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知事が対立候補を副知事に任命した例が日本にあるかどうかは知らない。
だが、東国原知事はずい分思い切ったことを考えたものだ。
チェスのチャンピオンとコンピューターとの試合では最近はコンピューターが勝つと聞くが、日本の将棋だとコンピューターはまだまだ将棋の高段者の敵ではないという。
理由は、取った相手の駒を味方として再利用する技術にまだコンピューターがついて行けないかららしい。
東国原知事は、敵の駒を「再利用」すると言う、安倍内閣の言う究極の「再チャレンジ」を自ら実施しようとしている。
これですぐ思いつくのは函館戦争で敗北し官軍の捕虜になった幕府軍の総大将(海軍副総裁)榎本武揚。
その豊富な学識経験を乞われて後の明治新政府入りし逓信大臣、外務大臣、文部大臣、農商務大臣を務めた。
東国原知事が榎本武揚の例や、日本伝統の将棋の技を知っていたかどうか、
又対立候補だった元経済産業省課長持永哲志氏が榎本武揚並みの人材かどうかを知るよしはない。
だが行政経験がない新知事にとって、通産官僚だった持永副知事の知識と経験を利用しない手はない。
これが実現すれば、自分の足りない面をカバーできる。
さらに深読みすれば、オール野党の県議会で自民党系の支持を確実にする効果が生まれる。
同じ立場だった田中前長野知事が辿った県議会とのいたずらなドロ試合は避けられる。
だが、奇策には必ず両刃の剣のリスクが伴う。
持永副知事と県議会自民党が癒着して東国原知事を棚上げにしてしまう懸念だ。
だが老婆心を言っていては始まらない。
将棋の駒のごとく、そして榎本武揚のごとく、対立候補を副知事として有効に使えば、再チャレンジの見本になる。
持永氏も選挙戦時の確執はきっぱり忘れて、正式な知事指名の話があれば素直に受けて宮崎県民の為に持てる能力を発揮して欲しい。
誰かが言っていた。
≪南の県に東風が吹く≫
東国原知事に応援のエールを送りたい。