前回、高校喜寿同窓会で60年ぶりに言葉を交わした同窓生から、郷里臼杵の名産カボスが贈られてきたことを書いた。シーズンを外れたこの時期にも、青々としたハウスカボスを、焼き魚や揚げ物まで片っ端からたっぷりかけて食べている。
そのカボスとともに添えられた彼女からの手紙の中の短歌についても前回触れた。つまり
姿、形、はジジ、ババ、なれと
空に吸われし十五の心がよみがえる
字あまり
(原文のまま)
という歌である。ところが、これをよく見ると、この短歌は字余りではない。確かに32字であるのでその限りでは1字余っているが、その余り字となる「十五の心が」の「が」を取り除き、次のように並べ変えると大変な名歌となる。
よみがえる 空に座吸われし十五の心
姿 形は ジジ ババなれど
ただし、この短歌には注釈が必要かもしれない。つまり、「『空に吸われし十五の心』は、石川啄木の『不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸われし十五の心』より借用」という(注)を付ける必要があろう。そしてそれは、この短歌の価値をいっそう高めることになろう。
高校にちなんでは、「高校三年生」という三年をうたった歌も有名だが、十五の春として新鮮な一年生も思い出深い。77歳の同期生が集まり、話せば話すほど「十五の春」がよみがえり、それははからずも当時学んだ啄木の名歌を想起させた…、。
喜寿と十五の春を結ぶ名歌を送ってくれた彼女に、心から感謝している。
姿、形はジジ、ババなれど…、いや、
未だ男は迫力あるし、女はきれいだ。