青森の酒として名高いのは『田酒』である。西田酒造店の酒で、特に純米酒に優れる。従って私は、今回の旅ではこの名酒を飲むことに決めていた。
ところが初日の十和田湖畔の宿に、この酒はなかった。しかも、純米酒では秋田県の『太平山』しかない。もちろんこの酒も悪い酒ではない。ただ青森の旅であるのでその地の酒にこだわったのであるが、他に飲むべき酒もないので、そのホテルでは太平山の「生」を飲んだ。
翌日の鯵ヶ沢こそ田酒を飲もうと楽しみにしていたが、ここにもなかった。しかも「利き酒師」もいてかなりの種類の酒を置いているにもかかわらずだ。私は「どうして田酒を置かないのか」と問うと、「量が少なく常置出来ないからだ」と言う。
このホテルの料理は、「さざえのつぼ焼き」から「かに」など最高の料理だっただけに残念であったが、私は『豊盃』を選びたっぷり飲んだ。もちろんこれも立派な酒だ。青森には、田酒のほかに『桃川』、『駒泉』、『鳩正宗』などたくさんの良い酒がある。中でも『豊盃』は最近人気が出ている。
ビールでは、下北名産センターで『恐山ピルスナービール』を買って、バスの中の昼食の友としたが、これは珍しい味の地ビールであった。「麦芽、大麦、ホップ」を原料とし、「麦芽使用量91.66%」となっているので、残る少量に大麦を使っているのであろう。とにかく麦100%で、しかも「活性ビールイーストとして、イーストの味を味わってください」とあり、ピルスナーというよりエールに近い味がした。
旅の余話をいくつか・・・
知らない土地の生き物に触れたいものだと、まず「津軽の黒まぐろ」と「陸奥湾のイルカ」に期待したが、これには前述の通り会えなかった。ところが下北半島を越える山中で、バスの中から野生のサルを何匹も見かけた。
もっと驚いたのが、「鯵ヶ沢のスター」の異名をとる「わさお」という犬に出会ったことだ。私は知らなかったが、全国的に有名らしく、みんな大騒ぎであった。しかもその犬が棲む家の前では車が渋滞した。対向車もたまに見かける程度の国道が、突如渋滞したと思ったら、みんなその家の前に止まり犬を見るようだ。
これもまた旅の思い出である。