高校3年の教室
体の大きな男が
男子生徒の胸ぐらを掴み
壁に押し付けている
そして殴る、蹴る
僕は後ろの席から、それを見ていた
一方的な暴力というのは
気持ちのいいものではない
小柄な男子生徒を覆うように背を向けて
痛めつけているのは僕らの担任教師だ
暴力は日常的だった
おおよそ、ターゲットは同じ生徒だ
クラスメートは黙って俯いている
僕はこの教員免許を持った、悪質趣味の男に
勝てるだろうかと考えていた
体格では彼に劣るが
不思議と負ける気もしなかった
しかし、僕の足は行動しなかった
無事に卒業したかった
この檻から出れば、あとは自由なんだ
男子生徒は「あんな奴、俺が本気になれば軽い」
そんな捨て台詞を残して退学した
あの中退少年は、今も心の奥底に
あの暗黒を引きずっているのか
それとも時の薬で治癒したか
はっきりしているのは
僕が傍観者ということだけ