暗いニュースの多い中で、ノーベル物理学賞3人、化学賞1人の日本人受賞者が出て、久しぶりに心の躍る思いで新聞を読み、テレビを見ている。特にこの四人の方が(当然のことながら)個性的で、しかも普通人の匂いを放っているのがうれしい。未だ海外に行ったことがないとか「くらげ」の話とか、何かノーベル賞が身近なものに感じられてきた。
これらの方々については、多くの国民と喜びを共有しているつもりなので、それはさておき、私はノーベル平和賞が、フィンランドの前大統領アハティサーリ氏に贈られたことに関心を持った。もちろん私は。氏の平和貢献内容については初めて詳しく知った。そして、打ち続く国際紛争の平和的解決に果たす「小国の役割」と、中でもフィンランドという国に改めて関心を持ったのである。
考えてみれば、大国は常に国際紛争の元凶と言えるのではないか? 歴史を振り返れば、国際紛争は常に大国が引き起こしている。大国が表面に出ていなくても、紛争の裏には必ず大国がいたと言って過言ではない。
とすれば、大国に紛争解決の能力はないのであって、平和の主導者は、大国のハザマにあって極力中立を推し進める小国、しかもそのような国に育った強力なリーダーシップを持った人たち、なのではないか?
力と利害に動く大国には、必ずしも平和は必要なく、平和を最も必要とするのは、力もなく、ひたすら普通の生活を求める人間であろう。ロシアやスェーデンなど強国の脅威に絶えずさらされながら、ひたすら耐えて中立を守ろうとしてきたフィンランドは、平和の主導者として最適かもしれない。
ところでフィンランドは、決して力のない国ではない。他国を侵略するような軍事的力はないかもしれないが、真の意味の「国力」は極めて高い国だ。
この10月8日に世界経済フォーラムが発表した「2008年版世界競争力報告」によれば、フィンランドは6位で、日本の9位を上回る。IT競争力ではかのノキアを有するだけあって4位(日本は14位)である(07年3月28日同フォーラム発表)。総じて世界貿易能力は7位で、これも日本の13位を上回る。
そしてこれらの根底には「国の学力」の高さがあると考える。経済協力開発機構の「学習到達度調査ランキング」によればフィンランドは世界でトップで、日本の14位を遠く上回る。これを報じた07年1月14日付日経新聞は、「人口わずか520万人、国土の四分の一は北極圏にある国が、学力で世界のトップに位置する原動力はどこにあるのか」と問いかけ、「小さな教育大国 受験競争無縁 苦手克服へ集中補習」などの見出しで、1クラス10~26人の少人数学級の写真を掲げている。
私はこの国からノーベル平和賞受賞者がでたことに関心を持ったのである。 (写真は、ヘルシンキのシベリウス公園)
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