NHKBSで小津安二郎監督の「お早う」というのを
やっていたので録画して拝見。
小津安二郎は日本の映画界の巨匠といわれ、
「shall we ダンス」の周防正行監督などに
大いに影響を与えた方ですが、
ワタクシは、その良さがよくわからず、
それも「お早う」という
挨拶だけで一本の映画!を作っちゃうという
発想というか才能がよくわからず、
映画好きなれど今日まで
マジメに拝見したことがなかったのでした。
それを60超えでようやく拝見。
もう、面白くておかしくて、笑いが止まらない。
第一、昔はこの映画で女優さんたちが
着用しているきものの良さがわからなかった。
「きものでも見てみるか」との
エラそうな動機で観たものの、
映画もさることながら、
きものが「いい!」の一言。
素敵!でもきれいでも、素晴らしい、でもなく、
「いい!」
まずは三宅邦子さん。
格子に割烹着ですよ、割烹着。
OO細胞のオボカタさんではないですよ。
次は杉村春子さん。
こちらも格子。
お名前は存じ上げないのですが、
古い日本映画の名わき役。
これは唐桟でしょうか。
小津さんは浦野理一さんのきものを
よく使ったそうです。
これらもそうなんでしょうね。
そのためもあって一躍ブランドものになったのですが、
この辺りのきものは、幸田文さんの世界の
通のきものワールドですね。
きものに憧れ始めた頃には、
こういうきものの良さまったく理解できなかったわ。
「どうしてあんなきれいでない(婉曲表現、ですう)
きものなぞ着るのでしょうか」なんて。
あれから何年か経ち、いろんなきものを見て、触って
(といってもプチプラだから目が肥えたと
いういことでもないけどね)、
この手のきものの
良さにようやく気づいた紫苑です。
これは57年前の映画なのです。
最後の5分くらいで、
佐田啓二さんと久我良子さんが、
駅のホームで
「きょうはいい天気ですね」
「本当にいいお天気ですわね」
「雲一つありませんね」
「本当にそうですわね」と
延々とお天気の話?をします。
57年前の日本の、このうららかさ。
紫苑がこの映画を観て連想したのは、
なぜかこの一冊。
いやあ、もう傑作中の傑作です。
50年ごとに地球人の運命かわるのよ。
合理一辺倒の宇宙人が、
「合理的ではない行い」をする地球人に
嫉妬?して、その能力を奪う、という話。
(いろんな読み方があります)
宇宙人が理解できない地球人の素晴らしさの一つが
この「延々と続ける挨拶」ではないでしょうかね。
50年経てば世界って変わるのねえ。
延々とする挨拶~~、
こんなずっとやっていた50年前の日本人。
時間があったら、延々と挨拶、やってみたい!?
ちょっと変とか思われるよね。
今の私たちは、もう宇宙人に変わりつつあるかも。
麻地に終わりの文字も幸田さんの世界に
通じる。
現在では何十万もする、浦野理一さんのきもの。
庶民には手の届かない、
それこそ宇宙的なお値段のお品になってしまいました。
いまでは「普通」「普段」が一番贅沢、貴重に
なったということなのでしょうか。