「山本さん、早く! 行くよ!」
花火の余韻にひたる暇もなく、緑澤君に腕を引かれて階段を駈け降りる。そして四階の階段横にある科学部の部室に押し込まれた。
「ここ、勝手に入って大丈夫なの?」
「大丈夫。今日三年生は芸術鑑賞会で全員いないし、顧問もその付き添い。あとは僕しか部員いないから」
「……すごい計画的」
驚いた。屋上の鍵や逃げ場所の用意が出来てるってことは、今日のことを何日も前から計画してたっていうこと?
「でも山本さんが早退するっていうのは計画外だったよ。本当は放課後に誘おうと思ってたんだ」
エヘ、と緑澤君が照れたように笑う。
ちっとも話が見えてこない。
「ねえ、何で自分も早退してまで、私に花火を見せてくれたの?」
「それは……」
一瞬で緑澤君の顔が耳まで赤くなった。
「山本さん、花火好きって言ってたからさ。山本さんに喜んで欲しくて」
「え……」
それはもしかして・・・
「僕、山本さんのことが好きなんです」
緑澤君はかわいそうなくらい赤い顔をして、今にも泣きそうな目をしている。
せっかくの、生まれて初めての愛の告白だというのに・・・、緑澤君の顔を見ていたら、どうしても、どうしても、なじってしまいたくなった。
「それならどうして? 私を好きだといってくれるなら、どうしてやめさせてくれなかったの? 今日、私の椅子に『死ね』って書いてあったのよ。知ってるでしょ?」
「・・・ごめん」
緑澤君はうなだれた。
知っている。これは八つ当たりだ。クラスでも地味で目立たない緑澤君が「やめろ」と言ったところでやめるような連中ではない。だからそんなことをしても無駄だし、逆にそんなことをしようものならば、今度はイジメの標的が緑澤君になるかもしれない。
「ごめん、僕、弱虫で・・・」
「いいよ。私のほうこそごめん。こんなこと緑澤君にいってもしょうがないのにね。あ、先生たちきたね」
ダンダンッと勢いよく階段を上っている音がする。数人の先生が屋上に上がったようだ。
「しばらくここにいてもいい? 今、家に帰るとやっかいだからさ」
「うん・・・」
緑澤君はすっかりしょげてしまっている。申し訳ないことをしてしまった。せっかく花火を見せてくれたのに。せっかく告白してくれたのに。こんななんの取り柄もない私を好きになってくれたというのに。
花火の余韻にひたる暇もなく、緑澤君に腕を引かれて階段を駈け降りる。そして四階の階段横にある科学部の部室に押し込まれた。
「ここ、勝手に入って大丈夫なの?」
「大丈夫。今日三年生は芸術鑑賞会で全員いないし、顧問もその付き添い。あとは僕しか部員いないから」
「……すごい計画的」
驚いた。屋上の鍵や逃げ場所の用意が出来てるってことは、今日のことを何日も前から計画してたっていうこと?
「でも山本さんが早退するっていうのは計画外だったよ。本当は放課後に誘おうと思ってたんだ」
エヘ、と緑澤君が照れたように笑う。
ちっとも話が見えてこない。
「ねえ、何で自分も早退してまで、私に花火を見せてくれたの?」
「それは……」
一瞬で緑澤君の顔が耳まで赤くなった。
「山本さん、花火好きって言ってたからさ。山本さんに喜んで欲しくて」
「え……」
それはもしかして・・・
「僕、山本さんのことが好きなんです」
緑澤君はかわいそうなくらい赤い顔をして、今にも泣きそうな目をしている。
せっかくの、生まれて初めての愛の告白だというのに・・・、緑澤君の顔を見ていたら、どうしても、どうしても、なじってしまいたくなった。
「それならどうして? 私を好きだといってくれるなら、どうしてやめさせてくれなかったの? 今日、私の椅子に『死ね』って書いてあったのよ。知ってるでしょ?」
「・・・ごめん」
緑澤君はうなだれた。
知っている。これは八つ当たりだ。クラスでも地味で目立たない緑澤君が「やめろ」と言ったところでやめるような連中ではない。だからそんなことをしても無駄だし、逆にそんなことをしようものならば、今度はイジメの標的が緑澤君になるかもしれない。
「ごめん、僕、弱虫で・・・」
「いいよ。私のほうこそごめん。こんなこと緑澤君にいってもしょうがないのにね。あ、先生たちきたね」
ダンダンッと勢いよく階段を上っている音がする。数人の先生が屋上に上がったようだ。
「しばらくここにいてもいい? 今、家に帰るとやっかいだからさ」
「うん・・・」
緑澤君はすっかりしょげてしまっている。申し訳ないことをしてしまった。せっかく花火を見せてくれたのに。せっかく告白してくれたのに。こんななんの取り柄もない私を好きになってくれたというのに。