つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

土牛の素描集より

2022年11月23日 | 奥村土牛




クリスマスには少し早いかと思いましたが、昨日お花屋さんが届けてくださったお花をツリーに見立てて🌲ショーウィンドウに飾らせていただきました。今年も残り1ヶ月と少しになりました。

⚽️W杯は楽しみだけれど、それが終わるとすぐに今年も終わってしまいますね。

来年は卯年、素描集の土牛のウサギがあまりにも可愛らしかったのでご紹介致しました。












土牛の人間性、その心の高さが素描にもよく表れていると思います。

土牛90歳の言葉🐂
私も90歳になりまして余命僅かとなりましたが、たってみると短いようで考えるとやっぱり永く、喜びも苦しみも有りましたがやっぱり苦しい一生で有りました。しかるに、平櫛先生のお言葉では有りませんが、男ざかりは先ず九十のつもりでがんばります。

土牛95歳の言葉🐂
描きたいものがあれば描くというような描き方で、九十の齢を出てやっと自分の好きなものを好きなように描くという心境になれたところでございます。

まずいものはまずいで、気になるのですが、まずいままで一生を終えるのも良いのではないかなどと思ったりもします。


土牛98歳の言葉🐂

素描などを始めますと、いつも夢中になってしまいます。私は描こうとするものをじっと凝視めることが必要ですので、どうしても時間がかかってしまいます。素描は自分だけのもので、他人に見ていただくものではないと思っていますが、キチンと描いておきたいのです。私の場合、墨線でキチッと捉えておきますと、彩色するよりも、心に残るものが強いように感じております。

〜〜


「絵のことは1時間でも忘れては駄目だ」という師小林古径の言葉を信じて、ひたすら画業に打ち込んだ奥村土牛は堂々と未完成のまま101年の人生を終えました。

「絵を見るのが好き💕」どうせそんな病気に罹っているのなら、休む事なくせっせと絵を鑑賞し、眼を鍛え、少しでも心の高いところを目指し生き、未完成のまま、その眼を静かに閉じて人生を終えたい。

寅年、想像以上に苦しかった還暦の一年を終えるにあたり、私は今明るくそう思っています。土牛には学ばせていただくことばかりです。





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絵葉書

2021年07月01日 | 奥村土牛
今日、お客様にお便りを差し上げようと今の季節に合いそうな葉書を探していると、この絵葉書が出てきました。

御舟??

と思い、裏の記載を見ると奥村土牛!

あぁ、こんな作品を描いた時期もあったんだなぁ〜と山種美術館さんの図録を開きました。




「雨趣 うしゅ」 1928年 昭和3年 再興第15回院展出品作

土牛、39歳の作品です。

図録の解説には、以下のように記されています。

大正15年、土牛は下高井戸から麻布・谷町(現在の六本木)に転居する。この年の夏は雨が続き、遠方への取材が難しかったため、主に近所を取材している。本図も坂が多く緑も豊かな当時の赤坂を、丘の上からの俯瞰的視点で眺め、淡い濃淡のついた胡粉で雨を一本一本描いたもの。
1926年、土牛は小林古径の紹介で尊敬する速水御舟の勉強会に参加し始める。本作品は、淡い色彩と繊細な線描による写実風景が特徴で、御舟の作品への意識が感じられる。発表当時は「何も雨を一本一本描く必要はないだろう」と評された。






この図録の解説の一文一文が、いかにも奥村土牛という画家の個性の全てを語っているように感じられます。

30代後半になって、御舟の勉強会に参加し、その影響を受けて写実に徹しようとした土牛。

「徹する」あまり、降る雨を一本一本描いた土牛。

「何も雨を一本一本描かなくても」
「何もそこまで〜しなくても」人は人に、案外無頓着にこの言葉を使ってしまうものだろうとも思えます。

その描かれた沢山の雨の線には、ひとつも嫌味なところなどない事に驚き、かえってこの風景画に土牛の作品らしい趣を湛えている事に気付けばきっと、40年後、50年後のこの画家の達成を予感できただろうと思います。




御舟の勉強会に参加した時、土牛は御舟の5年も年長でありました。

土牛は101年を生きてなお、御舟の画境に近づくことはできなかったのかもしれません。

けれど、八十代に「芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである。」と言い切った土牛には、夭折の御舟が決して見ることのできなかった「本当の自分」の姿がよく見えたのではないでしょうか?

雨を一本一本描く姿勢。描いてみる強さ。




土牛のその歩みは、残された作品たちの中で今も生き生きと前進を続けているように感じられます。

「静かに、少しづつ、決して止まることなく淡々と」

忘れがちなその美しさを私たちは今こそ思い出さなくてはいけないように思います。











コメント (1)
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奥村土牛 書 日輪

2017年05月31日 | 奥村土牛

今年はじめての向日葵をお花屋さんがお持ちくださったので、

奥村土牛の書 「日輪」と合わせショーウィンドウに飾らせて頂きました。

真夏のような日差しの続く毎日です。

どうぞ、みなさま、お気をつけてお過ごしくださいませ。


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