ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

傍観者

2023-02-21 11:19:49 | 

高校3年の教室

体の大きな男が

男子生徒の胸ぐらを掴み

壁に押し付けている

そして殴る、蹴る

僕は後ろの席から、それを見ていた

一方的な暴力というのは

気持ちのいいものではない

小柄な男子生徒を覆うように背を向けて

痛めつけているのは僕らの担任教師だ

 

暴力は日常的だった

おおよそ、ターゲットは同じ生徒だ

クラスメートは黙って俯いている

僕はこの教員免許を持った、悪質趣味の男に

勝てるだろうかと考えていた

体格では彼に劣るが

不思議と負ける気もしなかった 

 

しかし、僕の足は行動しなかった

無事に卒業したかった

この檻から出れば、あとは自由なんだ

男子生徒は「あんな奴、俺が本気になれば軽い」

そんな捨て台詞を残して退学した

 

あの中退少年は、今も心の奥底に

あの暗黒を引きずっているのか

それとも時の薬で治癒したか

はっきりしているのは

僕が傍観者ということだけ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする