野中広務・辛淑玉『差別と日本人』(角川ONEテーマ21、2009)を読み終わった。
問題と在日の問題を、異色の政治家・野中広務と対極に位置する辛の対談として示したもの。八鹿高校事件などの記述は誤ったものであるが、しかし、自民党政治家の野中と在野に生きる在日の辛の緊張感とともに、同じく被差別の苦しみを心の中に秘めた思いのあふれる対談となっている。最後に、家族のことに話題が及ぶとお互い同じ思いで涙ぐむ姿が行間ににじみ出ていて、この問題の複雑さ・困難さを暗示している。構成は次の通り。
はじめに
第1章 差別は何を生むか
第2章 差別といかに闘うか
第3章 国政と差別
第4章 これからの政治と差別
あとがき
あとがき
興味深いいくつかの箇所があった。
自民党の内情などについてのコメント
「野中氏が足を踏み入れることになった自民党は、学識を必要としない社会だった/いわんや世界観や、理想や、見識や、文化的視座や政策科学的合理性などまったく必要ない。「自民党」とはつまり、専きぃおでの敵など、手っ取り早く攻撃可能な相手を見つけては、とにかくこれを叩くことでのし上がってきた人たちの集団である。その典型的な手法は、まず相手の私的な弱みをつかんで謀略宣伝の材料を手に入れ、そして相手に「悪」のレッテルを貼って攻撃する。マスコミもそれに同調して、謀略と知りつつ攻撃に加担する。…/世界が未曾有の経済的は単に直面しているさなか、日本の国会では、麻生総理が「漢字を読み間違えた」とか…些末な失敗談で時間を空費していた。そんなどうでもいい話とはレベルが違う、麻生太郎の政治家としての資質や歴史観を露わにする問題発言や失態は、「ちょっと口が滑りました」といった程度の訂正ですんでしまい、メディアから糾弾されることもない。それゆえ与党の政治家は、極端に言えば、個人の冠婚葬祭情報と、それを正確に覚えておく記憶力を頼りに永田町を生きることになる。…」
差別を心の問題にする傾向
「自分は他者よ優位だという感覚は「享楽」そのものであり、一途その享楽を味わうと、なんどでも繰り返したくなる。特に人は、自分より強いものから存在価値を否定されたり、劣等感を持たされたりしたとき、自己の劣等意識を払拭するために、より差別を池入れやすい人々を差別することで傷ついた心のバランスをとろうとする。」
傷痍軍人のこと
「私、子どもの時に、新宿のガード下で物乞いしている傷痍軍人を侮蔑的な目で見てたんですよ。軍人嫌いの私には、唄っているのが軍歌だと言うこともあったかも知れない。日本の国からお金もらってるんだからいいじゃないか、と思ったのね。/そしたら、大人になってから、あれは朝鮮人だったてことを教わるわけ。結局、元軍人であっても朝鮮人だから、それで一銭も日本からもらえなくて、生活することもできなくって、しかも国籍条項によって福祉から排除されている。だから物乞いするしかなかったことを知って、私は打ちのめされたんですよ。」
問題と在日の問題を、異色の政治家・野中広務と対極に位置する辛の対談として示したもの。八鹿高校事件などの記述は誤ったものであるが、しかし、自民党政治家の野中と在野に生きる在日の辛の緊張感とともに、同じく被差別の苦しみを心の中に秘めた思いのあふれる対談となっている。最後に、家族のことに話題が及ぶとお互い同じ思いで涙ぐむ姿が行間ににじみ出ていて、この問題の複雑さ・困難さを暗示している。構成は次の通り。
はじめに
第1章 差別は何を生むか
第2章 差別といかに闘うか
第3章 国政と差別
第4章 これからの政治と差別
あとがき
あとがき
興味深いいくつかの箇所があった。
自民党の内情などについてのコメント
「野中氏が足を踏み入れることになった自民党は、学識を必要としない社会だった/いわんや世界観や、理想や、見識や、文化的視座や政策科学的合理性などまったく必要ない。「自民党」とはつまり、専きぃおでの敵など、手っ取り早く攻撃可能な相手を見つけては、とにかくこれを叩くことでのし上がってきた人たちの集団である。その典型的な手法は、まず相手の私的な弱みをつかんで謀略宣伝の材料を手に入れ、そして相手に「悪」のレッテルを貼って攻撃する。マスコミもそれに同調して、謀略と知りつつ攻撃に加担する。…/世界が未曾有の経済的は単に直面しているさなか、日本の国会では、麻生総理が「漢字を読み間違えた」とか…些末な失敗談で時間を空費していた。そんなどうでもいい話とはレベルが違う、麻生太郎の政治家としての資質や歴史観を露わにする問題発言や失態は、「ちょっと口が滑りました」といった程度の訂正ですんでしまい、メディアから糾弾されることもない。それゆえ与党の政治家は、極端に言えば、個人の冠婚葬祭情報と、それを正確に覚えておく記憶力を頼りに永田町を生きることになる。…」
差別を心の問題にする傾向
「自分は他者よ優位だという感覚は「享楽」そのものであり、一途その享楽を味わうと、なんどでも繰り返したくなる。特に人は、自分より強いものから存在価値を否定されたり、劣等感を持たされたりしたとき、自己の劣等意識を払拭するために、より差別を池入れやすい人々を差別することで傷ついた心のバランスをとろうとする。」
傷痍軍人のこと
「私、子どもの時に、新宿のガード下で物乞いしている傷痍軍人を侮蔑的な目で見てたんですよ。軍人嫌いの私には、唄っているのが軍歌だと言うこともあったかも知れない。日本の国からお金もらってるんだからいいじゃないか、と思ったのね。/そしたら、大人になってから、あれは朝鮮人だったてことを教わるわけ。結局、元軍人であっても朝鮮人だから、それで一銭も日本からもらえなくて、生活することもできなくって、しかも国籍条項によって福祉から排除されている。だから物乞いするしかなかったことを知って、私は打ちのめされたんですよ。」