創作小説屋

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イノセントチャイルド (6/8)

2006年08月27日 22時03分12秒 | イノセントチャイルド(原稿用紙30枚)
 横内とは今から二年半前、高校三年生の夏の終わりに出会った。近所の大学の文化祭でナンパされたのだ。中学から女子校の上、家が厳しかったせいもあって、異性との交流がほとんどなかった私は、一つ年上の横内にすぐに夢中になった。恋愛をすることによって今までの地味な自分と別人になれたようで嬉しかった。
 高校三年生にもなると『経験』をすませた子が増えてくる。奥手な自分が周りからどんどん置いていかれて、馬鹿にされているような気がして、焦っていたのも事実だ。
 横内と付き合っているときは毎日が楽しかった。このまま時が止まればいいと思っていた。将来のことなんて何も考えていなかった。
 そして雰囲気に流されて、SEXをした。自分が大人になった気がした。クラスの経験済みの子たちとその話で盛り上がった。まだしていない子たちを見下した。
 外泊をした日、母にたたかれた。もっと自分を大切にしなさいといわれた。でも今が楽しいのだからいいと思った。
 そして……妊娠した。
 横内には「オレの子だっていう証拠でもあるの?」とまでいわれた。話した翌日には音信不通になった。
 あんなに好きだっていってくれたのに。あんなに楽しかったのに。裏切られた。裏切られた。かわいそうな私。かわいそうな私……。
 それ以来、嘔吐と貧血でまともな生活ができなくなった。医者には『うつ病』と診断された。高校は何とか卒業したが、進学もせず家にこもり続けた。母とのいさかいも絶えなくなった。一人になりたかった。誰とも話したくなかった。
 それで叔母の経営するアパートに一人暮らしさせてもらうことになったのだ。大学受験の勉強をすることと、精神科に通うことを条件に両親にも許してもらえた。
 初めての一人暮らしは自分との向き合いだった。暗い気持ちになって眠れない日は続いたが、何時に起きようが寝ようが注意する人もいないし、食べなくても怒られないので気は楽だった。
 そして子供達と出会ってからは格段に体調はよくなっていった。特にユウがそばにいると心が落ち着く。なぜユウは特別なのだろう? なぜ先ほど「一番大切な人」ときかれユウのことを真っ先に思いついたのだろう?

コメント
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