金灯や錦灯籠というほどの 「粋さ」もなくただ静かにそこに「ある」ほおずきのイメージ。

中野弘彦の作品にはいつも存在への深い問いかけを感じます。

「じっくり作品を見て楽しもう!」そう思って楽しみに事務処理を終えた矢先、来店のお客様のお目にとまり翌日この作品にご売約をいただくことになりました。

自分の気になった作品が目の肥えたお客様のもとへ行くことになったのですからこんな嬉しいことはありませんが、スッと来て、スッと消えていってしまった作品に少し「思い」が残ってしまったのは事実です。

6月から7月のまさに湿った、霊的な 季節の 作品との出会いとお別れでした。

中野弘彦の作品は以前よりお安くなっているように思います。

より沢山のお客様にご鑑賞いただけますよう、次回の仕入れのチャンスをじっくりと待ちたいと思っています。

※ 中野弘彦 10号 「静閑の時」(ほおづき) お客様に納品させていただきました。

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京都

2010年06月21日 | 日記・エッセイ・コラム

京都に行って参りました。仕事もありましたので沢山は回れませんでしたが、大原の三千院やその周辺のお寺、銀閣寺、建仁寺など主に京都の東側を歩いて参りました。

美術館では何必館の良寛遺墨展、細見美術館の中国の小さなやきもの-美は掌中に在り展(先日瀬戸陶磁器資料館で開催された内容と同じ) 、橋本関雪記念館(白沙村荘)を見学しました。美術館についてはまた折に触れ書かせていただこうと思いますが・・・

関雪の白沙村荘のお庭の大きさや灯篭の数(かなり古いものもありました)にはびっくりいたしました。関雪はやはりスケールの大きい人です。

ときどき無性に京都に行きたいと思う時があります。

そう思う時の“京都”とはいったいどんな町なのだろう?

今回はそれを意識して久しぶりの京都を歩いてみました。

美味しいお料理屋さん。とろける甘味屋さん。楽しい雑貨屋さん。

静かな街並み。かわいらしい舞妓さん。美しいお庭。お寺。仏像。。

京都にはすべてがそろっています。

美術館の展覧会に行って佳い作品に出会い 売店で色とりどりの絵ハガキを買い

テラスのあるレストランで美味しいお料理とデザートを楽しむ・・そんな休日のフルコースのような過ごし方が京都のいたるところで味わえます。

私もそれを求めて京都に行きたくなるのだろうと思っていました。

でも少し違っていたようです。

Img_1247_5

写真は三千院の往生極楽院の前のお庭です。左後ろに見える屋根が極楽院、この中に国宝阿弥陀三尊像が納まり、

この奥にまだ時期がはやく見ることができませんでしたが紫陽花花苑が広がっています。

写真の手前にはいくつかのわらべ地蔵がいますね。

Img_1245

へっ?なんでこんなところに??

とはじめは少し不気味に感じましたが

じっとみているとこちらも ニコッと笑ってしまうようなかわいい地蔵たちです。

この 『思わず微笑んでしまうような場所』

『ほっ~と一息つける場所』が

どんなに観光客のあふれた名所にも必ず

ひと空間あるのが京都ではないか?と思います。

『そうだ!京都へ行こう!』

少し調べてみますと、このキャッチフレーズで有名なJR東海のポスターにもこの三千院のわらべ地蔵は使われたそうです。

宗教の政治的介入を避けるために天皇や皇族たちが住み着いた都が京都だから

宗教や修行のためのお寺というより誰かを祀るためのお寺、公家たちの住居や別荘としての建物が多いと佐橋が話してくれましたが

そうした個人的な生活のなかの美意識は確かに京都のなかに沢山見受けられて、それに触れるとき私たちは心を揺さぶられるのではないか?と感じました。

    

        Img_1275_6              

←(銀閣寺観音殿の閣上 鳳凰)

張り詰めた緊張のなかの美しさと安心のなかの美しさ。

日々の暮らしのなかにそれを織り込んでいく工夫を京都では沢山発見できます。

また行きたいなぁ~

京都は私がいつもそう思える場所です。

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おたより

2010年06月01日 | 日記・エッセイ・コラム

Ehagaki1_5 私には今大切なペンパルが二人います。

お一人は当店のお客様で絵画のコレクターさんでいらっしゃいます。

とても魅力的な文章を書かれ 展覧会や旅行に出かけれた時の様子や感想を一枚の絵葉書につづってくださいます。

画廊の仕事をしていて疲れてしまったとき・・

私達夫婦はいつもこのお客様の楽しいおたよりと

絵葉書の美しい作品に癒されています。

5月にはこの写真のような絵葉書をお送りくださいました。

連休中にお出かけになった鎌倉・横浜の美術館で求められた絵葉書や

季節の花が描かれた作品たちです。

絵葉書といえどもやはり名品ぞろい。その美しさにうっとりします。

もう一人のペンパルは大学時代の友達です。

神奈川と名古屋に離れ 何年かに一度連絡を取り合う位のお付き合いでしたが、子供が大きくなってきたこともあり最近では月に一、二度、お便りを出し合うようになりました。

彼女は今普通の主婦ですが,

もともとの美術好き、現在でも私より多く美術館巡りをしているのではないしょうか?

最近はご自分が出かけられた展覧会のチラシや地図、お土産の絵葉書、美術館で食べたお菓子の写真など・・・ありとあらゆる情報を私に提供してくれます。

Ehagaki2_3 そしてこの情報が画廊のお客様とのお話に大変役立ってくれています。

彼女自身は余りその才能にピンときていないようですが

私は彼女の作りだす作品も大好きです。

絵画やデッサン、簡単な工作。。

なんでもいいから送ってほしいとお願いすると今回は

おうちでお気に入りの器のデッサンを送ってくれました。

どっぷりと、色彩感覚よく、またどこかユーモラスです。

5月の連休にはどこへもいけず少ししょげていましたが、日々届く美しい絵葉書や

封筒にとても癒されました。

やはりお便りにはお便りのやさしさと温かさがたっぷりとあふれています。

ほかにも妹や甥姪などから楽しいお便りも届きます。

ポストに手書きのお便りを見つけた時、自分が今日もここにいる、支えらてもらっている・・

そんな気持ちを強く抱きます。

この『安心』も心が美しいものを感じるときの大切な要素だと思えるのですが如何でしょうか?             

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