この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

グラーグ57。

2009-09-17 22:06:01 | 読書
 トム・ロブ・スミス著、『グラーグ57』、読了。


 2009年版『このミステリーがすごい!』海外編で一位を獲得した『チャイルド44』の続編。

 改めて『チャイルド44』を評すると、この作品が傑作足りえたのは、純粋にミステリーとしての出来栄えというよりむしろ、社会主義国家を舞台にした、その設定の上手さにあるんじゃないかと思う。
 孤高の主人公が国家を相手にして、自らの汚名を雪ぐ、というプロットは『チャイルド44』とスティーブン・ハンターの『極大射程』に共通している。
 単純にエンターティメント小説として比べた場合、『極大射程』の方がはるかに完成度が高く、面白く読める。
 あれだけ荒ぶる男が主人公で、読む者の血を滾らせておきながら、クライマックスの裁判シーンの静けさといったら!見事としか言いようがない。
 残念ながら『チャイルド44』はそこまでストーリーテリングが上手いとはいえないと思う(後半かなり無理がある展開だった)。
 だが、ことインパクトに関していえば『チャイルド44』の方が一枚も二枚も上だ。
 あのプロローグに度肝を抜かれなかった読者はおそらくいないだろう。

 さて、『グラーグ57』である。
 『チャイルド44』と同じレオ・デミトフが主人公である。
 今回レオが被る受難は並みではない。これでもかこれでもかとまさに怒涛、あらゆる精神的肉体的苦痛が彼を襲う。
 その点に関していえば感心するぐらいだった。
 だが、傑作かというとそうはいえないと思った。
 面白くないってことはないし、後半ハンガリー動乱に雪崩れ込む展開はそれなりによく出来てるとも思うのだが、やはりインパクトに欠ける。
 どうしたって『チャイルド44』の持つインパクトには敵いっこない。
 前作が傑作であるが故の続編だが、前作が傑作であるが故にどうしたって評価が低くなってしまう。
 『チャイルド44』が『このミス!』一位を見事に当てた自分であるが(これ、本当。笑。)、本作は一位を取れないだろうな、と思う。
 とはいえ、本作に続く第三部でもレオ・デミトフには付き合うつもりであるが。
コメント
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