お客様からお便りをいただいたので、お返事を書きました。
多分少し以前に、ご自分で描かれたカラス瓜のお葉書で私の誕生日にメッセージをくださいました。
「夏美さま
62歳のお誕生日おめでとうございます。恙無くお過ごしですか」
そう裏にお書きくださいました。
書はもともとお上手ですが、眼を悪くされて、かえってそれが余白を埋める優しさとなり、今回もお気持ちが真っ直ぐに伝わる文字をお書きくださいました。
私は堀文子さんの仙翁を描いた絵葉書を選びました。以前ご来店の際に古径の岩菲に感動してくだったので、似た花を選びました。
「お便りをありがとうございました。おかげさまで無事に62歳になりました。恙無く過ごしているかは余り自信がありませんが、体重が少し増えました。独りに諦めがついてきたのだと思います。送っていただいたからす瓜のようにこれからは少し自分に〝色〟を添えていきたいと願っています。またお便りさせていただきますね。」
とお返事を書きました。何とか無事には過ごしておりますが、「恙なく」という言葉の品に達した生活はまだまだぁ~と思えました。少しでも謙虚に「恙なく」生きていけるようにしたいなぁとしみじみ感じました。
烏瓜はウリ科の蔓性多年草。雌雄異株で、巻きひげを伸ばして高くよじ登る。茎は細く、葉は掌状に裂けている。夏の夕方、5裂した白い筒状の花を開く、花びらの縁や先が繊毛のように細く伸び、レースの飾りにように見える。花は翌朝しぼむ。
俳句歳時記には烏瓜の花についてそう記されていました。
蕾のどこにこれだけの花や糸を畳んで「その時」を待っているのでしょう?そして、一晩中をかけて花を展開して、展開し終わればすぐにしぼんでしまう。秋に真っ赤な美しい実を付けることを知ってか知らずか?どうしてそう坦々と生きられるのでしょう。
花言葉は、「よき便り」「誠実」「男嫌い」
お、おとこぎらい?
「よき便り」は実のなかの種の形状が結び文ににているところから、
「男嫌い」はこの白い花が日没後にひっそり咲き、日の出前にはしぼんでしまうことに由来するそうです。
一枚のお葉書に綺麗に畳んでしまってくださっているお相手の真心の襞を、余すことなく開いて感じ、感謝の言葉をお伝えする。それがお便りを拝受する。お返事を差し上げるということかなと思っています。
それは、一枚の絵にどれだけ画家の心の襞を感じとれるか?にも通じることだと思います。
俳句もまた魅力的な詩だと思えます。
最後に歳時記に載っていた俳句をご紹介いたしますね。
月の精さまよへり花からすうり 佐藤国夫
月に糸伸ばしてからすうりの花 青木まき子
宵寝してふはふは烏瓜の花 佐々木咲