久しぶりのショートショートです。
ショートショートの掲載は4年ぶりになるのかな。
といっても4年ぶりに新作を書いた、というわけではありません。
物置きを片づけていて、その物置きに兄貴の私物がダンボール箱10箱分ぐらいあることは書きました(こちら)。
当然兄貴の私物しかないわけではないんですよ。
お袋の昔の趣味だった刺繍糸もあれば、自分の小学校の頃の文集などもありました。
他には高校の頃に書いたショートショートが掲載された文芸誌も…。
ネタもないことだし、今日はそのショートショートを転載します。
タイトルは『切り裂きジャックの正体!』です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これは19世紀末のロンドンのお話である。
男はスランプに陥っていた。
彼は元々医者であったのだが、ある日暇つぶしに自分の一番嫌いなタイプの人間が主人公の探偵小説を書き、出版社に送った。
その作品はあえなくボツになり、やがて彼の記憶からも消えていった。
数年後、どういった経緯によるのか、その作品が大衆向けの雑誌に掲載され、評判を呼んだ。
彼は意外なことの成り行きに内心驚いていたが、自身の経営する診療所の経営不振などを理由に医者をやめ、専業作家となった。
その後彼は数編の短編小説を書き、そのいずれもが高い評価を得た。
次々と舞い込んでくる原稿の依頼に彼は締め切りに追われた。
しかしこの主人公は本来、彼の最も嫌いなタイプの人間だったのだ。そうそう上手く書けるはずもない。
彼は次第にノイローゼとなっていった。
ようやく作品を書き上げ、彼は大きく息を吐いた。
窓の外を見やると、ロンドンは白い霧に包まれていた。
(久しぶりにやるか…。)
警察はしばらく北の方を重点的にパトロールすると言っていた。
(今日は西の方に行ってみよう…)
彼は警察の捜査方法についてかなり詳しく知っていた。小説が売れ始めてしばらくたった頃、彼は地元の警察署を訪れ、小説の参考にするから警察の捜査方法などについて教えて欲しいと頼んだ。
するとそこの警部補が聞くこと聞かないこと、ペラペラとしゃべってくれたのだ。
彼の小説に出てくる無能で役立たずな警部はこの男をモデルにしていた。
彼は黒いコートを羽織り、白い手袋をはめると、診察室から昔使っていたメスを持ってきた。
そして彼は霧のロンドンを歩き始めた。
標的となる女たちを探す。
自分の小説の主人公の次に嫌いな女たちを…。
彼はイーストエンドの公園に足を踏み入れた。
辺りを見回しても誰もいる気配はない。それも当然だった。殺されても商売をしようという女はいない。
だが彼は女たちがこの仕事をしなければ生きていけないことも知っていた。
必ずこの公園のどこかに獲物となる女はいるはずだった。
30分ほど深い霧の中をさまよい続け、彼は不意に目の前に派手なドレスを着た女がいることに気づいた。
懐からメスを取り出すと、彼は女の背後に音もなく忍び寄り…。
“切り裂きジャック、再び現る!”
新聞には娼婦ばかりを狙う殺人者のことが書かれていた。
(どうやらまた傑作をものに出来そうだ…)
新聞を見るともなしに眺めながら男はほくそ笑んだ。
end
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
切り裂きジャックは医学の心得があったのではないかという推測とコナン・ドイルが元医者だった事実から着想を得て書きました。
自己評価すると、高校生が書いた作品なら悪い出来ではないけど、才能のきらめきのようなものは感じられない、ってところですかね。
よかったら感想を聞かせてください。
ショートショートの掲載は4年ぶりになるのかな。
といっても4年ぶりに新作を書いた、というわけではありません。
物置きを片づけていて、その物置きに兄貴の私物がダンボール箱10箱分ぐらいあることは書きました(こちら)。
当然兄貴の私物しかないわけではないんですよ。
お袋の昔の趣味だった刺繍糸もあれば、自分の小学校の頃の文集などもありました。
他には高校の頃に書いたショートショートが掲載された文芸誌も…。
ネタもないことだし、今日はそのショートショートを転載します。
タイトルは『切り裂きジャックの正体!』です。
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これは19世紀末のロンドンのお話である。
男はスランプに陥っていた。
彼は元々医者であったのだが、ある日暇つぶしに自分の一番嫌いなタイプの人間が主人公の探偵小説を書き、出版社に送った。
その作品はあえなくボツになり、やがて彼の記憶からも消えていった。
数年後、どういった経緯によるのか、その作品が大衆向けの雑誌に掲載され、評判を呼んだ。
彼は意外なことの成り行きに内心驚いていたが、自身の経営する診療所の経営不振などを理由に医者をやめ、専業作家となった。
その後彼は数編の短編小説を書き、そのいずれもが高い評価を得た。
次々と舞い込んでくる原稿の依頼に彼は締め切りに追われた。
しかしこの主人公は本来、彼の最も嫌いなタイプの人間だったのだ。そうそう上手く書けるはずもない。
彼は次第にノイローゼとなっていった。
ようやく作品を書き上げ、彼は大きく息を吐いた。
窓の外を見やると、ロンドンは白い霧に包まれていた。
(久しぶりにやるか…。)
警察はしばらく北の方を重点的にパトロールすると言っていた。
(今日は西の方に行ってみよう…)
彼は警察の捜査方法についてかなり詳しく知っていた。小説が売れ始めてしばらくたった頃、彼は地元の警察署を訪れ、小説の参考にするから警察の捜査方法などについて教えて欲しいと頼んだ。
するとそこの警部補が聞くこと聞かないこと、ペラペラとしゃべってくれたのだ。
彼の小説に出てくる無能で役立たずな警部はこの男をモデルにしていた。
彼は黒いコートを羽織り、白い手袋をはめると、診察室から昔使っていたメスを持ってきた。
そして彼は霧のロンドンを歩き始めた。
標的となる女たちを探す。
自分の小説の主人公の次に嫌いな女たちを…。
彼はイーストエンドの公園に足を踏み入れた。
辺りを見回しても誰もいる気配はない。それも当然だった。殺されても商売をしようという女はいない。
だが彼は女たちがこの仕事をしなければ生きていけないことも知っていた。
必ずこの公園のどこかに獲物となる女はいるはずだった。
30分ほど深い霧の中をさまよい続け、彼は不意に目の前に派手なドレスを着た女がいることに気づいた。
懐からメスを取り出すと、彼は女の背後に音もなく忍び寄り…。
“切り裂きジャック、再び現る!”
新聞には娼婦ばかりを狙う殺人者のことが書かれていた。
(どうやらまた傑作をものに出来そうだ…)
新聞を見るともなしに眺めながら男はほくそ笑んだ。
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切り裂きジャックは医学の心得があったのではないかという推測とコナン・ドイルが元医者だった事実から着想を得て書きました。
自己評価すると、高校生が書いた作品なら悪い出来ではないけど、才能のきらめきのようなものは感じられない、ってところですかね。
よかったら感想を聞かせてください。
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