2015年5月5日
『夏も近づく 八十八夜 ~ 野にも山にも 若葉が茂る あれに見えるは 茶摘みじゃないか~』
子どもの頃から、のんきにこの歌を歌う気には一度もなれなかった
様々な農作業をやってきた中で、茶摘みほど嫌なものはなかった
青年の頃になると、ゴールデンウィークという言葉ができ、世間では行楽に興じる家族のニュースが溢れたが、こっちは苦痛の中茶摘みに拘束されていた。
彼女が出来ると、その調整にも頭を痛め、合わない時には、茶摘みから逃げた
結婚して子どもが出来、家族を持つと、またまた調整に頭を痛めた。
旅行等で合わない時には、茶摘みから逃げた
いつも、ゴールデンウィークの最中の作業なのだ
僕にとっては幾度と無く自由を奪い、GWを逆恨みした、そんな因縁のある作業なのだ
しかし、子どもが成人してしまい、両親も90と84になれば、そうも逃げている訳にはいかない
さてさて、大きなお茶農家かと言えばそうではない。
昔ながらの屋敷周りの生け垣代わりの茶と、山の畑の土手に植えてある茶。
生葉で50~60kgの面積だ。
零細だから、それだけ手作業も多い。
祖母が生きていた頃は、『お釜さん』があって、釜煎り茶を自宅製造していたから、次々に揉む作業も大変だった
今年も、今日1日で完了すべく早起きして、朝8時には畑に立っていた
昔から茶摘みの基本は、この『一芯二葉摘み』
これが実に進捗が見えず、イライラの原因で嫌いになった理由だった
いつまで経っても籠にたまらず、緑の茶葉はどこを採ったのかも分からない
やる気が全く出ない苦しみ
今年違った事は、阿蘇火山の降灰のためにオフトークによる『製茶加工委託の際の茶葉洗浄の励行』が、家庭向けに広報が行われていたそうだ
それに従い、昨日の雨前から、水道ホースで茶園を洗う対処を親父はしていた
しかし、良く見ると昨日の雨後、今度は『黄砂』がうっすらと新たに付いているのが分かる
果たして、加工できるのかの心配が出てきた
屋敷周りと言っても、総延長50mくらいはあるので、当時の家族総出の子どもでも10mくらいは担当することになっていた
それに、屋敷周りの植栽は境ギリギリにされているので、道路や隣地にオーバーハングして枝は伸びている~3mはある足場のない空中茶葉をグラグラ石垣の上から摘んでいく
GWも終盤~今日もラジオからは、『高速道路~古賀インターは延長9kmの渋滞~』とか流れている。
『車の中でイライラしている人を、ここに並ばせ一斉に茶摘みさせれば、直ぐにでも終わるだろう~』とか、逃避的な妄想が、この年になっても始まる
高校生の頃に、この『ハサミ式茶葉収穫機』を親父が買ったので、だいぶ裁けるようにはなったが、それでも基本、『嫌い』は変わりなかった
刈り取った茶葉は、『テボ』に溜まると、『庭屋:ニワヤ』(土間:ドマ)に運び広げて、蒸れを防止する
昔は、籾を干す『ネコボク』に広げ、今はブルーシート
実家には、家内農作業、夜なべ、藁打ち等や田植え時の土足で食事が取れる食堂に臨時改装出来るための『庭屋』(土間:12畳位)が今も残っている
写真左の『上がり段』は食堂時の長椅子になり、釣り合う高さの飯台が持ち込まれていた。
さて、午前中の4時間で、屋敷周りをやっと摘み終えた
ゆっくり昼寝をしていたいが、『今日中に終わらせる』と、午後1時には山へ出発
今年6月では91になる親父が元気だからこそやっているが、出来なくなったら真っ先に放置する茶園だ
使いようのない細長い畑や土手の有効利用で茶を植えているが、足場がともかく悪い
茶摘みハサミの袋に溜まっていく茶は、だんだん重たくなるので、この『テボ』にこまめに入れる
それでも、半日も続けていると腕が直ぐに重たくなり、腰も痛くなる
テボは、もともと蚕を飼っていた時の桑の葉を入れていた『桑テボ』の活用
竹製である程度重たいが、既に60年くらい使っているモノで、プラスチック類より優れていると思う
午後3時やっと茶摘みを終えて帰宅
さて、これからが茶摘みハサミが生み出した余計な仕事~
選別作業です
お盆に一つかみの茶葉を乗せると、木質の茎や枯れ葉、深摘みした古い葉が混じっているので、延々と繰り返す~全部を手がけなければならない~自宅待機の母親が選別に頑張りに続き、3人で黙々と調整し、茶葉の山を減らしていく
固い土間に座っての作業のため、3人の口からは『ア痛タタ~ア痛タタ~』ばかり
我が家の茶は、栽培に熱が入らないのもあってか、全くの無農薬、無化学肥料の有機栽培のお茶
それでも、プール加工(他人のも一緒に加工ラインに入る)のため、『悪貨は良貨を駆逐する』ではないが、製品の出来を悪くする木質の茎や枯れ葉、深摘みした古い葉があれば、荷受けを断られる~手摘みの時には無かった作業だ
綺麗は茶葉は、コンバイン袋に次々に詰めていく~これも蒸れないように重ねない
選別3人で3時間~14袋~全部完了して軽トラックに積み込み、製茶加工場へ出発
毎年お世話になっている『佐藤製茶』に持ち込んだものの5台目の待ち~後ろにも次々に並んでいった
昨日の雨で、一斉に今日の茶摘みだからこの時間帯に集中していた
じっと待っていると『わりゃ~○△×~』とか、いつもと違う険悪なやりとりの雰囲気の荷受け場の様子
何事と様子を見に近づくと
『阿蘇火山灰の残留チェック』があっていた
この白い湯飲みに、黒い火山灰の沈殿が、ある程度あればアウト~
水洗いして出直しという
長らく待機してやっと順番が来たと思ったら、アウトの宣告を受ける農家
『そりゃ、文句も言いたくなる』
その人の湯飲みの底を見せて貰った
『ゴミと黄砂、火山灰の違いは』
『火山灰は黒く、ガラス質で違いはハッキリしてます』
『食品衛生法で、不純物・混入物・・・・火山灰もダメなんです』
との問答が聞かれた
近くにはいつもは無い、洗浄のタンクが二つ準備されていた
気の毒に思いながらも、その様子を撮影させてもらった
幾つもある袋をタンクに返し、ザブザブ洗っては、ザルで茶葉を取り上げ、また袋に戻す~(このおばちゃん、手まで怪我して可哀想~)
大量の人はボーっとなる作業だ・・・・果たして我が家の茶葉は合格するのか
濡れているので、含水量を風袋に加算しての茶葉重を計算される~余計な水洗いの手間だけでもたぶん得する事はない
やっと我が家の番が来、た
ドキドキの中、袋から茶葉が採り出されました
幸いにも、屋敷周りの茶がサンプリングされたのでしょうか~合格でした
心配された黄砂も火山灰も、事前の親父のホースを引っ張っての水洗いの努力により基準以下に洗われていたようです
それにしても、こんなに緊張した加工委託は初めてでした
一日も早く降灰が治まって貰いたいものです
今年の収量は、54.5kg~加工すれば製品茶で10%、5.4kgのお茶になります。
加工賃を取られて、100g幾らくらいのお茶になるのか
我が家の茶葉が、我が家の茶として返ってくる訳でもないし~
家族労賃や剪定等の手間を考えたら、絶対市販の茶を買った方が得と思います