高橋克典の“法律 だいすきになーれ+ひとり言α”・・・・・ まずは“宅建資格”から

法律系資格を取得しようとする場合、まず民法の勉強はかかせませんね。さらに、好きになって得点源にぜひしたいものです。

疑義問題H29『宅建試験問題問7の肢3』その後の経過・・・(第4弾)。

2017-11-18 07:24:07 | 宅建試験 総括
今年の宅建試験問7の肢3について、正しいのでないかという問題提起をしましたが、その後いろいろな方からご意見をいただきました。

以下の見解で、お答えさせて頂きます。

賛成の方、いや誤りでいいという方、いろいろ頂きました。

それでも、いまだに肢3は「正しい」と判断するのが、しっかり勉強してきた人からすれば良いと思いますので、そういう問題を作問しないように、と言う意味を込めて、再度確認しておきます。

まず問題は、

・・・・・・・・・・・・・・
3 請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けていなくとも、

特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。
・・・・・・・・・・・・・・

でした。しかも答えが一つしかないとしたら、試験委員は、これを答えにしたはずです。

まず、基本的知識と状況を確認しておきます。

具体的に考えるとわかりやすいので、まず請負代金債権(請負報酬ですね)を1,000万円としましょう。

それに、損害賠償が100万円としましょう。

このように損害賠償が発生しているということは、既に目的物は引き渡されています。

・・・・・・・
条文は、633条-報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。

判例は、、瑕疵の修補に代わる損害賠償請求権は建物の引渡しを受けた時に発生する。(最判昭54・3・20)
・・・・・・・

この時点で、引渡と同時に請負代金を支払わずにいたが、瑕疵があったということです。

そこで、請負代金債権は、特別な事情がなければ、ある意味、履行遅滞なのです。

つまり、請負代金全額を支払わないといけないのですね。

しかし、例外的にそうでない場合があれば、正当に拒絶できるのですが・・。

それは、瑕疵があって損害賠償の請求ができる場合ですね。その条文は、

・・・・・・・・・・・・・・
条文は、644条2項-注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。
           この場合においては、533条の規定を準用する。
・・・・・・・・・・・・・・

ここでは、同時履行の抗弁権があるといっているので、それを主張すれば、請負代金債権を正当に拒絶できます。

しかし、それは、きちんと主張した場合ですね。

この抗弁権を行使せず、全額支払ってもいいわけです。ここが、宅建試験問題を解くときのポイントになりませんか。

条文では、前記の例でみると、請負代金債権の全額つまり1,000万円までか、100万円の範囲内かよく分かりませんが、

その点について判例があって、

・・・・・・・・
請負人が仕事の目的物を引き渡した場合において,その目的物に瑕疵があり,注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償を請求したときは,

注文者は,その賠償を受けるまでは報酬“全額”の支払を拒むことができる。(最判平9・2・14)
・・・・・・・・・・・・・・

つまり、100万円ではなく、1,000万円の限度拒否できると言っています。

さらに、互いに金銭債権の同種ですから、相殺の援用もできますね。

ただし、ここでは、自働債権に同時履行の抗弁権があると本来は相殺できないのですが、ここも判例は認めています。

・・・・・・・・・・・・・・
請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。(最判平9・7・15)
・・・・・・・・・・・・・・

そこで、相殺を援用したら、差し引きした残り900万円を支払わないといけなくなりますね。相殺すれば、全額支払わなくても言い訳です。

しかし、ここも援用するのかしないのかは本人の自由です。ですから、援用したら、ですね。

以上が、基本的知識です。ここまで、しっかり勉強した人なら、どうでしょうか。

もう一度、先頭の試験問題をみてください。それでも、明確に誤りと判断できるでしょうか。

むしろ、正しいとした気持ちが強くなったのではありませんか。

この問題は、原則の方を聞いていますし、特別の事情が、要は、同時履行の抗弁権を主張したときとか、相殺の援用を主張したときと、判断できませんか。

どちらが素直かですが・・・。

とういうことで、いまでもすべて正しい問題として、全員正解となってもらいたいものです。

では、また。

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