つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

土田麦僊

2023年12月22日 | 土田麦僊
明日とお伝えしておきながら記事の更新が大変遅くなってしまいました。

今週は佐橋の残した宿題のうち、私にとって二番目くらいに気の重かったことについて、一応の解決を得ることができましたので大変ホッとし、そのあとはずっとボ~っと過ごしてしまっていました。

店主であり夫である佐橋に守られながら、ずっと引きこもり気味に生きてきたのに、それがいきなり社会の矢面に立たせられると「即断」ができず、ついズルズルと問題を引きずってしまうということが多いものです。特に諸問題の対象にお相手がいる場合、こちらのズルズルを見透かされてしまい余計にズルズルに持ち込まれてしまうことも多くあります。

こうして社会的には反省と自己嫌悪の連続の一年でしたが、まぁ、それでも何とか私的な人生においては少しづつ前に進んでいるように思っているのでそれですべて良しとしようと思います。


さて、現在の店内の展示作品のご紹介も残りもわずかとなりました。また気ままに書かせていただこうと思います。




土田麦僊は、まず国画創作協会の設立などによる経歴から、ついその作品への目線も一方向からの頑ななものになり、作品自体をきちんと見るということを忘れてしまいがちになりますが、舞子であっても風景画であっても麦僊の作品には大変スケールの大きな「知性」を感じることができるように思います。





今当店の店内は日本画ばかりを飾らせていただいていますが、その中にあって、しかも素描なのに麦僊の作品は独りきちんと起立しています。

その知性こそ国画創作協会の意味じゃないのか?と言われてしまうとそうなのでしょうけれど、う・・・ん、その中にあっても麦僊は覚悟がちがうという印象が強いのですよね。

それは多分、麦僊が近代日本画家の誰よりも「日本画」という問いに「立派に」応えつづけようとしたからではないか?と思っています。






この「仏国、アルル風景」は、制作年の詳細はわかりませんが、麦僊の渡欧の際のスケッチ作品で、下の図録のなかのほかの作品と同じように西洋画の構図を大変冷静に受け止めている画家の姿が感じられ、そこには麦僊の晩年作品につづく日本画の色気⁉というような要素も感じられます。




色気というのは、日本画という伝統美術の中の色彩に「幻想」を与えていくと近代的な仕事を麦僊が引き受けたという意味です。

その手段として静かな画面構成、緻密な造形という西洋的要素を取り入れ、年月をかけて消化した結果、麦僊は常に日本画家でありつづけた、しかも京都画壇という深く、強い伝統を背負いながら~ということだと思います。




麦僊の晩年の仕事に、その決着は随分つけられたように思います。             


アルル風景には、学生時代からまた渡欧を共にした小野竹喬のシールが付いています。


麦僊の本画をお求めにならなくても、学びや経験によってこちらの想像や愛情を広げれば、こうした素描作品にも麦僊の人間としての格、画家としての挑戦、美をみつけることはそう難しいことではないと思います。それがまた美術品に触れるというご自身の「旅」に豊かな味わいを加えてくれるようにも思います。


隆能源氏(源氏物語絵巻の筆者と推定される藤原たかよしのこと)、紫式部日記絵巻を非常に愛する。しかし、クールベを想い、ドラクロワを想うとき、自分は自分の祖先を呪いたくなる」

ヨーロッパに出発する直前、大正六年の土田麦僊自身の言葉です。

この問題意識を十分に咀嚼しながら麦僊は西洋を旅したのですね。

結局誰よりも伝統を背負ったという意味で「運命」という言葉の似合う画家、それが土田麦僊なのかもしれません。

その点においてやはり麦僊という画家は格が違う、そう思います。




土田麦僊 紙・水彩 アルル風景 竹喬シール 22.8×27.3㎝ 
242,000 150,000

※前回ご紹介いたしました展示作品の詳細と価格は付記として、前回の記事に
掲載させていただきました。ご参考までにごらんください。

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Y氏のコレクション 2

2023年12月15日 | 絵画鑑賞
先日記事をUPさせていただいてから大変ご好評をいただいております「Y氏のコレクション」、パート2をご紹介させていただきます。一応の完結編です。




