創作小説屋

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ベベアンの扉(7/22)

2006年10月09日 23時59分52秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
 なぜか緑澤君は屋上の鍵を持っていた。どやって手にいれたんだろう??
「僕ね、科学部に入ったんだよ。そこでこないだ花火の作り方を教わったんだ」
 重そうな扉が開くと、七月の空が目の前に広がっていた。
「作ってみたから、山本さんに見て欲しくて」
「・・・ちょっと話が見えないんだけど」
 ニコニコしている緑澤君に疑問をぶつける。
「考えてみたら、今、授業中だよね? 何でここにいるの?」
「僕も早退したんだ」
 よく分からない・・・。
「屋上の鍵、どうしたの?」
「前に部活で、屋上で作業をしたときに合い鍵作っちゃったんだ」
 作っちゃったって・・・。
「で、なんで花火なの?」
「前に遠足で同じ班になったときに、花火が好きだって話してたでしょ。山本さん」
 そんな話したっけ? 花火好きは本当だけど・・・。
「で、なんで私に見せてくれるの?」
「だって今日、山本さん誕生日でしょ?」
 え?
「何で知ってるの?!」
「だって今日、七月七日だもん。七が重なる日に産まれたから名前が七重でしょ?」
 確かにそうだけど・・・。
「ほら、これこれ。これを打ち上げるから」
 嬉しそうに、緑澤君は白い筒を見せてくれた。……筒?
「ちょっと待って。花火って打ち上げなの?」
「そうだよ?」
 そうだよって・・・。
「打ち上げってことは大きな音がなるんじゃないの? 今授業中だよ。ここ学校の屋上だよ? そんな大きな音鳴らしたら……」
「大丈夫。あげたらすぐに逃げようね!」
「はあああ?! ちょっと待ってよ!」
「じゃ、行くよ~」
 私の静止も聞かず、緑澤君は筒を机の上にセットして、導火線に火をつけた
 ジジジジジっと火の焼ける音がする。
「離れて離れて!」
 緑澤君に腕を引かれて階段の扉の前まで連れてこられる。
「ちょ、ちょっと・・・、あ!」
 ヒュンっという音とともに何かが筒から放たれた。
 小さな爆発音とともに、7月の空に小さな小さな白い光が花開いた。
 胸の奥にトンッと衝撃が伝わる。一瞬のことだったけれども、それはまぶしいほど輝いていた。

コメント (2)
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