つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

富岡鉄斎

2024年11月25日 | おススメの展覧会、美術館訪問
結局いまの私に出来ることは何かな?と考えると、やはり沢山の作品に触れて、画集を開いて学ぶことしかないように思えています。

一昨日の土曜には、同じ愛知県内の碧南市藤井達吉現代美術館さんに伺って富岡鉄斎展を拝見しました。

こちらも昨日までで終わってしまった展覧会です。ごめんなさい。
若い頃から日本画の最高峰は鉄斎!そう教えて頂いていましたし、ずっとその認識でこの仕事をしてきました。

けれど、展覧会に出かけても、画集を何度見ても、正直「良い!」とは今まで余り思えませんでした。

鉄斎は生前自分は絵描き👨‍🎨つまり画家でなく、儒学者だと言い続けていました。

確かに画家といっても文人画家。
絵に添えられる讃も難しくて読めないし、歴史や故事についての作品は知識がなければわからない、、そう自分の中で決めつけて作品を観ていたこともその原因になっていたと思います。


歳を重ねても、そうした知識が増えているわけではないので、今回もきっと同じような印象、感想に終わるかも知れないと思ってはいましたが、何というのでしょうか?肝試し?腕だめし💪?

兎に角行ってみようと思ったのです。







画像では何もお伝え出来ないのが残念ですが、会場に入り、展示の一点目を見た時から感動が大きくて、涙が溢れ出しました。

どの作品も本当に素晴らしいと思えました。

鉄斎ってこんな画家だったのかと驚きました。

勿論絵の内容も讃も昔と同じようによくわかりません。

けれど、軸装の作品の良さというか、お軸自体の存在の意味も深く納得でき、最初から最後まで本当に圧倒されっぱなしでした。


 世に「最後の文人画家」と称えられる富岡鉄斎(1836-1924)。幕末、京都の商家に生まれた彼は、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に、儒学・陽明学、国学・神道、仏教等の諸学を広く学びながら同時に、南宗画、やまと絵等をはじめ多様な流派の絵画も独学し、深い学識に裏付けられた豊かな画業を展開しました。良い絵を描くためには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要であるという先人の教えを徹底して守ろうとした彼は、何を描くにもまずは対象の研究に努め、北海道から鹿児島まで全国を旅して各地の勝景を探りました。そうして胸中に思い描かれた理想の山水を表出し、人間の理想を説いた鉄斎の絵画は、画壇の巨匠たちから敬われ、京・大阪の町の人々に広く親しまれただけではなく、むしろ新世代の青年画家たちからもその表現の自由闊達で大胆な新しさで注目され、生前から今日まで国内外で高く評価されてきました。
 幕末に人格を形成して明治初期には神官として古跡の調査と復興に尽力し、やがて官を辞して市井の画家として生き、1924(大正13)年の大晦日に数え年89で亡くなった鉄斎は、2024(令和6)年末で没後100年を迎えることになります。このたびの展覧会では、この記念のときに向け、彼の画業と生涯をあらためて回顧します。名作として繰り返し取り上げられてきた作品はもちろんのこと、名作として知られながらも名作展では目にする機会の乏しかった作品や、近年になって再発見され、あるいは新たに見出された作品などもご覧いただきます。また、京都御所の近所の、室町通一条下ルに邸宅を構えていた彼の書斎(画室)を彩っていた文房具や筆録(旅行記や研究用メモ)等も取り上げ、都市に生きた彼の日常も、垣間見ていただこうと考えています。
 文人画というと、何か難しい世界のように思われがちですが、鉄斎の生きた時代にはむしろ縁起物として都市の商人たちの間で親しまれていたともいわれます。京都では27年振りの開催となる展覧会が、鉄斎に親しんでいただく機会ともなれば幸いです。



上の文章は今年春に京都国立近代美術館さんで開かれた富岡鉄斎展の際の紹介文です。

こちらを読ませていただいて、今回私が鉄斎の作品に深く感動できた理由がわかったように思えました。



初め、鉄斎にこんなに感動できたのは、私が佐橋とお別れして、色々な思いや考えを巡らせ苦労をしたから、つまり自分が成長したからだと感じてしまっていたのですが、決してそうではないと気づくことができたのです。