森本草介 プルーン
お納めしたのは、もう随分以前のことになりました。良い作品は、画商の手元にいる時間は短く、コレクター様からコレクター様に、市場という表に顔を見せずそっと収まる場所を選んでいくものです。






先日の小磯作品も森本もこの棟方志功も、Y様には小さいながら力のある作品をお選びいただく事も多くありました。こちらは皆さまの記憶にも新しい作品だと思います。

佐橋と私の勤めておりました画廊は、棟方志功作品を数多く扱いました。「扱わせていただく時は最高の棟方志功を!」
もはや晩年という言葉を用いなければならないのは辛い事ですが、晩年の佐橋の扱った最後の棟方に相応しい作品だと思っています。





こちらは昨年の秋、杉山寧展でお求めいただいた鯉です。一応素描扱いになります。
杉山寧作品を多くお選びくださるお客様。勿論、同じ鯉の本画もお持ちくださっています。



茶色の色画用紙にオレンジ色の鯉 幽玄の世界です 母は"尾のしなり方から水の存在を感じる"と 別に波が描かれているわけではないのですが 水を感じ動きが見られるのです 杉山の実力恐ろしですね 杉山作品はどれもはずれがない
はずれは世に出さない?? どの作品を購入しても間違いがない むつかしい人物だったようですが 絵を見ているとその 完成度にスキがなく安心してみていられますね

私のお願いに応じ、コメントもお寄せくださいました。
杉山寧作品に「隙がない、安心して見ていられる」とお感じになる、この感覚こそ、このお客様の個性だと私はいつも思っています。今は90代になられるお母様とお2人のお暮らしです。お母様は日本画を習っていらしたので、やはりその眼力もY様同様、時にはそれ以上だと感じさせていただく事が多くあります。







須田国太郎の薔薇 井上靖が別冊太陽の"井上靖の世界"に "須田さんの作品には 東洋的静けさがある"とあり 佐橋さんに須田国太郎作品ありませんか?と相談しました アッと言う間に作品が東京から出てきたようです 懐かしいですね 暗いからイヤと言う人もいますが なぜか母は"重々しくていい"と見つめています 暗い中の光 左の引っ掻きは 光をあらわしているのかなと 思います いつまでも飽きずに 眺めていられる作品ですね そしていつまでも静けさがわからないです

私より少しお兄さんでいらっしゃいますが、「いつまでも須田の東洋的静けさがわからない」とおっしゃる所が、若々しく、真っ直ぐで素敵だなぁと思います。
確かに須田はわからないところの多い画家だと私も思います。
もしかしたら、東洋的静けさは薔薇より風景画などに強く感じられるものかもしれませんね。

ここ2年間 暗い絵を見る力がなかったです 先日の須田展でやっとこの絵を
出してみる気分になりました

「暗い絵」というお言葉をよくお使いになられるのも、このお客様の個性だと感じさせていただきます。今回の須田国太郎展のご招待券をみなさまにお渡しできましたのは、この展覧会にご所蔵品をご出品になられた別のお客様のお心遣いによるものでした。

コレクター様同士が、それぞれに繋がり、精神的に支え合っていただく。

画廊の仕事の新しい、美しい形。そしてとても難しい形。私は今まだそれを形にできないこの店の、ここにいます。

この記事にご協力いただきましたY様にお礼のメールを差し上げると


ありがとうございます 作品によっては、私が拝見している横で佐橋さんが
それは先生のお好みではないですね?と仰り 図星でビックリした事がよくありました 20年も30年もご一緒させていただいていると 私の感覚を良くご存知なんだと、、



Y氏のコレクションにみなさまは何をお感じくださいましたでしょうか?
今回ご紹介させていただいた作品はほんの一部でまだまだ沢山の作品をご所蔵くださっていらっしゃいますが、この数点からでも、確かにこのY様の人としてのお姿をみなさまに想像していただけたのではないかと思っています。

