この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

白夜行。

2006-03-13 00:19:11 | 読書
東野圭吾著、『白夜行』、読了。

本当はドラマが終わるまで原作に手を出すのは止めとこうと思ってたんだけど、最近ドラマの脳内視聴率が下降気味なので、とうとう我慢できずに読んじゃいました。
ゴメンよ、はるか(←呼び捨て)。

いやぁ、噂に違わずやはりスゴイです、『白夜行』。
完璧ではありません。(以下ネタバレ。)
例えば探偵である今枝があれだけ違和感を覚えていながら、自宅に戻ってすぐ便所に直行するというのは明らかに変です。
松浦の死体が大阪の唐沢邸に埋められているというのも不自然ですし、必然性がないと思います。

他にもいくつか矛盾点や疑問点はあります。
けれど、それらの瑕瑾が瑣末でしかないと思えるほど『白夜行』はスゴイ。
主人公は桐原亮司と西本雪帆の二人に違いないのに、その二人の内面描写を一切することなく、回りの人間からの視点からだけで彼らの行動や心理が語られるという小説の技法は前代未聞といっていいでしょう。
小説としての面白さだけであれば直木賞を受賞した『容疑者Xの献身』と『白夜行』、どちらが上ということはないと思います。
けれど、その小説技法という点に置いて『白夜行』は唯一無二なのですから、この作品が直木賞を受賞していないというのは不可解としかいいようがありません。
あらためて直木賞って存在意義がないよなぁと思わずにはいられませんでした。

本当ならもう少し感想を述べるべきなんでしょうけれど、ただただ圧倒されるばかりで具体的な感想は思いつきません。(以下ネタバレ。)
一つだけいえるのは、最後に生き残った雪穂は哀れだなぁってことです。
実家の庭から死体が見つかった彼女に警察の追及が及ばないはずはないですし、少なくとも死体が見つかった時点で彼女の商売人としての命は絶たれたといってよいでしょう。さらに夫である康晴とはすでに一成たちによって楔が打たれていますからね。
自ら死を選んだ亮司は、雪穂を守りたいという信念の元で死んだわけですけど(実際にはそれは叶えられない)、けれど雪穂はこれからの人生、何一つ希望のないまま、白夜ですらない闇夜を生きていかなければならないのですから、自業自得ではあっても哀れといわざるを得ません。


ドラマ版の『白夜行』が3/23の放映分で最終回を迎えます。
ドラマ版って原作では触れられなかった箇所を補完するような形で作られていて、それはそれでありかなとは思うんですけど、やっぱり上澄みだけを掬ったという感は否めないですよね。見事なまでにお金の掛かりそうなシーンはばっさりとカットされていますしね。
いっそのことアニメで作ったらどうだろうって思いました。というか、アニメ向きの素材じゃないですかね、『白夜行』って。
基本的に登場人物は皆容姿端麗ですし、内容も二人の人物の二十年にも及ぶ時の流れを追うものですし(ドラマ版は武田鉄也演じる笹垣を見ても時の流れが感じられない)、そういった点でもアニメにしたらいいんじゃないかと思いました。

最後にモキエルさんの『白夜行』総括レビューを紹介。こちら。
二人の人生が年表としてよくまとめられているので物語の流れを理解するのによいと思います。
コメント (8)
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