気まずい沈黙が流れたまま、私たちは狭い教室の端と端に離れて座っていた。
しばらくしてチャイムが鳴った。一時間目が終わったらしい。二時間目は体育だったはず。
「? 何してるの?」
おもむろに、緑澤君がごそごそと棚を探りはじめたのだ。
「ああ、あったあった」
暗い、思いつめたような顔をした緑澤君が取り出したものは・・・拳銃?!
「なにそれ?!」
「あいつらに思い知らせてやるんだ・・・山本さんの苦しみを・・・」
「ちょ、ちょっと!」
目が怖い! 目が怖い!
「それ、まさか本物じゃないよね?!」
「違うよ。エアガン。でもあたると結構痛いんだよ・・・」
ブツブツいいながら、緑澤君は部室を出て行こうとし始めた。これはまずい!
「ちょっと待ってよ! そんなの持っていったら大騒ぎになるわよ!」
「いいよ。なっても。僕、変わらなくちゃ。山本さんを守れるくらい強くならなくちゃ」
本気だ。この人、本気で言っている。
そう思ったら何だか涙が出てきた。
私をそんな風に思ってくれる人がいるなんて・・・。
「れ? 山本さん? どうしたの?!」
私の涙をみて、緑澤君は我に返ったようだ。
「何で泣いてるの? 僕、何かした?!」
オロオロしはじめる緑澤君。それをみていたらますます泣けてきて・・・しばらく泣き続けてしまった。緑澤君の肩に顔をうずめながら。
チャイムが鳴った。二時間目の始まりだ。
細く開けた窓からグラウンドでクラスメートが準備体操をしている姿が小さく見える。
それをボケーっとみていたら、なんだか可笑しくなってきた。
私もあんなに小さな人の一人なんだ。あんなに小さいのに、その中で生きていくのはこんなに難しい。
「このエアガン、結構遠くの標的まで狙えるみたい」
緑澤君が説明書を読みながら言ってきた。
「ここから撃ってみよう」
「は?!」
まだ諦めてなかったんだ?!
戸惑っている私をどかせて、緑澤君は細く空けた窓のサンに銃を置いた。
「チャンス!」
ちょうど、いじめグループの中心人物である男子がボールを拾うために皆から離れたところだった。
「いけ!」
たいした音もせず、エアガンは発射された。当たったのか、標的はキョロキョロしている。
「当たった・・・みたいだね」
私が言うと、緑澤君は私に銃を渡して、
「はい。山本さんもどうぞ」
「えええええ!」
一度は拒んだものの、緑澤君に強く言われて自分でも打ってみる。
面白いくらい、撃つたびに、標的がキョロキョロする。たいした衝撃はないけど、何かが当たっている感じがするのだろう。
「あ、担任だ。私この人大嫌い」
「僕も~。撃ってやれ、撃ってやれ!」
体育の先生である担任は、熱血教師風を吹かせているくせに、私がイジメられていることに気がつかないフリをしている。お気に入りの生徒とだけ上手くやって、それで自分が人気者だと勘違いしている嫌な教師。
「あ、当たったみたい」
キョロキョロと辺りを見回す姿が滑稽だ。
こうやってみていると、いつもは巨大なイメージのある、イジメの中心人物も、担任も、タダの人だと思える。この人達の言動に左右されている自分がアホらしくなってきた。
「おかしいね」
「本当。おかしいね」
二人してクスクス笑いだしてしまった。
しばらくしてチャイムが鳴った。一時間目が終わったらしい。二時間目は体育だったはず。
「? 何してるの?」
おもむろに、緑澤君がごそごそと棚を探りはじめたのだ。
「ああ、あったあった」
暗い、思いつめたような顔をした緑澤君が取り出したものは・・・拳銃?!
「なにそれ?!」
「あいつらに思い知らせてやるんだ・・・山本さんの苦しみを・・・」
「ちょ、ちょっと!」
目が怖い! 目が怖い!
「それ、まさか本物じゃないよね?!」
「違うよ。エアガン。でもあたると結構痛いんだよ・・・」
ブツブツいいながら、緑澤君は部室を出て行こうとし始めた。これはまずい!
「ちょっと待ってよ! そんなの持っていったら大騒ぎになるわよ!」
「いいよ。なっても。僕、変わらなくちゃ。山本さんを守れるくらい強くならなくちゃ」
本気だ。この人、本気で言っている。
そう思ったら何だか涙が出てきた。
私をそんな風に思ってくれる人がいるなんて・・・。
「れ? 山本さん? どうしたの?!」
私の涙をみて、緑澤君は我に返ったようだ。
「何で泣いてるの? 僕、何かした?!」
オロオロしはじめる緑澤君。それをみていたらますます泣けてきて・・・しばらく泣き続けてしまった。緑澤君の肩に顔をうずめながら。
チャイムが鳴った。二時間目の始まりだ。
細く開けた窓からグラウンドでクラスメートが準備体操をしている姿が小さく見える。
それをボケーっとみていたら、なんだか可笑しくなってきた。
私もあんなに小さな人の一人なんだ。あんなに小さいのに、その中で生きていくのはこんなに難しい。
「このエアガン、結構遠くの標的まで狙えるみたい」
緑澤君が説明書を読みながら言ってきた。
「ここから撃ってみよう」
「は?!」
まだ諦めてなかったんだ?!
戸惑っている私をどかせて、緑澤君は細く空けた窓のサンに銃を置いた。
「チャンス!」
ちょうど、いじめグループの中心人物である男子がボールを拾うために皆から離れたところだった。
「いけ!」
たいした音もせず、エアガンは発射された。当たったのか、標的はキョロキョロしている。
「当たった・・・みたいだね」
私が言うと、緑澤君は私に銃を渡して、
「はい。山本さんもどうぞ」
「えええええ!」
一度は拒んだものの、緑澤君に強く言われて自分でも打ってみる。
面白いくらい、撃つたびに、標的がキョロキョロする。たいした衝撃はないけど、何かが当たっている感じがするのだろう。
「あ、担任だ。私この人大嫌い」
「僕も~。撃ってやれ、撃ってやれ!」
体育の先生である担任は、熱血教師風を吹かせているくせに、私がイジメられていることに気がつかないフリをしている。お気に入りの生徒とだけ上手くやって、それで自分が人気者だと勘違いしている嫌な教師。
「あ、当たったみたい」
キョロキョロと辺りを見回す姿が滑稽だ。
こうやってみていると、いつもは巨大なイメージのある、イジメの中心人物も、担任も、タダの人だと思える。この人達の言動に左右されている自分がアホらしくなってきた。
「おかしいね」
「本当。おかしいね」
二人してクスクス笑いだしてしまった。