旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

「戦争はイヤだ」と叫ぶオペラ … 『カプレーティとモンテッキ』②

2016-05-05 16:07:02 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 このオペラにはもう一つ特徴がある。ロメオ役を女性が演じることになっていることだ。あの演劇史上名高いロメオという男役を、なぜ女性が演じなければならないのか? 理由は簡単、作曲者のベッリーニがその楽譜に、「ロメオ:メゾソプラノ」と書き記しているからだ。
 つまりは、ベッリーニは何故ロメオを女性(メゾソプラノ)に歌わせようとしたのかということになるが、その理由を私は知らない。何かベッリーニの書き残しでもあるのかと調べてみたが、私の調べた範囲ではわからない。以降の演奏家たちも、いくつかの例外はあったようだが、作曲者の指示に従いロメオはメゾソプラノで演奏を続けてきているらしい。日本の歌舞伎は、女役もすべて男が演じるが、何か共通点があるのだろうか?あまり考えたこともない。
 人類の歴史を顧みると戦争の歴史であるが、その戦争はほとんど男が闘ってきた。このオペラの舞台も前記したように両家の絶え間ない争いが背景となっているが、その中に咲いた清らかな愛を歌い上げるには、争いを続ける男を超越した存在としてロメオも女性に歌わせようとしたのかもしれない。
 それに対し、制作のミャゴラトーリを主宰する娘は、ズボン役(男装の女性役)は宝塚のイメージが強すぎるので、今回はロメオ役をテノールにやらせたいと提案する。演出の岩田氏は、「本来このロメオ役が必要とする清純さは男では出せない」と言ったが、しかし、そのテノールに寺田宗永の名があがるに至って岩田氏も、「彼ならやれるかもしれないね」と合意に至り、二日公演の初日のロメオを、禁を破って男性にしたという。
 寺田宗永(通称テラッチ)君はミャゴラトーリの常連歌手で、特に『愛の妙薬』のネモリーノが当たり役だ。清純さに於いて比類ない。しかも相手のジュリエッタを演じるのが高橋絵理(ソプラノ)さん。二人は、14年夏の『ラ・ボエーム』(ミャゴラトーリ制作岩田達宗演出)のロドルフォとミミを演じたコンビだ。しかもお二人とも昨年からイタリアに留学して帰国したばかりで、その成果にも期待している。
 いずれにせよ私は、テノールとメゾソプラノが演じる公演を二日とも観なければならないと思っている。皆さんにも、是非とも二日間とも観ることをお薦めする。

   
 『ラ・ボエーム』を演じる寺田宗永、高橋絵理(2014年7月24日)


   


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2 コメント

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Unknown (toi)
2016-05-10 20:53:18
ご無沙汰しております。
この度のミャゴラトーリの公演情報。とても興味深く読ませていただきました。
文面から、J御自身のお身体も回復に向かわれているのではないかと感じております
楽しいお酒の会にも参加されたようで嬉しくお写真を拝見しました。

早速ですが、私は金曜日の公演に行きたいと思っております。
初めてオペラを観たのが「セヴィリアの理髪師」で、そのときの寺田さんの印象がものすごく強く残っているものですから。
しかし、確かにJのおっしゃるようにメゾソプラノでの公演と見比べると、楽しさも倍増しそうですね。
残念ながら2日続けて出かけるのは難しい状況で、それならばと、金曜日を選びました。

今回は他に二人ほどお声かけしようと思っています!
予定が決まったらチケットの申し込みをさせていただきます。

どうぞ更にお身体の調子を整えられ、是非とも同窓会を実現いたしましょう。
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toiさんありがとう (tabinoplasma)
2016-09-19 10:58:16
半年後のお礼のコメントです。観た後の感想に対するコメントをしようと思って忘れていました。このオペラには、かなりの反響がありました。また、皆さんが一人でも二人でもお友達を連れてきてくれることに、「オペラ普及」を目指す娘は大変に喜んでいます。次回お会いした時に、感想を聞かせてください。
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