2週間後―
僕は高校生になっていた。新しい制服はまだぎこちない。芝田たちとは時々廊下等で会うけれどお互い無視している。学年トップの成績で入学した僕をみな一目おいているのだ。トップの座を守りつづけることが今の目標だ。でも授業は新しくできた友人たちと適当にさぼったりしている。最近僕はあまりがんばらないでいることを覚えた。それでいいかな、とも思うのだ。
そして―ようやくある病院の個室に辿り着いた。親戚と嘘をついて病室に入れてもらうと、白いベットに色白の女性が眠っていた。
僕が飛び降りようとしたビル―あそこから飛び降りて通行人に大怪我させたあげく自分も助かった人がいる、というアサコさんの言葉を思い出して、この二週間その生存者を探し続けたのだ。案の定、それは彼女自身のことだった。飛び降りからすでに二ヶ月以上たっていたが彼女は今だに入院していた。
僕が出会ったのは、アサコさんの死のうという意識が実体化してしまったものだったのだろうか。それが僕の死のうとしていた魂と呼び合って、僕達は出会えたのだろう。不思議な、奇跡的な出会いだ。
「―アサコさん。正平だよ」
白いなめらかな頬に手を触れると、彼女はゆっくりと目をあけた。そして僕を認めると驚きもせず、ふわりと微笑んだ。
「正ちゃん。髪、切ったのね」
金色の髪はさすがにまずいので(両親にこっぴどくしかられた)黒に戻して短髪にしたのだ。そして眼鏡はやめてコンタクトにした。
「……あたしも髪きろうかなあ」
「きっと短いのも似合いますよ。アサコさん」
僕は後ろに隠し持った白いくまのぬいぐるみを差し出した。
「またゲーセンとか競馬とか色々いきましょうね」
「うん。……今度は焼肉、食べれるといいね」
アサコさんはくまを抱きしめ、くしゃくしゃっと顔中で笑った。今まで見た中で一番素敵な笑顔だった。
<完>
僕は高校生になっていた。新しい制服はまだぎこちない。芝田たちとは時々廊下等で会うけれどお互い無視している。学年トップの成績で入学した僕をみな一目おいているのだ。トップの座を守りつづけることが今の目標だ。でも授業は新しくできた友人たちと適当にさぼったりしている。最近僕はあまりがんばらないでいることを覚えた。それでいいかな、とも思うのだ。
そして―ようやくある病院の個室に辿り着いた。親戚と嘘をついて病室に入れてもらうと、白いベットに色白の女性が眠っていた。
僕が飛び降りようとしたビル―あそこから飛び降りて通行人に大怪我させたあげく自分も助かった人がいる、というアサコさんの言葉を思い出して、この二週間その生存者を探し続けたのだ。案の定、それは彼女自身のことだった。飛び降りからすでに二ヶ月以上たっていたが彼女は今だに入院していた。
僕が出会ったのは、アサコさんの死のうという意識が実体化してしまったものだったのだろうか。それが僕の死のうとしていた魂と呼び合って、僕達は出会えたのだろう。不思議な、奇跡的な出会いだ。
「―アサコさん。正平だよ」
白いなめらかな頬に手を触れると、彼女はゆっくりと目をあけた。そして僕を認めると驚きもせず、ふわりと微笑んだ。
「正ちゃん。髪、切ったのね」
金色の髪はさすがにまずいので(両親にこっぴどくしかられた)黒に戻して短髪にしたのだ。そして眼鏡はやめてコンタクトにした。
「……あたしも髪きろうかなあ」
「きっと短いのも似合いますよ。アサコさん」
僕は後ろに隠し持った白いくまのぬいぐるみを差し出した。
「またゲーセンとか競馬とか色々いきましょうね」
「うん。……今度は焼肉、食べれるといいね」
アサコさんはくまを抱きしめ、くしゃくしゃっと顔中で笑った。今まで見た中で一番素敵な笑顔だった。
<完>