なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

一過性全健忘

2021年09月05日 | Weblog

 金曜日の午前中に工事現場で作業をしていた50歳男性が救急搬入された。重機(小型のショベルカー)を運転していて、道路わきから1m下に落ちた。

 頭部打撲したようだが、頭痛は軽度で、胸痛・腹痛・四肢痛はなかった。ただ、救急隊の報告では、話がおかしいということだった。

 搬入時、バイタルは異常がない。ここはどこですか、と訊くので病院名を伝えた。名前・生年月日・住所は問題なくいえる。女性と同居していること、両親は父親が亡くなっていて実家には母親だけいることも話した。

 また、ここはどこですか、と訊いてきた。何故ここにいるんですか、とも言っていた。健忘症状があり、朝からのことは覚えてなかった。朝早くから仕事をしていたことも忘れていた。

 血液検査は予想通り異常なし。頭部CTでも異常はなかった。念のためとった胸腹部CTでも外傷による損傷は認めなかった。

 症状からは一過性全健忘が疑われた。何度も同じことを訊いてくるので、時間のかかる頭部MRIを撮影できるかと思ったが、拡散強調画像だけでも撮れればと思ってオーダーした。

 放射線技師さんに事情を伝えていたので、何度も会話を入れて、状況を説明した紙(看護師さんが書いた)を顔の上に張り付けていた。MRIは無事撮れたが、異常はなかった。

 連絡していた兄弟が病院に来て、その後に仕事先に行っていてなかなか連絡がつかなかった同居の女性が来てくれた。病状を説明して、数日慣れた自宅で過ごしてもらうことにした。

 一過性全健忘は数日で回復すると見込まれるが、経過をみないと分からない。月曜日に外来に来た時に症状が残っていれば、高次脳機能を診られる病院に紹介することになる。

 

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