日本は席を蹴るべきだ
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花岡 信昭
6カ国協議はおかしな雲行きである。
どうやら米朝間で核施設凍結の見返りにエネルギー支援を行うという大枠の合意ができているらしい。北側は電力200万キロワット、年200万トンの重油という法外な見返り要求をしていて、その溝が埋まらないという状況のようだ。
なんということはない。これでは、核を恫喝材料として軽水炉供与を引き出した94年合意と同じではないか。あのときはカーター米大統領が乗り込んでKEDOの枠組みをつくったものの、その後、破綻している。
そのときの合意よりもなおタチが悪い。アメリカはイラクに手一杯で、かつて北朝鮮空爆もありうるとした強硬態度がすっかり影を薄めた。
「悪の枢軸」扱いはやめたのか。
いうまでもないが、核、ミサイルで最も脅威を受けるのは日本である。
テポドンはまだアメリカまでは届かないが、ノドンはすでに200基、日本に向けて配備されている。
さらに、日朝間には拉致問題という揺るがせにできない重大事がある。
北側はすでに解決済みという態度だが、横田めぐみさんの「偽遺骨」を提供してきたことの「謝罪」もすんでいない。
拉致被害者はなおどれだけいるかわからないのが現状だ。拉致問題は膠着状態どころか、日本側としては手も足も出せないというのが実態だ。
北朝鮮は食料、エネルギーの枯渇で、国家存続の危機にすら直面しているようだが、核、ミサイルで国際社会を震撼させておいて、法外な支援を求めるというのは、相も変らぬ「瀬戸際外交」そのものだ。
北朝鮮にとっては、アメリカを引き出し、米朝をベースに決着をはかるということが必要だった。それではじめて世界の超大国アメリカと対等にわたりあえる国としてのメンツが保てることになる。それも核実験をしたあとだから、「核保有国」としての待遇を受けた、と向こうは思っているだろう。
日本はこのスジの悪い展開に付き合っていてはいけない。北朝鮮は日本に対し、6カ国協議をぶち壊す元凶であるかのように罵倒し続けている。
ここは6カ国協議の場から席を蹴って退出すべき局面ではないか。この流れのまま妥協してしまったら、拉致問題は葬り去られてしまう。日本は拉致を重視していないという誤ったメッセージを与えることにもなる。
仮に合意が成立した場合、日本としてKEDOのときのように税金を投入するようなバカな話は間違っても起こりえないと信じたいのだが、麻生外相は「間接的支援は可能」といった趣旨の発言をしている。
安倍首相は何を考え、何を行おうとしているのか。拉致問題への取り組みが現在の政治的地位を築いたことを忘れてはなるまい。
安倍首相がいまやるべきこと。それは北京からの日本代表団の帰国命令だ。そのくらいのことをやらない限り、国民は安倍政権をいよいよ見限ることになってしまう。
そうした強硬な態度を取ってはじめて北朝鮮との外交ルートによる交渉が可能になる。脅しには脅しだ。国際常識が通じない国を相手にして、ことなかれ外交に終始していたら、日本はあなどられる一方だ。
安倍首相にとっては政権の行方をかけた決断をくだすべき局面ではないのか。
★★花岡信昭メールマガジン★★
381号[2007・2・12]転載