コレクションはお客様お一人おひとりの人生の表現、物語です。

佐橋はその事を念頭に、だからこそ、自分と私の選ぶ作品を大切にさせていただいて参りました。

お客様のコレクションと私共のコレクションが交わる時、そこに仄かなぬくもりと希望が生まれます。

佐橋に長くご厚情を賜わりましたY様に心よりの感謝を申し上げ、また機会をみてそのコレクションをご披露いただこうと思っております。














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杉山寧

2023年12月13日 | 杉山寧
新しいホームページの編集作業にやっと慣れて参りましたので、今週は一生懸命更新をさせていただいています。

皆様よくご存知でいらっしゃるように、ホームページとこのブログつれづれはリンクをさせていただいておりますので、途中ブログの記事のことも気になり、こちらも編集し直したり、削除させていただいています。

私は夜あまり遅くまでは起きていられないので、夜中の心配はありませんが、問題は早起きで、明け方などにこの作業をさせていただきますと、何人かの方たちがこのブログの記事の公開に合わせ、お知らせの設定をしてくださっていらっしゃるようなので「ご迷惑ではないか?」と心配になります。
申し訳ありませんが、年内の間はこの作業を進めさせていただくつもりですのでご迷惑をおかけいたします場合はぜひ設定の変更をお願いいたします。

さて、どういうわけか?このブログに杉山寧作品の記事が残っていませんでした。


現在当店の杉山作品は、この素描作品一点のみになっておりますので、改めて記事を書くことも不要かとも思いましたが、やはり杉山の素描!そして熱帯魚というのは杉山だけの感性、そして高い技術力の見せどころでもありますので
今更ながら新しく記事を書かせていただくことにしました。

暗くてご覧になりにくいかもしれませんが、当店の本棚にございます富山県立美術館さんの図録「杉山寧 素描と本画」にもこの作品が掲載されています。




春が近づきましたら、またこの作品も展示させていただきますね。

本画ではなく、素描でありながら展覧会出品作という経歴も、作品自体の素晴らしさに増してなかなか魅力的なコレクション要素になると思っています。




杉山寧 紙・色鉛筆 「ディスカス」 32.5×49.8㎝1 昭和36年制作
1996年富山県美術館杉山寧展出品作
杉山寧素描集成No.241掲載  東京美術クラブ鑑定書  1,800,000

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大吉🌲発表

2023年12月11日 | 日記・エッセイ・コラム
おはようございます。
月曜日、また新しい1週間が始まりました。
来週、再来週、そしてその次の月曜日は元旦となりますね。
 

さて、週末に出させていただきましたクイズ?といいますか、神社ならぬ⛩️、
邪気たっぷりの💦画廊での「大おみくじ大会」の結果をお知らせ申し上げます。

🌲ツリーは大吉!
繊細な感性とパワー溢れる決断力をお持ちのあなた様は、きっと来年も素晴らしいお作品とご縁を結ばれることでしょう。
大正解、おめでとうございます㊗️

⭐️星は吉!
優しいお気持ちをお持ちのあなた様は、その分引き受けるご苦労も多くなるかと思いますが、きっとどなたかがあなた様のその美しさを認めてくださっている、その1人が間違いなく私だとお伝えしたいと思います。ご協力ありがとうございました😊


🍄キノコは普通😊
才能溢れるあなた様は時々大外れる直感にもめげず、ご自分のお力で運命を切り開かれていくお方。美男、美女に多いタイプじゃないかしら?と想像しています。ツリーやお星さまより、キノコが一番かわいいですよねぇ🥰


ということで、発表させていただきます。じゃーん!!!!






