王将戦第2局は羽生善治九段が藤井聡太王将を下し、1勝1敗のタイとしました。
この一局を通して感じたのは、羽生九段の深い研究です。そして驚いた手は8二金です。先手の羽生さんから見て、左サイドに金を打ち込みました。
藤井玉は右サイドに居るので、随分、敵玉と離れた位置に金を放り込んだ訳です。「それなら、この場面で羽生さんは相当、時間を使ったんだろう」と消費時間を確認すると、確か2分だったと記憶しています。考えているというより、確認のための時間と言っていいです。
副立会人の稲葉八段が「この手を指すために10手前から組み立てることは自分には考えられない」とコメントしています。羽生さんは「筋の悪い手だけど仕方ない」と語っています。
筋が悪くても正しい手。そう、これはAIの手です。すでに前例のない局面なので、羽生さんの研究がいかに深かったかが伺えます。
棋士は研究者型、勝負師型、芸術型に分けられると言われます。勝負師型の代表は渡辺名人、芸術型の代表はこの日の立会人だった谷川十七世名人、そして研究者型は紛れもなく羽生九段。この研究者型が現在の主流になっています。
そのため羽生さんにとっては、必ず飛車先を突いて、相手の研究を真っ向から受けて立つ藤井君は、やりがいのある相手だと思います。
何度も言いますが、今の羽生さんは20代の羽生さんより、はっきり強いです。天才・藤井聡太がこの試練を乗り切るのか、乗りきれないのか。ここから仕切り直し。五番勝負に注目です。