先に「映像の世紀」で見た
シャネルはナチスのスパイ!
あまりに衝撃で早速読んでみました。
原題は「sleeping with the enemy」
「敵と寝る」というストレートなタイトル。
「シャネルの秘密の戦争」とサブに。
これまでも何冊か彼女の自伝は読んでいたのですが、
当然ファッションメイン。
この本は、
シャネルが戦争中ナチスのスパイだった事実を
考証していくもの。
孤児院育ちのシャネル。
この時代ありる階層の人たちの間では反ユダヤの思想が
広まっていて、
ほら、弱いモノは余計に外国人などを
排斥する傾向があるというわけです。
彼女は筋金入りのユダヤ人嫌いで、
その罵り方はそばで聞いている人が
耳をふさぎたくなるほど。
スパイについてはのちに譲るとして、
ここではすさまじいまでの上昇志向について。
20歳でお針子になり、夜はカフェで歌手のバイト。
そこで富裕層の男性の愛人、
「囲われ者」になったわけですが、
彼女は囲われ者、娼婦という意味の
「ココット」と自ら名乗り、ココ・シャネル
とその名を生涯、持ち続けたわけです。
フランス社会では高級娼婦はある意味もてはやされたのよ。
シャネルは「高級娼婦」ではないんだけどね。
ココ、このネーミングでもわかるように、
彼女は、自らの悲惨な生い立ちをこそ武器に
のし上がった。
孤児院に送られたときの気持ちを彼女は
「何もかも奪われてしまった。
12歳で私は死んでしまったんだと思った」
この時の経験が、
でもシャネルをシャネルならしめたのですねえ。
富裕層、貴族の囲われ者になりながら、
彼女は男たちに一歩も引けを取らない。
20歳の娘ですよ。
のちに有名になってからではなく。
「家もない、愛もない、親もいない孤児。
孤独が私に優越感を与えたの。
みじめな生活が私に
強さと誇りをくれた」
親も家もないことが「優越感」ですよ。優越感。
だから彼女は、どんな金持ち、有名人、芸術家と
付き合っても引け目を感じなかったといいます。
当時の貴族、富裕層の男たちの言葉が
聞こえてきそうです。
「~~いや、面白い女がいるんだよ。
孤児院育ちなのに、それを隠さない。
かえってそれを誇示する。
奔放で自由に自分勝手にふるまって~
つまりちょっといない、珍しい女だな」
女遊びが仕事?のような
当時の上流階級の男たちに
とってシャネルはものすごく
珍しくも興味をそそる存在だった。
性的にも奔放だっただろうし。
右の写真の男性がウエストミンスター侯爵。
最初の愛人には上流社会の流儀を学び、
次の愛人には自立するための資金を。
有名になってからは、
ロシアやイギリス王国の男たち。
イギリスの大富豪ウエストミンスター侯爵からは
結婚を申し込まれたが拒否。
彼女は自分のような階級の女がイギリス王室に
入ることはできないと知っていたし、
結婚したら、自分が自分でなくなる、
これまでの「誇り」が失われると思ったようだ。
悲惨な生い立ちを隠したり、負い目に感じれば
それは即、卑屈になり弱みになる
シャネルはそれをわかっていた。
公言することで、それを強みに、
武器に、
魅力に、
パワーに変えて限りなく上昇。
才能があったからというのではなく、
だからこそ新しい女として強烈な個性、
才能が噴出したのですねえ。
ジャージードレスなど、
「貴族に貧乏人の恰好をさせた」
と言われるシャネル。
彼らを自分のほうにひっぱりこんだのですね。
コムでギャルソンなどの
プアルックはここから始まった。
スパイの件?
いや、これはまた次に。
こちらもピカレスク並みに、というか
悪漢ばかり登場なのよ。
というわけで、
本日は「欠点も持ち味、強味となる」の
最高成功例でした。
というお話でした。
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