著者の村田紗耶香さんは、
芥川賞をとった今でも週に何日か
コンビニで働いているそう。
小説はコンビニで働きながら
作家を目指している人の話かなあと
思いながら、
気になりながらも買う気にならず、
しかし図書館での予約数をみると、すごい数。
古書店で見つけたのでゲット。
笑っちゃうほど面白かった。
というのは、主人公は頭から身体まで
全身コンビニ一色。
たとえば、ペットボトルが売れる音に身体が動き、
一個の袋菓子の売り上げに喜び~~、
身体は店内のすべての乱れを見逃さないよう
反応している。
どこにいても誰といても、
コンビニの音、匂いなどに
五感が動き始める。
喋り方も、コンビニ仲間の「
語尾を伸ばす」話し方を
いつのまにかマネしていて、
この話し方は、
「AさんとBさんのしゃべり方を混ぜたもの」
などと冷静に分析。
言ってみれば、コンビニに恋し、耽溺した人。
異例のコンビニでもサイン販売会、だとか。
文藝春秋刊
コンビニと主人公の初めての出会いは、
大学一年生のとき。
「コンビニ店員になる前の自分は
おぼろげにしか覚えていない」などと、
まるで「運命の恋人」に出会った前と後、
ビフォアアフターのよう。
コンビニの店員になったとき、
「~~そのときはじめて世界の部品になることが
できたのだ。私は生まれた。
世界の正常な部品としての私が生まれたのだ」
と高らかに宣言している。
脳の「RAS細胞」がコンビニに
快感を得たんですね。
面白いのは、この場所が
IT業界でもハリウッドでもない、つまり
「普通の人」が憧れる場所ではないと
いうだけ。
ほかの場所ならむしろ「根気がある」「好きの力」
などと誉められたかも。
だって好きな仕事やっているのだもの。
しかし周りの人たちは~~、
「36歳にもなって結婚もしないで
なぜいつまでもコンビニのパートなの~~!」
「社畜!」「マニュアル人間」
「底辺の人間」「負け犬」
「気持ち悪~~い」などと罵倒され。
しかし主人公にはまったく堪えず、
「私のような人間は交尾して
遺伝子など間違っても残すなと
いうんですね。ではそうします」
と淡々と対応。
「普通の人」とのやり取りがおかしくて、
笑ってしまう。
「普通の人」だって、どこかおかしい。
自分が普通だと思っている分、やはりおかしい。
「普通の人間」の異常さをも
描くことが作者の狙いでもあるのだろう。
夜の街のオアシスのような、水槽のようなコンビニ
借りフリーイラストです。
コンビニいくために身体を清潔にして、
朝しっかり起きていたのに、
コンビニをやめた主人公が拠り所をなくし、
元気を失っていく様子は、失恋した人、
大切な人を亡くした人、
アルプスの少女ハイジが都会に連れていかれ、
どんどん元気をなくしていったときのよう。
普通の人と「コンビニ人間」の違いは、
普通の人がモザイク、
つまり家族30%、友人20%、
上司、先生、恋人などなど
いろんな人の考え方などを倣い、
学習してできているモザイク人間だとしたら、
この主人公は
コンビニ一色に染まっているだけ。
マッ、宗教人間、会社人間、
ゲーム、スマホ人間,ブログ人間、
などいろいろいるわけで。
まっ、どんな人やものに
どんな影響を受けるか、
先の脳のなかの「RAS細胞」じゃないけど、
快感を得るものによって、自分は出来上がる
というわけ。
で、私自身はどんなものが、どんな割合で
構成、出来上がっているのかな。
着物率高いだろうなあ。
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