先日の「オランダとチューリップ」のブログで、「アムステルダムのバーでジンを呷りながら」チューリップの歌を聞いた話を書いたが、そのジンこそオランダに生まれ世界に広まった素晴らしいスピリッツである。
ジンはオランダではジェネーヴァと呼ばれ、大麦麦芽、とうもろこし、またはライ麦麦芽など穀物を糖化させ、それを発酵させた液を蒸留して造るので、そこまではウィスキーなどに似ている。ただ、最後にジュニパー・ベリー(杜松の実)を浸漬して蒸留するところにミソがある。その杜松(ねず)の実が、あの独特な味と香りを生むのである。
成美堂出版の『おいしい洋酒の事典』は、ジンの歴史を次のように記している。
「17世紀の後半、オランダのライデン大学で医学を教えていたドクター・シルヴィウスによって始めは植民地での特効薬として、利尿作用のあるジュニパー・ベリーを浸漬して蒸留、ジュニエーブル(フランス語)という名の薬用蒸留酒を薬局で販売しはじめた。販売をはじめると、その新しい味と香りに人気が集まり、始めは薬用酒として飲まれ、その後ふつうの酒として飲まれるようになった」(同書121頁)
こうして生まれたジェネーヴァは、オランダからイギリス国王となったオレンジ公ウィリアムスとともにイギリスに渡り、ジンと呼ばれるようになって磨かれ、そこからアメリカに輸出されて、カクテルのベース(主としてマティーニ)に使われるようになって飛躍的に広まった酒である。
しかし、いわゆるジンは連続蒸留式による蒸留酒で、ドライ・ジンと呼ばれるように、キレはあるが一般向けの酒になった。それに反し本家のオランダ・ジェネーヴァは、大麦麦芽の使用量も多く、単式蒸留を基本としておるので(単式蒸留を2~3回行い、最後に香草類を加えて蒸留)、麦芽香も残り、重厚でコクがある。だからカクテルにしたり水で割って飲んだりすることなく、ほとんどストレートで飲まれる。
酒はその地のものであり、その地で本物を飲むのが一番である。
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