「万巻の書を読み、万里の路を行く」


「先人の教えを徹底して守ろうとした彼は、何を描くにもまずは対象の研究に努め、北海道から鹿児島まで全国を旅して各地の勝景を探りました。そうして胸中に思い描かれた理想の山水を表出し、人間の理想を説いた鉄斎の絵画は、画壇の巨匠たちから敬われ、京・大阪の町の人々に広く親しまれただけではなく、むしろ新世代の青年画家たちからもその表現の自由闊達で大胆な新しさで注目され、生前から今日まで国内外で高く評価されてきました」


まさに松尾芭蕉につながる言葉。

まさに山口薫が憧れた画家の姿。

そう気づきました。






重いのにこんな本まで美術館さんで買ってしまいました。

自宅学習に使おうと思います。


当店の山口薫展もとりあえず今週いっぱいになりました。

山口薫展は皆様だけでなく私にとっても大切な展覧会となりました。

それを富岡鉄斎が認めてくださった。。そんな気がしています。

薫の作品を日々眺められたこそ、鉄斎作品に感動することができたと思うのです。


作品に感動する。その画家を認めるということは、その画家に自分を認めてもらうという事でもあると思っています。

それこそが、絵を見る、絵を持つ醍醐味ではないでしょうか。

できるのなら、もっと山口薫に認められ、富岡鉄斎に認められる人になりたいと、いま、そんな憧れをいただいています。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伺った展覧会

2024年11月24日 | おススメの展覧会、美術館訪問
ご報告が遅くなってしまいました。


しかも期日が今日で終わってしまうという〜💦

先週の日曜日に三重県のパラミタミュージアムさんに伺って参りました。

途中近鉄特急の網棚に忘れ物をするなど😭予想通りのドタバタ1人旅でしたが、鈴鹿のお山も見えて、なんとものんびり過ごせたので私には最高の休養になりました。




肝心の展覧会は、兎に角沢山の日本画にびっくり!自分の知っている京都の日本画家が如何に少ないか?また京都の町、地理を如何に把握していないかか?の問題が如実にわかりがっかりしました。






仕方なくざぁーと作品を拝見していて、それでも「いい絵だなぁ」と作品に近づくと、小野竹喬だったり➁、堂本印象➃だったり、
なるほどなぁと思うことが多くあり、勉強になりました。


せめてと思い、パラミタミュージアムさんと三重県立美術館さんの展覧会のチラシを頂いてまいりましたのでご紹介致します。








ご参考までにご覧くださいませ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐久間友香さん

2024年11月24日 | おススメの展覧会、美術館訪問
日本画家の佐久間さんの展覧会にうかがって参りました。

彼女が愛知県立旭丘高校に通っていらっしゃる時から作品を拝見しています。その後愛知芸大に進まれ、現在35歳。

今日はこの方がすっかり大人の女性になられ、ご自分の作品への愛着が増していらっしゃた印象を受けました。

制作にはとても大切なことだと思います。

絹本に描くことに魅力を感じている。美人画、清方などに興味を深めている。

と、ご本人からお聞きしてとても嬉しくなりました。

画家として作品を描きつづけるのは現代特に難しいことだと感じています。
兎に角、描きつづけていただきたいと今の私からはそれだけしかお伝えでできませんでしたが、彼女のこれからに期待したいと思います。

ご紹介が遅くなりましたが、26日来週火曜日まで名古屋栄三越七階美術サロンさんで展覧会が開催されています
。最終日4時まで。

よろしければご覧ください。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

この地方の展覧会

2024年11月16日 | おススメの展覧会、美術館訪問
この一年半は、私自身が美術館さんにほとんどお邪魔しておりませんでしたので、ブログにも展覧会のご案内をさせていただいておりませんでした。

コロナの心配も薄まり、これほど外国の方が日本にいらっしゃるようになって、少し日本的な美術品の展覧会も多くなってきたように思いますので、この年末から年始のこの地方の美術館さんの展覧会の広告をご覧にいれようと思います。











私個人としては、名古屋市の民藝の展覧会、碧南の鉄斎展、三重パラミタミュージアムさんの京都日本画展、岐阜美術館さんのルドン展などに行きたいと思っていますが、名古屋市美は兎も角、果たして1人でちゃんと行けるかな?と少し不安になったりしています。何年も住んでいるのに、名古屋駅の地下で迷子になってしまうことも多々ありますので💦


