全く予想していないことが起こった。インフルエンザに罹ったのだ。
インフルエンザというのが多くの人が罹る著名な病気であることは知っていたが、それを自分が患うということは、なぜか想定していなかった。今になって考えれば、インフルエンザというものは、周囲の一般の人の病気で自分には関係がないものだという、実に非合理的な考えに陥っていたのである。当然のことながら予防注射などやったこともない。
ところが、この予想だにしなかった病魔に襲われたのである。今月4日(土)、義兄(薫さん)が来たり、孫の遥人が来たりで何となくザワザワしていたが、夕方から喉がいがらっぽかったことを思い出す。5日(日)朝から発熱、8度台が続く(最高8度8分)。
6日(月)は東京医大で目の注射の予定であったが慌てて取り消し、行きつけの内科医柴本先生に向かう。先生は一通り診て、「念のためにインフルエンザの検査をしましょう」と、いかにも当然の行為のごとく、綿棒みたいなものを鼻に突っ込む。そしてわずか1,2分後には、これまた当然のごとく、「ハイ、出ました。A型インフルエンザです。数日間、ひたすら寝てるほかないですね」といいながら、点滴治療(約10分)をやってくれた。
私は狐につままれたような気分であったが、以降、医師の指示通り数種の丸薬を朝昼晩と飲みつづけ、ひたすら寝て過ごした。その結果、7日7度台から午後には6度台、8日から5度台の平熱に熱は下がった。8度台の6日は苦しかったが、その後は苦しむこともなく、かねて予想していたインフルエンザに罹ったという印象はあまりない。いまのところ妻や娘に移った形跡もない。ピアノやオペラのレッスンが続く娘へうつることを一番気にしていたが、どうやら大丈夫のようでホッとしている。
自分はインフルエンザと無縁の存在、という非合理的な妄想に、なぜ取りつかれていたのかは全く分からない。それは何の合理性もないだけにあっけなく破られ、見事に罹病したが、その病気は想像していたほど大変な病気でもなかった。これまでに罹った最も軽い風邪、という印象であった。このままで終わるとすればの話であるが。
もしかして俺は、インフルエンザではないのではないか? 世にいうインフルエンザは、やはり俺とは関わり合いがないのではないか? 柴本先生にそれを聞く勇気はないが……。
こちらは、来月で82歳になりますが、日々、加齢諸現象と戦っています。晩酌だけは毎日おいしく続けていますが…。