前回の“メキシコ・シティ”で、「一泊もせず、ザ・メキシコ料理も食べていないので、メキシコ・シティには“行った”ことにならない」が、「文化の一端には触れた」と書いた。
その文化の一端の一つに、マリアッチがある。“わずか2時間の市内めぐり”の中で、マリアッチ広場にだけは行って、車を降りしばらく広場を歩いた。演奏は夕方かららしく、開演を待つたくさんのグループが、衣装を調えギターなどを抱えてたむろしていた。同行した姪っ子などは、それらのグループと写真に写ったりしていた。
そこではついに演奏を聞く時間はなかったが、これだけのグループが次々演奏する様はいかばかりか…と、その雰囲気に思いをめぐらしたのであった。
なぜなら、その前の訪問国コスタリカで、マリアッチを十二分に味わってきたからだ。
サンホセ最後の夜、現地で知り合った青年海外協力隊員の一人T嬢の案内を受けてマリアッチ館“エスメラルダ”に行った。ロン(コスタリカではラムのことをこう呼ぶ)を呷り、コスタリカ料理をつつきながら、数組が次々に演ずるマリアッチを心行くまで楽しんだ。1曲のリクェスト料が日本円で約500円、それを20曲はリクェストしたと思う。
「最後の夜だ! 有り金はすべて投げ出せ!」
という勢いで楽しんだ。
このようなマリアッチ館で演奏しているグループは、最盛期を過ぎた人たちか二流どころではないか? なんとなく、うらぶれた音楽士という風情が漂う。そして、それがまたいいのである。
私たちがこの手の歌を覚えたのは、かのトリオ・ロス・パンチョスからであった。彼らが日本を席巻したときの歌を次々とリクェストすると、「お前達もトリオ・ロス・パンチョスが好きか?」と聞いてきた。「もちろんだ!」と答えると、「やつらはうまかったからなあ…」とつぶやいていたが、そこには、言い知れぬ芸人の悲哀が漂っていた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます