昨夜、岩本町のオペラサロン「トナカイ」に、食事かたがた歌を聴きに行った。将来を楽しみにしている新進オペラ歌手前田進一郎君が出演するので、その応援も兼ねて。
前田進一郎君は、娘と昭和音大声楽科の同期で、出身地沖縄で音楽活動を進めていたが、このたび将来を期して東京に出てきた。その前哨戦のように、昨年9月、名古屋の愛知県芸術劇場公演『ファルスタッフ』にバルドルフォ役で出演、ワイフと娘と三人で名古屋まで応援に駆けつけた話は既に書いた(08.10.1付ブログ)。
彼は学生時代よくわが家に遊びに来た。当時から“まえしん”のあだ名で、わが家のリビングできれいな声で歌っていたが、その成長は見違えるほどで、このたび娘が企画した『オペラコンサート』(6月23日18:30より中目黒GTプラザホール)にも中心メンバーとして出演するので、その出来具合を見るためにも、昨夜出かけたというわけ。
こちらは食事をとりながらのんびりと聞かせてもらったが、先月藤原歌劇団でデビューし今うわさの某ソプラノ歌手ともども、たっぷりと良いアリアを聞かせてくれた。23日の娘のコンサートでも、手を抜かずに頑張って欲しいと願うとともに、将来の大成を祈ってやまない。
しかし問題は山積している。彼は一念発起して妻子を連れて上京してきたが、生活は甘くない。一分、一秒を惜しんで練習に励みたいが、日々の食い扶持を稼ぐ時間がそれを遮る。それよりも、安定した食い扶持を得る仕事が無いのだ。未だ無名のよそ者に、ピアノや発声を教わる生徒が容易に集まってくるわけは無い。何でもやると言っているが、練習と調和できるアルバイトなどそう簡単に見つからない。
まえしん君は敬虔なクリスチャンだ。日曜は教会に行くし、オペラなど舞台の本番の前には必ず聖書を読むと聞いている。その清らかな生活がそのまま現れたような美しいテノールを、私は何とか伸ばしてあげたいと思っている。
このような若き才能が、日々の生活に憂い無く研鑚を積んで生きていけるような社会は、いつ来るのであろうか・・・。
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