雨水(2月18日)を過ぎたら本当に雨の日が多く、この半月の東京は太陽の照る日が少なかった。しかも今冬で最も寒い日が到来し雪が降ったりした。日中に降った初めての雪は半分は雨で、地面を白くすることもなく、「雪が解けて雨になる」という雨水をそのまま実演してくれたのかもしれない。
こうして雨の日が続き土は湿り、迎えた今日は啓蟄・・・。
ようやく冬眠から目覚めた虫たちが、雨で柔らかくなった土の中から地上に這い出してくる日である。このところ異変も多いが、まあ自然はよく出来ていると言うべきだろう。
いよいよ穴から出てきた虫たちは、地上を眺め回し大気を吸って、「よし、今年も頑張るぞ!」と叫んでいるのかもしれない。人間様もおちおちしてはいられない。ひとつ酒でも飲んで気合を入れるか!
このような時に、必ず飲みたくなる酒がある。「神亀」という酒だ。数千銘柄はあると言われている日本酒の中でも最も酒臭い酒で、何とも力を感ずる酒である。
埼玉県蓮田市にある神亀酒造は、現在約20蔵ある「純米酒だけを造る蔵」の先駆けである。戦後のアルコール、水飴、調味料などを添加した「アル添三増酒」や、「アルコール添加酒」が普通であった時代に、この蔵は1967年代から純米酒を造り始めたと伝えられる。そして今から20年以上前の1987年に、全製造量を純米酒に切り替えた。
その発端は、専務小川原良征氏の学生時代(40年以上前)にさかのぼるらしい。東京農大醸造科で、教授に「日本酒は本物(純米酒)に帰らなければ消えてしまうかもしれない。娘もワワインは飲むが日本酒は飲まない」と言われたことから純米酒つくりを志した、と何かで読んだことがある。爾来40数年、純米酒を追求しつづけてきたのである。
本物をつくろうとする根性が違う。この小河原専務の執念が、現下の純米酒ブームに道を開いたと言っても過言ではあるまい。
丹念に時間をかけて造られた純米酒はじっくりと時間を取って熟成させる。米の味は酒に乗り移り、旨味とコクのある酒ができる。神亀を飲むと「これぞ米の酒!」と思う。米の甘味が口中に広がり、旨味とコクが胃の腑に落ち込む。燗をするとさらに美味しい。
混ぜもの、ニセモノ酒ばかりの穴から抜け出し、新しい空気――本物の日本酒を求めて造りあげてきた酒だ。まさに“啓蟄の酒”にふさわしい。
「ブログ論断の誕生」という本を読まれることをお勧めします。
私がコメントしたいことはだいたいそこに書いています。
一昨日私のブログに紹介した内野光子さんのブログも是非お読み下さい。まだブログ歴の浅い人ですが参考になると思います。
昨日の俳句です。
啓蟄や明日は晴れとは行かぬらし 公彦