それから、達之の部屋から赤い物を何度も投げてみたが、扉は現れなかった。何かが違うのかもしれない。
「本当に達之と和也はその何とかっていう扉の向こうに行ってしまったのかしら?」
「たぶん・・・。もう一度和也君が消えたときの状況を話していただけますか?」
おばさんは爪を噛みながら、話し出した。
「ゴミ捨てをして、戻ってきて、家の門を開けようとしたときに、窓の外をみている和也の姿がみえてね。『達之なにしてるの?』って声をかけたのよ。そうしたら、突然赤いボールを投げてきて・・・」
「え? ちょっと待ってください」
スラスラ言うから聞き流すところだった。
「和也君をみて『達之』って声をかけたっておっしゃいました? おばさん、和也君のことをわざと達之って呼んでるんですか?」
するとおばさんは気まずそうに俯いた。
「だって・・・和也のせいで達之はいなくなったのよ。あの子がいつも達之のことを馬鹿にしていたから・・・。和也が達之になればいいのにっていつも思ってたわ。そう思ってたら、自然と和也のことを達之って呼ぶようになっていたの」
「そんな・・・」
そんな馬鹿な理由があるか!? 二人とも自分の子供なのに・・・。
「でもね、消える寸前の和也・・・、いつものように『達之』って呼んだだけなのに、あの子、みたこともないような寂しそうな顔をしたのよ。今までは何て呼ばれようと飄々としていて・・・、ああ、この子は私になんの感心もないんだなって思ってたのに・・・」
いきなり、おばさんはわあっと泣き出した。
「ごめんね、和也。あなたのせいじゃないのにね。ごめんね、達之。私があなたを追いつめたのよね。悪いお母さんよね。全部私が悪いのよね。ごめんね。ごめんね・・・」
「・・・・・・」
泣き崩れるおばさんを励ます言葉は見つからなかった。だって、緑澤君と和也のほうがもっともっと辛かったって思えるから。
「おばさん・・・それは二人が無事帰ってきたら直接言ってあげてください」
そう。私たちは二人を連れ戻すんだから。泣いている場合ではないんだ。
「本当に達之と和也はその何とかっていう扉の向こうに行ってしまったのかしら?」
「たぶん・・・。もう一度和也君が消えたときの状況を話していただけますか?」
おばさんは爪を噛みながら、話し出した。
「ゴミ捨てをして、戻ってきて、家の門を開けようとしたときに、窓の外をみている和也の姿がみえてね。『達之なにしてるの?』って声をかけたのよ。そうしたら、突然赤いボールを投げてきて・・・」
「え? ちょっと待ってください」
スラスラ言うから聞き流すところだった。
「和也君をみて『達之』って声をかけたっておっしゃいました? おばさん、和也君のことをわざと達之って呼んでるんですか?」
するとおばさんは気まずそうに俯いた。
「だって・・・和也のせいで達之はいなくなったのよ。あの子がいつも達之のことを馬鹿にしていたから・・・。和也が達之になればいいのにっていつも思ってたわ。そう思ってたら、自然と和也のことを達之って呼ぶようになっていたの」
「そんな・・・」
そんな馬鹿な理由があるか!? 二人とも自分の子供なのに・・・。
「でもね、消える寸前の和也・・・、いつものように『達之』って呼んだだけなのに、あの子、みたこともないような寂しそうな顔をしたのよ。今までは何て呼ばれようと飄々としていて・・・、ああ、この子は私になんの感心もないんだなって思ってたのに・・・」
いきなり、おばさんはわあっと泣き出した。
「ごめんね、和也。あなたのせいじゃないのにね。ごめんね、達之。私があなたを追いつめたのよね。悪いお母さんよね。全部私が悪いのよね。ごめんね。ごめんね・・・」
「・・・・・・」
泣き崩れるおばさんを励ます言葉は見つからなかった。だって、緑澤君と和也のほうがもっともっと辛かったって思えるから。
「おばさん・・・それは二人が無事帰ってきたら直接言ってあげてください」
そう。私たちは二人を連れ戻すんだから。泣いている場合ではないんだ。