昨日の衆議院予算委員会で民主党の馬淵議員が思わぬ話題を国会中継を通じて全国に知らしめる質問をした。
「沖縄科学技術大学院大学」と尾身財務大臣の関係。
「沖縄科学技術大学院大学」(以下「大学院大学」)といっても地元の沖縄でさえその実体について知るものは少ない。
ましてや日本全国では馬渕議員の質問で知るまでは全く知らなかった人も多かっただろう。
沖縄には国立大学の琉球大学の他に沖縄大学、沖縄国際大学、名桜大学、沖縄キリスト教学院大学と五つの四年制大学がある。
「大学院大学」を知る地元の中にも、これ以上は「屋上屋」の愚であり、琉球大学の大学院を充実させれば済む、といった意見さえある。
だが、この構想は単に一沖縄県のレベルの問題ではなく、全日本、いや、世界最高峰レベルの理系学術の府を設立するという壮大な話なのだ。
沖縄に、自然科学系の世界最高の研究・教育水準を有し、国際的で柔軟性を持った大学院大学を設置することで、世界の科学技術の発展に寄与するというのがその主旨。
だがその波及効果は計り知れない。
「沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展させ、その経済的自立を図ること等をその実利的な目的としている。
その設立には2001年6月、尾身幸次沖縄及び北方担当大臣(当時)が「沖縄新大学院大学構想」を発表して、設置の検討が開始された。(現在は財務大臣)
2004年2月、大学院大学学長に米ソーク研究所教授のシドニー・ブレナー(ノーベル生理学・医学賞受賞者)の就任が内定し、2005年9月には、大学院大学の設立準備や先行的研究を行う沖縄科学技術研究基盤整備機構が設立された。
大学副学長には、伊藤正男(東京大学名誉教授、理化学研究所脳科学研究センター前所長、文化勲章受章者)が内定している。
教員組織が、50人になり次第、大学院大学設立の申請を行うことを目指している。
内容は「生命システムを中心的な課題とし、生物学、物理学、化学、コンピューティング、ナノテクノロジーなどを融合した領域とする」ことが、教育研究分野として設定されており、
世界最高水準(ベスト・イン・ザ・ワールド)を目指し、講義・会議等は英語で行われ、学長は外国から迎え、教授陣および学生は半数以上を諸外国から受け入れる。」(ウイキペディアより抜粋)
◆ところで民主党馬淵議員だが、「耐震偽造問題」の時は国会の証人喚問で千両役者振りを発揮した男。
この男の登場で尾身大臣と「大学院大学」設立に何か疑惑でもあるのかといった予感を感じさせた。
質問の主旨は、
≪「大学院大学」の構想を口火を切った当時の尾身沖縄担当大臣が離任後も、継続して「大学院大学」関連の運営委員会にオブザーバーとして、参加している。
しかも毎回尾身大臣の長女を通訳として同行させているが、これは公私混同も甚だしいのではないか。≫といった内容。
一瞬、石原都知事と息子の画家との関係で公私混同を追及されたことを連想させた。
質問した相手は沖縄関係の官僚だったが、同席していた尾身財務大臣が堪り兼ねて手を挙げ答弁にたった。
尾身財務大臣は、自身の長女を通訳権秘書として同行させたことを認めた上で、
「娘は一切報酬を貰っていない。 宿泊費や航空運賃の支出もなく、別途安いホテルで一人で泊まっている。何か疑惑があるように言うのは失礼だ」と攻守一変、テレビ画面で質問者に強調した。
さらに、沖縄担当相離任後も自身が会議に出席した事については「運営委員にこのプロジェクトから手を引かないでいわれた。『尾身が辞めるなら私も辞める』とまで言われた。大事なプロジェクトであり、支援するのが政治家の義務だ」と説明した。
尾身大臣の「広報演説」に馬渕議員はもう結構ですとでも言いたげな様子だったが、堰を切った大演説はもうどうにも止まらない。
馬淵議員は尾身大臣の「大学院大学」への並々ならぬ関心に疑惑のニオイを嗅ぎ取って尾身大臣の長女に対する公私混同に突破口をと狙った。
だが、それは不発に終わるどころか尾身大臣の「大学院大学」の設立の経緯に始まり、自分がいかにこのプロジェクトに熱意を持ってフォローしているかの大演説を引き出してしまった。
テレビを通じてのいわば「広報活動」になってしまった。
民主党にとって、これはやぶ蛇と言うより、むしろ「ブーメラン伝説」の一つに数えるべきだろう。
おかげで「沖縄大学院大学」のアウトラインがNHKテレビを通じて全国に放映される事となった。
琉球新報
大学院大学「S」評価 沖縄相、「圧力」を否定 科学技術会議
【東京】国の科学技術施策を格付けする総合科学技術会議で、沖縄科学技術大学院大学構想の評価が5年連続で最高ランクの「S」評価を受けていることが5日、分かった。
高市早苗沖縄担当相は5日午前の閣議後記者会見で、「政治的圧力で格上げしたのか」との質問に対し「わたしも会議に立ち会ったが、十分に議論した上で最初からSだった。圧力をかけて変えたのではない」と否定した。
総合科学技術会議は次年度概算要求の妥当性を評価するもので、S(積極的に推進)、A(着実に実施)、B(問題点を解決して効率的に実施)、C(内容や計画の見直しが必要)の4ランクがある。10月27日に開かれた本年度会議ではSランクの理由を「世界レベルの知的・産業クラスターを形成するという期待に応えるため積極的に実施すべきだ」と報告している。
内閣府の担当者は「審査の過程で異なる意見が出てくるのは当然だ。だが国として世界レベルの研究施設を積極的に推進しようという判断であり問題ない」と説明した。
◆内閣府http://www8.cao.go.jp/okinawa/4/49.html