そうです!ツリーは1番のサンタさんの中に隠れていました。


クイズにご参加くださいましたみなさま、まことにありがとうございました。この一見くだらないクイズ記事に、私の迷いの何かをお感じいただきましたその感性に敬意を表し、心よりの感謝を申し上げます。

そして、大正解のU様!お見事でございました。

U様はコメント欄にこんな言葉をお残しくださいました。

“この徳岡神泉は何度見ても素晴らしいですね。さて、私は一番にできる勇気はありませんが、夏美さんには一番にいれていただきたいなと思っていたら”

コメント欄にこの文章を見つけたときは涙が出ました。
神泉の椿をトップ画像に選んだ私の気持ちをまず直感的におわかりくださっている。

そして、私は偶然ではなく確かな意思をもって1番のサンタさんの中にこの小さなツリーを隠しました。


“私には一番にできる勇気がありませんが”
“夏美さんには一番にいれていただきたいな”

このお言葉を読ませていただいたとき、11年ブログを書いてきてよかったなぁ~、佐橋とお別れしてからどんなに心細くても記事を書きづつけてきて本当によかったなぁと思えました。

そのU様の「U氏のコレクション!!」

この画像を過去の記事から探すのにかなり時間がかかりました😭

U様のコメントに対する私の感動の意味はこの作品たちが代弁してくれるように思います。








私たちは何のために美術品を所蔵するのでしょうか。

わたくしの答えはただひとつ、人の気持ちがわかる人になるためです。

人の気持ちがわかるということは、どんなもののなかにも美しさをみつけだす
感性と勇気を自分の中に養うということだと思うのです。

勇気。問題はこれです。

無邪気な勇気なら簡単にもてるかもしれませんが、知識を得て、考えぬいた末に勇気を持つことはなかなか難しいことだと思えます。近・現代人の苦悩のほとんどはここに由来しているようにも感じます。

そして、画商やコレクター様にとっての勇気とは、芸術のもつ「狂気」にどこまで迫れるか?ということではないかと思います。



さて、覚悟はきまりました。あとは私がツリーを引き当てるか?だけの問題です。ま、引き当てなくても大丈夫。私にはキノコの仲間とお星さまの友人とツリーのコレクターさまが味方についてくださいます。

みなさまと同じように、私も今週もがんばります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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ご心配をおかけしています

2023年12月06日 | 日記・エッセイ・コラム
毎年お年賀状の交換をさせていただいている親類やお友達に喪中ハガキをお届けしたからでしょうか?このブログにお立ち寄りくださいます方がここ数日増えました。

お電話やメールなどメッセージもいただいています。
ご心配をおかけし申し訳ありません。そしてありがとうございます。

喪中ハガキを投函させていただく時もそうでしたが、家族を喪った時の越年もなかなか辛いものだなぁと思っています。どうしても何度も佐橋とのお別れのことを思い出さなくてはいけなくなります。

ここを過ぎれば〜いつもそう思ってきましたが、過ぎても過ぎても重いものを抱え込んでしまうということはありますね。

それでも、この半年、家族は勿論、店やブログにお通いくださいますお客様がた、またいつも近くにいてくださいます画商さんに支えていただき何とかここまで、、大袈裟ですが生きてこられたのは幸いなことだと思っています。

先日ご来店のお客様にお願いして、この神泉の作品をショーウィンドウからギャラリーの中に移動させていただきました。

お客様にお願いするなんて。。と思っていましたが、快くお引き受けいただいたので、とても嬉しく、お客様にお願いできた自分をその後少し誉めました。








いち早く、クリスマス飾りも出しました。

何度も何度も引き戻されながら、それでも少しづつ私は前に進んでいます。
来年の今頃の私はどうしているかしら?と思いながらです。





さて、ここで問題です。

横に並んだ6つのサンタさん🎅の中に一つだけ小さなツリーが隠されています。
ひとつだけツリー、あとはお星さまとどういうわけか?きのこが入っています。

さてツリーはどこに入っているでしょうか?
向かって右から1、2、3、4、5、6でお答えください。



すみません、今回は正解をされてもプレゼントはありません。
そうです!私がみなさまからコメントをお寄せいただきたいだけです。

ニックネームで結構ですので、ブログのご感想もお書きいただけますと助かります。
またお好きな画家さんなどもお教えください。

いつも「いいね!」など元気をくださいますマダムリーフさま、123スターさまもどうぞご参加ください。

YUMIKOさんもSAICHI君も、家族もどうぞ。

コメント、よろしくお願いいたします。

正解は来週11日月曜日、朝8時にお知らせいたします!






コメント (9)
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