年末年始はいろいろな人が発言をする。その中のいくつかを書き留めておこう。旧日本火災の社長を務め、経済同友会終身幹事である品川正治氏が、ある新聞の対談で「日本資本主義の大転換の必要性」に触れ、市場原理主義、新自由主義を批判している。氏の発言をそのまま列挙しておく。
「日本の市場経済というのは、もともとは、市場原理主義とははっきり違うものだったのではないかと思います。医療、福祉、教育、環境、農業という問題を、すべて市場で解決しようという姿勢は誤りではないか。とくに小泉内閣以降は、新自由主義、あるいは『構造改革』と称する”貧乏神”で、国民生活が直撃を受けているのではないか。日本の戦後の経済が持っていたDNAとまったく違う経済運営がされるようになってきています。」
「70年代までの日本の高度成長期には、経済の成長の果実というものを国民に分けるんだというのが、行政の中にあった。経済が成長すればするほど産業間に格差が出る。それは税や財政で是正する。税財政をフルに使いながら産業間の格差とか都市と農村の格差とかを少なくしようというのが、今までの日本資本主義の中にあったと思う。」
「それが、アメリカというのは、配分するのは資本家で、いっぺん資本家の懐に入ってから配分するんだ、という考え方なんです。その考え方に、最近では、日本もすっかり染まってしまった。この考え一色に染まっているのは、世界でも日米だけといってもいいすぎではないと思います。」
この提言は、品川氏が、経済同友会の副代表幹事や専務理事を歴任し、現在も終身幹事を務めているだけに重みがある。戦後経済を担い、指導してきた立場から、格差の拡大を絶えず是正してきたのが「日本資本主義のDNA」だと言う。DNAという表現が何ともいい。
昨年ドイツ、フランス、イギリスを回ってきて、それら大国が、現代社会の病根(環境破壊や格差問題など)をじわりと乗り越えようとしているところに、大国の品格と実力を感じた。
「日本資本主義のDNA」を大事にしたいと思う。