それでも、このところの自分のお勉強不足と脚力の衰えには目を覆いたくなることばかりですので🫣、行動を起こさないと!と思っています。5000円ほどのタクシー代を持って、歩く癖をつければ方向音痴も解消しやすくなりますよ🚶‍♀️と大変健脚でいらっしゃるお客様が教えてくださいましたので、その言葉を信じて歩かなければ!と思っています。


また、つい最近、日本画家の田淵俊夫先生が、お手紙をつけて名古屋松坂屋さんの院展の招待券を沢山お送りくださいました。

お近くでお出掛け予定の方がいらっしゃいましたら、こちらもどうぞご利用ください。


明日、明後日お休みを頂戴いたします。
どちらかで早速展覧会に出かけられたら上出来ですが〜どうかしら?

早くも年末の慌ただしさが予見される頃となりました。
皆様も休日を有意義にお過ごしくださいませ。


山口薫展へのお出かけもどうぞお忘れなくいらしてください。

最高5回?2回は当たり前!何度も皆様に足を運んで頂いている展覧会です。








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

田中一村展

2024年11月07日 | おススメの展覧会、美術館訪問
投票権があった先日の日本の衆院選挙の時よりも、米国の大統領選挙をドキドキしながら見守るという。。

結局、現実ってそういうものだよなぁ。来るところまで来ないとわからないのだよなぁと思いながら、昨日2日ぶりに山口薫作品の並ぶ佐橋美術店に帰って参りました。

とことん優しい。 けれど理が通っている。(筋という言葉は少し違う気がするので理を使いました)

あらためて惚れ惚れと山口薫の作品を眺めています。



先日の上京の際には、東京都美術館さんで開催中の田中一村展にも寄らせていただきました。

予定が確実でなくネットでチケットを買っていませんでしたので、チケット売り場が混雑していれば今回の鑑賞は諦めようと思っていましたが、売り場は10分ほど並べばなんとかなるかな?と思えたので、躊躇なく入館いたしました。


ところが、いざ会場に足を運ぶと「凄い人混み🥵」

入場料2000円を捨てるつもりで見なくてはいけないぞと覚悟を決めました。

田中一村についてはきっとみなさまの方がお詳しいので、こちらに記させていただく事は致しませんが、

芸大を2か月で退学せざる終えない境遇。そして、その芸大を退学して間も無くの頃の作品からもう既に田中一村は画家として出来上がっていたのではないかしら?とその作品たちを「遠目」に見ながら思えました。

大人気の奄美の風景を描いた晩年の作品は本当に綺麗で、一村が他界してからのち、その評価が高くなったこと、また最近のブームの理由に納得いたしました。

穿った見方かもしれませんが、

田中一村は生前その作品に注目が集まらず、売れなかったが故に、絵を描くという大好きなことが続けられたと言えるように思います。

そして、それとは逆に、山口薫は作品が売れすぎて、絵を描くという密かな幸せさえも奪われてしまうという不安を常に抱き続けたのだと思います。

同じ価格であったら、田中一村と山口薫の作品のどちらを買うだろうか?と考えると、やはり私は山口薫だろうなぁと思います。


山口薫の文章の中に「画品」という言葉で出てきます。


例えば


私が何を考え何のためにに絵を描くのかと
今その疑問にぶつかっている

自分独りの時間

品のある絵をー画格

品のある絵を考えてみたけれども
夢のようでわからなかった

ある心理からの脱出

愛を同等に分けてやることが出来ない
愛しい宿命
祈らざるを得ず


作品に単純な画格を求めなかったところに山口薫の素晴らしさがあったのではないでしょうか。簡単に言えば、薫は庶民の中に埋もれようとしていたようにさえ感じられます。

田中一村を競って鑑賞する大勢の皆さまがいらしゃること、私もその一員であるという現実と、山口薫作品をお持ちになってくださり日々その作品と共に暮らしてくださるお客様がいてくださる現実を、これこそ現代の絵画鑑賞の現実だと確かに思い、考え、今日から日々を過ごしたいと思っています。



展覧会概要 ↓























コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする