旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

大飯原発再稼働 … 経済効率と人の命を天秤にかけていいのか?

2012-06-20 14:36:40 | 政治経済

 

 野田民主党政権は迷走の末原発再稼働に踏み切った。迷走というのは、管元首相や枝野経産相などに脱原発を志向する発言がちらほら見えたから言うのであるが、野田首相をはじめ主要なところは原発再稼働を一貫して追求していたと思われる。
 
 この再稼働に際し、二つの商業紙が異なる見解を掲げていたので記録にとどめておく
 まず日経新聞は、6月16日の経済部大瀧康弘記者の署名記事で、「野田佳彦政権はひとまず妥当な判断を示した」とし、「円高や株安に苦しむ日本企業に電力危機が重なれば、事業の撤収や製造拠点の海外移転に拍車がかかる」と警告、「日本の産業競争力を保つ観点からも次の原発の再稼働に踏み出す必要がある」と、今後の再稼働を催促している。つまり、「資源の乏しい日本が脱原発の路線に急にかじを切るのは現実的でない」とする主張で、経済効率最優先の立場に立つものであろう。
 毎日新聞も同日、山田孝男専門編集委員の『学びなき前進』という署名入り記事を掲げた。氏は冒頭に、「学んだことの証はただ一つで、何かが変わることである」という教育哲学者林竹二の言葉を引用し、「原発と安全規制の現状を見る限り、政府も原発に携わる実務家も原発事故に何も学んでいない」と指摘している。その実例として、組織的には「原子力規制委員会」や「原子力規制庁」ができるが中身は何も変わらない。何よりも「絶対安全神話」が変わっていない。首相は「福島のような事故は起こさない」と断言するが、「何が起きるか分からぬ以上、軽率な断定はしないという福島事故の反省は忘れられた」と指摘している。
 そして、「安全と豊かさを足して2で割ることはできない。学ばず、変わらず、恐る恐る原発依存のアクセルを踏み続けることで豊かさを守れるか」と追及している。
 最後に同記事は、「大飯原発3、4号機を一年間運転すると、広島型原爆にして計約2000発分の核分裂生成物を生み出す」という事実を指摘し、次のように主張している。
 「止めても動かしても危険は同じ、ではない。動かせば、手に負えぬ核のゴミがどんどん増える。底知れぬリスクと背中合わせの豊かさと知るべきだ」

 手に負えぬ核のゴミ…、人類が未だ処理の方法を手にしていない危険なものを生み出し続けても当面の豊かさを追う。すでに福島原発周辺の何万人の生活を奪っている危険を目の前にしてもなお、人はその危険と引き換えに富を追おうとする。 
 経済効率と人の命…、このまったく質の異なるものを天秤にかけてはいけないだろう。 


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