この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ファニーマネー。

2006-03-23 23:53:28 | 読書
ジェイムズ・スウェイン著、『ファニーマネー』、読了。

前作『カジノを罠にかけろ』が個人的に結構面白かったので(レビューはこちら)、続編である本作も手に取った次第です。
前作はカジノが舞台でありながらギャンブルシーンがほとんど出てこない、当然イカサマの手口の解説もない、ミステリーというよりむしろ一癖も二癖もある人物同士の丁々発止のやり取りが楽しめる、キャラクター小説でした。(なので一人も死人が出なかったし。確かそうだったですよね?)
当然続編である本作もこの路線を継承するものと思ったのですが、さにあらず、死人が出ること出ること。
冒頭主人公の四十年来の友人は爆殺されてからは、もう、登場人物の七割から八割ぐらいは殺されたり、自ら死を選んだり、事故死したりしちゃってます。
路線変更はそれにとどまらず、前作がカジノを舞台にしながらギャンブルシーンが無かったのに比べ、今回はイカサマの手口などがそれなりに詳しく解説されていて、へぇ、と感心しました。

けれど前作で感じた文章のリズム、つまり自分にとっては読みやすさですが、それは本作でも顕在で、おかげですらすらと読んでいくことが出来ました。
感心したのはこの小説では一つの章で主人公にヒントが提示され、それに従って主人公は行動し、またそこで新たなヒントが提示され、そしてまた主人公は、というように、いうなればロールプレイングゲーム方式とでも呼べるのでしょうか、それがきちんと最後の章まで一貫されていたことです。
ですから途中主人公の息子の視点で物語が進む箇所があって、それが個人的には残念でした。
三人称一視点を貫いて欲しかったです。

さて、本作も前作同様、読んで何かが残る、といったお話でもないので、他人には薦められませんが、もしかしたらジェイムズ・スウェインという作家は大化けするかもしれないなぁ、とも思いました。
まぁ思っただけで、(大化けするかどうかを)賭けの対象にしようという気にはなれませんけどね。破産するのは小説の中の登場人物だけで充分です。笑。
コメント (2)
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