ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

野坂昭如『「終戦日記」を読む』NHK出版、2005年

2020年01月28日 21時36分22秒 | 
敗戦前後の状況を知りたいと思って、図書館から借りてきた野坂昭如『「終戦日記」を読む』を読み終わった。行間が広く、活字が大きいので、逆に頭に入りにくかったが、内容は興味深い者だった。
目次と使われた日記・文献は次の通り。なお、この間の問題意識で国民の戦争意識と敗戦後の動きについて、気になるところだけ、摘記しておくこととした。

まえがき
八月五日、広島
原爆投下とソ連参戦
空襲のさなかで
終戦前夜
八月十五日正午の記憶
遅すぎた神風
混乱の時代のはじまり
もう一つの「八月十五日」
インフレと飢えの中で
あとがき
日記の書き手たち

参考文献
細川浩史・亀井博『広島第一県女一年六組 森脇瑶子の日記』(平和文化、1996年)
山田風太郎『戦中派不滅日記』(講談社文庫、1985年)
高見順『敗戦日記〈新装版〉』(文春文庫、1991年)
大佛次郎『大佛次郎 敗戦日記』(草思社、1995年)
永井荷風『摘録 断腸亭日乗(下)』(岩波文庫、1987年)
渡辺一夫『渡辺一夫 敗戦日記』(博文館新社、1995年)
徳川夢声『夢声戦争日記 抄 敗戦の記』(中公文庫、2001年)
中野重治『敗戦前日記』(中央公論社、1994年)
海野十三『海野十三敗戦日記』(講談社、1971年)
木戸幸一『木戸幸一日記 下巻』(東京大学出版会、1966年)
軍事史学会編『大本営陸軍本部戦争指導版 機密戦争日誌 下』(綿正社、1998年)
岡本望『嵐の青春 神戸大空襲』(文理閣、1993年)
大木操『大木日記 終戦時の帝国議会』(朝日新聞社、1969年)
伊藤整『太平洋戦争日記(三)』(新潮社、1985年)
藤原てい『流れる星は生きている』(中公文庫、1976年)
今井弥吉『満州難民行』築地書館、1980年(川浦一雄「第二部 大陸避難日記」)
安里・大城将保『沖縄戦・ある母の記録』(高文研、1995年)

NHK人間講座2002年8月から9月放送された『「終戦日記」を読む』のテキストをもとに単行本化されたもの。

P.28 (山田風太郎、高見順、大佛次郎などの日記)
いずれも、じかに、敵の目標とされていないせいだろう、日記で読む限り、一月先の命はまず覚束ない自らの運命を嘆き、怯え、せめて九死に一生を求める努力はうかがえない、すべて運命と見なし、戦争を天災に近く受け取っている、このような自体をもたらしめた大本は自分以外にある、文字通りその日だけを凌ぐ、」となると、身近にのみ眼を注ぐ。時は夏の盛り、日本の自然において、秋の実りをもたらしめる、万物猛々しくも盛んな時期、危殆に瀕した国家よりも、自然の力強さ、人間の卑小さに目を向け、一種の諦観に至る。誰も神経症にならない、楽天的ですらある、そしてだれもが、この期に及んで、史を自分に引きつけて考えていない。

P.120
もう一方に、戦争下も敗戦も関わりない臣民がいた。料理飲食業組合、待合業組合、接待業組合、芸妓屋同盟会、貸座敷組合、慰安所連合組合、つまり花柳界、遊郭の経営者。空襲後、もっとも早く、群の湯尾製塩所を受け焼け跡で営業をはじめたのも彼等。そして東京では、八月十七日、その主だった連中が、警視庁に呼び集められ、「国体護持の大精神に則」つた内命を受けている。やって来る占領軍、三日前までの「鬼畜」に対し、「彼我両国民ノ意思ノ疎通ヲ図リ、併テ国民外交ノ円滑ナル発展ニ寄与、世界建設」の目的で、占領軍慰安施設を緊急に造るべく、指令される。


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