王将戦第4局、羽生九段が勝ちました。内容は羽生九段が藤井王将を圧倒したと言っていいでしょう。藤井王将は変調ですね。
勝負を方向づけたのは、藤井王将の封じ手だったと思います。羽生九段の桂馬のただ捨ての王手に対し、藤井王将の選択肢は実質二つ。一目、玉で取るのが自然ですが、実はそれは危険な変化が含まれていて、かといって、銀で取るのも次の羽生九段の厳しい手が見えるので難しいところです。
しかし、本来の藤井王将の力を持ってすれば、30分、長くても1時間あれば、自分がよくなる方を選べたはずです。実際にこの一手にかけた時間は、2時間20分以上。これは相当迷っているなと思ったので、間違える可能性は高いと見ていました。
他のプロ棋士の見解は揃って同銀。「藤井聡太がここで間違えるはずがない」と考えていたのでしょう。
しかし、封じ手は同玉。ここから形勢は一気に羽生九段に傾きました。
実は第2局でも同じようなことがありました。藤井王将が飛車で王手をかけたのですが、それが疑問手でした。普段の藤井君なら目をつぶっていても飛車を正しい場所へ打てたはずです。
とにかく藤井君は本来の将棋を取り戻さないと、厳しいですね。
何故、そのような手を指してしまうのか?僕の個人的な見方ですが、藤井君は羽生さんに対して意識過剰になっていると思います。
ひとつには、羽生さんの研究の深さ。これが藤井君の想定を超えていたのだと考えます。
もうひとつは、藤井君が将棋を覚えた頃、羽生さんは将棋界の顔でした。将棋が上達するにつれて羽生さんを倒すことが具体的な目標になっていき、そしてこの大舞台で目の前に羽生さんがいる。肩に力が入っても仕方ないのかもしれません。
対する羽生さんですが、僕は想像を超える研究をしてくると考えていました。何故、羽生さんがそうした研究が可能なのかと言えば、将棋に対する探求心の強さだと思います。自分だけの将棋の世界に吸い込まれていくようなイメージを僕は昔から持っていました。
このままの流れでいけば藤井聡太を倒しての通算タイトル100期。ただ羽生さんとしては「人事を尽くしてて天命を待つ」心境ではないでしょうか?